第百三十六集 おかえり
10月25日 20:40 日本武道館外 南西側
大丈夫だよな、これでいいんだよな、花念。
剣を桜庭さんに刺してからちょっと経つけど、なんも反応がない。もっと待たなきゃいけないのか?それじゃみんなの所に行けねぇ。だから頼む、早く目を覚ましてくれ…
「……ここは…」
喋った…目が覚めた!
「桜庭さん!大丈夫ですか!意識は戻りましたか!」
「…君は…そうか、花念から僕を解放してくれたのか…礼を言う…」
よかった…ちゃんと意識が戻ってきた。
「礼は後でお願いします、ああそれより剣を抜かないと、ちょっと我慢してくださいね!」
ゆっくり抜くと余計苦しむからな、ここは迅速に!
「くっ…!」
「よし、これで大丈夫なはずです。でも体は本調子じゃないと思うんで、ちゃんと休んでてください。いや…ちょっと担いで行きますね!」
「あ…ちょっと君…!」
「すみません!話も後でお願いします!急いでるんで!」
早く大谷と圭のところに行かないと。
丑崎は桜庭を担ぎ、花念を持って大谷たちがいる西側へ向かった。
20:42 日本武道館外 西側
「龍太郎…目を覚ましてよ…」
「おーーい!大谷ーー!!圭ーー!!」
「「魁紀君!!」」
おっ、こっちも片付いててよかった。そしたら早く対処法を教えないと。
「大谷、花怨で龍太郎を刺せ、そうすれば龍太郎の意識は戻ってくる!」
「本当…!わかった!」
すると大谷は遠慮なく花怨を抜き、田口を刺した。
「おい刺す場所考えてから…!!」
「あっ…腕に刺しちゃった…」
えぇ…まあそこなら大丈夫だと思うけど遠慮ってもんが…
「これで…龍太郎が…」
「戻ってきてくれるよ、きっと。たぶん…」
「そこは自信持って言って欲しかったな〜」
「うむ、圭、自信無さすぎ。」
「最初だけは自信満々なのにね。」
うーん、第二班の中だとこんなにもボロくそ言われてるんだな圭は。
「今、龍太郎の手が動いた…!」
「…俺…何してたんだ…」
「「龍太郎ぉぉ!!!」」
よかった、龍太郎も無事に意識を取り戻した。
「もう心配したんだからねぇぇ!!!」
「朋実…圭…紀衣…七海…寿寧…魁紀…悪ぃな…心配かけた…」
「いいんだよだよんなこと、無事に帰ってきてよかった。」
本当に良かった…無事で…
「それより朋実、剣を抜いてくれねぇか、痛えんだけど…」
「ああごめんごめん!!」
「そんじゃ大谷、龍太郎のことは頼む。俺は羽澤たちの所に行かねぇと。」
ちょっと時間が経ち過ぎてるな、急ぐか。
「待て魁紀、まだ何かあるのか。」
「そうだ、まだ相馬恵と佐曽利さんの件が残ってる。」
「恵ちゃんが!俺も行く!」
「ダメだよ龍太郎!体がボロボロじゃん!」
さすがに龍太郎は連れて行けねぇな、見た感じだいぶ花怨に無茶されてる。いや待てよ、ここは1つ賭けに出ようか。
「わかった、でも条件が1つある。」
「なんだ、なんでも言ってくれ。迷惑かけた分は働いてやる!」
「よーしその意気だ、こいつを持ってろ、今後ずっとな。」
そう言って花念を龍太郎に投げた。
「おっと、こいつは…」
「花念だ。」
「なんでこいつを俺に。」
「約束だ、そいつを花怨とずっと一緒に居させること。だから花怨を持ってるお前が持ってろ。」
約束は果たしたぞ、花念。いやでももっと欲を言えばよかったな、龍太郎に力を貸してやれとか。
「わかった、二刀流はやった事ねぇけど、それは狂夜に色々教わるとしよう。」
「よし、じゃあ大谷たちは桜庭さんを頼む。この人はたぶん龍太郎よりも長い時間乗っ取られてるから、慣れるのに時間がかかるはずだ。できれば病院に連れてってくれると助かる。」
だが大谷は下を向いて黙っていた。
「朋実、俺からも頼む。」
「誰のせいでこうなってると思ってんの!私がどれだけ辛かったか知りもしないで!」
「それに関しては悪かった…でも恵ちゃんは放っておけない、これは前に受けた任務の続きのようなもんだからな、必ず果たす。」
「うううう…じゃあ1つだけ答えて、私と恵ちゃんどっちが大事?」
おっと、ここでメンヘラ大谷さんが出てきてしまった。答えを間違えることはないと思うけど、間違えたりしたら龍太郎死ぬんだろうな…
「そんなこと、朋実に決まってるだろ。」
「「ひゅー、かっこいい!」」
「や、やめろお前ら!!」
「もういっそのこと告っちゃえよ龍太郎。」
「か、か魁紀!お前!」
追い討ちをかけてみた。
「ああクソっ、調子がおかしくなる…朋実、全部終わったらちゃんと言うから、待っててくれ。」
「うん…わかった…」
「「ひゅーひゅー!」」
「お前ら!!」
「龍太郎、そんなことはいいから行けるなら早く行くぞ。」
「そんなことじゃねぇ大事なことだ!行くけど!」
調子戻ってきたじゃん、安心安心。
「じゃあ行くぞ、大谷たちも頼むな!」
「任せて!」
「恵ちゃんは、俺が助ける!!」