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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
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第百三十八集 相馬恵

  10月25日 21:05 日本武道館 ステージ上


  「魔妖術・星煉歌(せいれんか)。らあぁぁぁぁ。」


  相馬が歌うと、背後から多数の燃える星が丑崎に向かって降り注がれた。


  燃える星か、薙ぎ払った方が良さそうだな。だけどここに来て炎の技か、炎同士じゃ相殺どころか更に炎上するだけ…苦手だけどやらなきゃか…


  普段から力んでるから丑火は気にすることなんてなかった。けどあっちはなぁ…力むなって言われるから俺には不向きすぎるんだよな…仕方ない、やろう。こう力を抜いて、優しく撫でるように。


  「凌水蓮天(りょうすいれんてん)!」


  今まで炎の技を使っていた丑崎だったが、ここで水の技を使って見せた。


  その水の技で燃える星々を全て薙ぎ払った。


  「炎の技しかできないわけではなかったのですね。」


  「そんなこと一度も言ったことはねぇな、でも向き不向きはあるとだけ言っておこう。」


  できればもう使わせないでくれ、凌水はお母さんの得意分野だ、力を抜いて大太刀なんざ扱い切れるかっての。


  「そうですか、魔妖術・煙漫歌(えんまんか)。ああぁぁぁぁ。」


  またあの煙か、吸うなと言われてもきっついなこれ、濃い訳では無いが多少視界が阻まれる。


  「魔妖術・螺旋歌(らせんか)。ああぁぁぁぁ!!」


  同じパターンかよ、それはもう効かねぇぞ。


  「丑火乱錘(ぎゅうからんつい)!」


  もっと大きく、もっと多く、そしてもっと速く!


  「いっけぇぇぇ!!」


  丑崎の妖気出力が上がり、丑火錘はより大きく、多く、そして速く、相馬に射出された。


  「さすがにこれは避けなければなりませんね。」


  やっと足を動かしたか、じゃあもっと動いてもらおうか。


  「お前ら!頼む!」


  「あいよ!」

  「任せて!」

  「了解です!」


  煙が晴れたタイミングで、田口、鷹取、新井が陰陽の構えを取っていた。


  「「炎呪符(えんじゅふ)(らん)!!」」


  「ここで今まで静かにしていた3人が動き出しますか…!」


  そうだ避けろ避けろ、もっと動いて余裕を無くせ。


  「これじゃ埒が明きません、魔妖術…」


  「おっと!それはダメだ歌姫様!今の相手は俺だからもっと俺を見てもらわないとな!」


  「邪魔です丑崎様!」


  「それが目的なんだよ!丑火凄斬(ぎゅうかせいざん)!」


  念の為だ、死なないように峰打ちで!


  「くぅっ!!」


  よし、ステージの壁側まで吹き飛ばせた、これで倒れてくれると嬉しいんだけど。


  「手加減をしているつもりですか…丑崎様…」


  ちっ、起き上がってくるか。


  「手加減?とんでもない、こっちも必死なんだよ、殺されそうになってるのに手加減してる余裕はねぇよ。」


  「ならばなぜ刃で私を斬らなかったのですか…今ので簡単に仕留めれたはずです…!」


  「そうか?さっきの凌水蓮天で力の入れ方間違えたんかなぁ、握りが弱くなって逆になっちゃったよ。」


  まあこんなんで騙せるとは思ってないけど。


  「なるほど、そういうことでしたか。戦闘慣れしてないのでそんなこともわからずに…」


  いやなんでだよ、なんでそうなるんだよ。


  「次はありません、覚悟してください。」


  「お、おう。」


  やっりづれぇなこいつ!


  「魔妖術・幽冥歌(ゆうめいか)。るるるる〜…」


  相馬が歌うと、今度は辺りが完全に暗くなった。


  完全に見えなくなったか、ならば音頼りだ。どこだ、どこにいる…って花念との戦いで右耳全く聞こえねぇ!


  「こちらですよ、魔妖術・螺旋歌!ああぁぁぁぁ!」


  「よりによってそっちか…!」


  狙っていたか偶然か、相馬は丑崎の右後ろに現れた。


  痛ってぇな…でもただの斬撃か、まだ動ける。


  「丑火激損(ぎゅうかげきそん)!」


  「ふふ、当たりませんよ。ではまた。」


  また消えやがった、さっきの煙と違ってこっちの意思で晴れさせることはできねぇのか。


  「今のは少し反応が遅れていましたね、もしや右が聞こえていないんですか?」


  暗闇の中から声だけが聞こえる。けど左からだ、俺の聞き具合を試してんのか。


  「こっちですよ、ふふ…」


  なんだ、何言ってんだ…


  「やはり、右が聞こえないのですね。魔妖術・螺旋歌。ああぁぁぁぁ!!」


  少しだけ声が…ちぃっ!間に合わねぇ!


  「魁紀!」


  「うおお!?」


  誰かに押された?でも助かった、これなら避けるのが間に合う!


  「右後ろだよな!丑火凄斬!」


  「余計なことをしてくれましたね、鷹取様!」


  「な!それじゃ今押してくれたのは…!鷹取!!」


  「魁紀が無傷なら…よかった…」


  相馬の術が切れ、徐々に辺りが明るくなり、ステージに倒れている鷹取が現れた。


  「鷹…取…」


  「大丈夫だよ魁紀…こんくらいじゃやられないよ…」


  「大丈夫じゃないだろ…!右手がやられてるじゃねぇかよ…!」


  「魁紀が無事なら安いもんだよ…ほら、恵ちゃんまた来るよ…!」


  ちぃっ!


  「少し掠ってしまいましたが、皆様を仕留めるのになんの支障もありません。」


  肩を掠めた程度か…


  「龍太郎、鷹取を頼んだ。」


  「おー!」


  ちまちまやってた俺が悪かった、傷つけたくないと腕が鈍った。だけどそれは言い訳だ、油断したのが1番ダメだ。


  「ようやく童子切を使うのですね。」


  「ああ、こっからは一瞬だ。お前が慣れる前に終わらすぞ、相馬恵。」


  (酒呑様、力を借りるぞ。)


  (カカッ、そうでなくてはな。行くぞ、魁紀よ。)


  (おう!)


  丑崎は大太刀を収めて童子切を抜き、酒呑童子の妖気を纏った。


  「行くぞ!」

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