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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
149/193

第百三十九集 佐曽利勇生

  10月25日 21:15 日本武道館 ステージ上


  (酒呑様、相馬恵の妖気だけを取り除きたい、できそう?)


  (我を誰だと思うておる、だがその妖気は魁紀ではなく我に取り込まれる。それでもよいのか?)


  (ああ、問題ない。)


  (カカッ!よい!)


  相馬恵を死なせるつもりは無い、だから妖気だけ取り除けば命に別状は無いはず。


  「その姿、酒呑童子の力ですか。ですが今更何をしても遅いです!」


  「それは全部終わってから言ってくれ!!」


  一瞬だ、できる限り苦痛を与えずに。


  「酒呑妖術・酔牙狂突(すいがきょうとつ)!」


  狙うは腹、へその少し上辺り。妖気の源はそこにある、そこを突けば!


  「いただけませんね、実にいただけませんよ丑崎さん、私と恵の時代はこれからなのですから!」


  佐曽利がステージ上に現れ、相馬を連れて退避した。


  「やっと降りて来たか佐曽利さんよ。」


  いずれかは降りてくるだろうとは思ってたけど、うざいタイミングで降りてきやがった。相馬恵を連れていかれたせいで考えてたことが台無しだ。


  「ええそうです、恵をここで失う訳にはいきませんので。もともと私が出る幕では無かったのですが、仕方ありません、酒呑童子の力を使われてはさすがの恵もどうにかできるものでは無いでしょう。」


  わかってたのかこいつ、本当にただのプロデューサーなのかよ。


  「ですが!ですがですがですが!!私があなたとその仲間たちを消して差し上げましょう!恵、力を貸してくれるかい?」


  「はい、私の全ては佐曽利様の為に…」


  「いい子だ、恵。」


  そう言いながら、佐曽利の手は相馬の腹を貫いた。


  「お前…何してんだ!!」


  「クソゴミがぁ!!恵ちゃんに何してんだ!!」


  丑崎の背後にいた田口と新井が叫ぶ。


  「なに、与えた妖気を返していただいているのですよ。存分に妖気を使ってくれたおかげで妖気の質が上がっています、よって私の力もさらに!」


  佐曽利さんの迫力が増している、見た目にも変化が出ているな。


  「この通り!少し妖魔のように姿が変化したのは納得できませんがまあいいでしょう、妖気が(みなぎ)ってきます、今の私なら酒呑童子に劣ることも無いでしょう!」


  「結構な自信だな。」


  「当然です。力こそが全てではありませんが、力なくては望みを叶えることもできません。ゆえに、あなたたちを蹴散らし、私たちの望みを、夢を叶えさせていただきます!!」


  「人の死の上で成り立っていい望みと夢があってたまるか!せっかく降りてきて貰ったところで悪いが、とっとと退場してもらうぞ!」


  その前に周りの状況確認だ、相馬恵は佐曽利さんの隣で倒れてる。ステージの下に龍太郎と冬、そんで負傷してる鷹取。さらに奥で休んでる鬼寅と羽澤、一応あとから合流してもらう話だったけど、無理はさせられない。


  「クククッ、退場するのはあなたたちですよ!とくとご覧ください!私の力を!魔妖術(まようじゅつ)怪吊人形(あやつりにんぎょう)!」


  佐曽利の手から糸が伸びだし、3体の人形を作り出した。


  「どうです!この素晴らしい力!これはただの人形ではありません!相手を複製し、相手と同等の能力を発揮できる人形なのです!」


  3体の人形がそれぞれ丑崎、田口、新井に変わっていった。


  うげ…俺がいる…しかも龍太郎と冬もいる…自分が向こう側にいるってのがもう嫌だ、自分の顔を見るのも嫌だ、気持ち悪い…


  「俺の複製か、よくできてんじゃねぇか。」


  「あーしの複製、ちょっとブサイクすぎじゃねぇか?あーしはもっとかわいいっつーの!」


  気にすんのそこかよ。


  俺の複製は…ん?よく見たら酒呑様の見た目じゃないじゃん、そこまでは複製できなかったみたいだな。


  「いくら複製とはいえ、酒呑様の力を複製するのはできねぇか。」


  「そこまでする必要が無いだけですよ、さあ、死になさい!!」


  「そんな芸当ができないだけだろ!」


  「ではその証拠を今見せて差し上げましょう!」


  跳んでくるか、だがどうでもいい!


  「偽物じゃ本物に勝てねぇよ!!酒呑妖術・酔丑斬(すいぎゅうざん)!!」


  「偽物が本物に勝てないなんて道理はありませんよ丑崎さん!!」


  だが、偽物の斬撃は容易く丑崎に打ち破られ、偽物ごと消えた。


  「ほらな!こういうことだよ!」


  「偽物が1人だとも思っていましたか?」


  「なに!?」


  消えた偽物の背後から、さらに複数人偽物の丑崎が現れた。


  「質よりも量か、理にかなってるな。」


  「どんな手を使おうとも私は勝ちます、全てを操り、全てを騙し、全てを奪う!!その終着点に全ての上に立つ私と恵はいるのです!」


  「そんだけ恵まれた立場にいながらなんでそんなことができる!」


  複数の偽物を相手にしながら、丑崎は佐曽利に問いかける。


  「恵まれた立場、ですか…良いでしょう、冥土の土産に教えてあげましょう。」


  偽物を操る手を止めることなく、佐曽利は語り始めた。


  「恵まれた立場にいながらと言いましたね、丑崎さん。そうです、これだけの力に恵まれているのは確かです!ですがここにたどり着くまでどれだけ私たちが奪われたと思いますか?分からないでしょうね!恵は幼い頃に両親を奪われ!私は妻と2人の娘を奪われたのです!」


  そんなことが…


  「恵の両親は平家に、私の妻と娘たちは藤原家に奪われました。全ては貴族…あの貴族たちがいけないのです!」


  貴族…葉月先生と同じなのか…


  「どんだけ些細なことでもあいつらは気に食わなければ嬲り、殺し、私と恵の家族はほんの些細なことで奴らに殺されたのですよ!丑崎さん、わかりますか?私たちの怒りが!悲しみが!ですが奴らはもう貴族を追われた身なのでまあいいでしょう。この手で地獄に落としてやりたいところでしたが、丑崎さんたちのせいでそれは叶わなくなりました。」


  「知ってんのか、先月の出来事を。」


  「私の情報網をなめないでください、それくらいは当然把握しております。」


  「そうか、だからあんたはそいつらと同じことをするのか!自分がやられたように、今度は自分が同じことをするのか!」


  「黙れ!私にはあるのですよ、奪われた側にはそうする権利が!!」


  「違う!それじゃ次の佐曽利さんと相馬が生まれるだけだ!相馬がネットで悪口言われたくらいでその悪口を言ったやつを消すのか!悪口だろうが批判だろうが乗り越えて行くのが相馬のやるべき事だろ!相馬はそんなことあんたに頼んだことあるのかよ!あんたが勝手なことしてんじゃねぇ!」


  「言わせておけば!!」


  丑崎の言葉で昂った佐曽利が更に偽物を出した。


  「さすがにこれじゃ数が多すぎるな…」


  「魁紀さんすんません!時間かかっちまいました!」


  「魁紀のとこだけすげー人数だな!俺も混ぜろ!」


  それぞれの偽物を片付けた新井、田口が丑崎に合流した。


  「ええい!!どいつもこいつも!私たちの邪魔をするなぁぁぁぁ!!」


  「佐曽利さん、堕ちろ所まで堕ちたな…」


  狂いだした佐曽利は、相馬の首を掴み、人質とした。

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