第百三十三集 花怨
10月25日 20:10 日本武道館外 西側 大谷朋実サイド
「花速怨刀・空麒麟葬!」
花怨の武術血界内にて、第二班と花怨は戦っていた。
そして花怨が放った空麒麟葬、黒と黄が混ざった禍々しい斬撃は5人を襲った。
「龍太郎の技を使いやがって!」
幸い全員避けることに成功した。
「ふん、これは元々俺の力だ、あのガキがやっていたことは俺の猿真似に過ぎん。」
「なら〜、君が今使ってる花速刀は龍太郎君の技だから〜、お互い様なんじゃない〜?」
「うむ、言ってること、完全にブーメラン。」
花怨に対し、日高と井上が言葉を返す。
「貴様ら…俺をコケにしているのか!!」
「そろそろ喋らないでくれないかな、龍太郎の声でお前の言葉なんて聞きたくないのよ。」
「コケにしてるなんてとんでもない、もしそうならこの足は震えていないはずだ!」
「圭君無理してる〜、かわいい〜!」
妹山と新谷も言葉を返す、だが新谷だけは他と比べて随分と覇気が足りなかった。
「貴様ら貴様らぁ…!!」
「来るよ!みんな!」
「「了解!!」」
花怨の構えと同時に、大谷の号令で第二班も構えた。
「花速怨刀・薊!」
花怨は居合を放った、居合による斬撃は先程とは異なり、複数の地を走る斬撃を繰り出した。
「寿寧!」
「わかっている!冰妖術・落冰!」
妹山が剣を抜いて振りかざすと、斬撃に向かって氷が落ちていった。
「七海もお願い!」
「うむ、了解。土呪符・壁。」
続いて井上は陰陽で土の壁を作った。
すると斬撃は壁と氷によってかき消された。
「次は〜、私〜!」
日高は土の壁を走って登り、高く跳んだ。
「あとで許してね龍太郎君〜、対妖魔格闘術・泰鷲脚!」
日高は花怨とまだ距離が離れた所で蹴りを放った。
「そんなところから何が出来る!撃ち落とす!」
「それは〜、早とちりだね〜。」
「何…!」
蹴りは蹴りだったが、日高の蹴りからは斬撃に等しい衝撃波が放たれていた。
「それがどうした!!」
「それがこうなるんだよ、圭!合わせて!」
「了解!雷呪符・霆!」
「対妖魔格闘術・降龍十八掌!」
花怨の頭上から霆が落ち、腹に大谷の降龍十八掌を受けた。
「クソが…何故だ、血界の中にいる俺は…最強では無いのか…!!」
そう言っている花怨だったが、持っていた剣を落とした。
「ち、力が入らん…何故だ…あああ…!!」
ついには膝から落ちていき、地面に這いつくばった。
「円陣が消えていく。」
同時に、展開されていた花怨の武術血界も消えていった。
「何が何だかわかんないけど、そこまでだ、花怨。龍太郎は返してもらうよ。」
「ははっ…無駄だ、俺の意識が飛ぶほど妖気を抜かなければガキの意識は戻ってこねぇよ…」
「妖気を抜く?それはどうやるの?」
「教えるわけねぇだろ…何も俺はまだ…まだ負けてはいないのだ…!」
花怨は残った力でなんとか立ち上がった。
「血界など無くとも、俺は貴様らなぞに!!」
「うむ、もう、立ち上がらないで。それは龍太郎君の体、お前が無茶したら、龍太郎君に響く。」
「往生際が悪いのよ、さっさと龍太郎を返してもらうぞ。」
花怨の前に、井上と妹山が立つ。
「へっ、後から来た雑魚が、調子に乗るな!花速怨刀・金盞花!」
花怨は剣を拾って空に向けて振ると、自身を中心に橙色の花を咲かせた。
「あの花〜、あいつが言った通り金盞花だね〜。」
「杯のような形、オレンジ色の花びら、間違いなく金盞花だね。たぶん…いややっぱ違うかな…」
「うむ、違わない。」
「でもあれではなんの意味もないぞ。」
「さあ蓄えろ金盞花、悲しみと嘆きをその杯に注げ!!」
徐々に、金盞花は赤く染まっていく。
「どんどん赤くなっていく…」
「うむ、何か来る。」
「嫌だな〜、あれ〜。」
「妹山さん、あれどうなってるかわかる?」
「妖気が溜まっていくようにしか見えない、何か大きい術を放とうとしてるのではないか?」
5人が考えてる間に、金盞花は真っ赤に染まった。
「金盞花よ、血の雨を降らせ!」
丸まっていた金盞花の花びらは真っ直ぐ上に向き、赤い雨を降らせ始めた。
「ははっ、はははははははっ!!俺は妖気切れでここで終わるが、貴様らもこれで終いだ!この雨は貴様らの皮膚を腐らし、蝕む!命絶えるまで苦しみ、嘆き、喚くがいい!」
赤い雨が降っている中、花怨は再び倒れていく。
「すまねぇな花念…先に行ってる…」
最後にそう言い残し、花怨は倒れた。
「七海!!」
「うむ、任せろ。第五班の通君がやっていたような感じで、風呪符・断!」
倒れた花怨含め、5人の頭上に円状に動く風が現れ、降り注ぐ赤い雨を遮断した。
「ナイスだ井上さん!それと結局、なんであいつは勝手に力尽きたのかな。」
「そうだね〜、わからないけど〜、龍太郎君の体を取り戻したから私たちの勝ち〜!」
「みんな、ありがとう…それとごめん、何も言わずに…」
大谷は他の4人の所に戻り、頭を下げて謝罪をした。
「うむ、そうだぞ。次から報連相はちゃんとするように。」
「そうだよ朋実、そのための班なんだから。」
「ありがとう、七海、寿寧。それと寿寧、さっきからずっと気になってたことなんだけどさ。」
大谷は少し言いづらそうに妹山を見る。
「何よ言いづらそうに、思ったことがあったならはっきり言えばいいのよ。」
「その寝癖、もっとどうにかならなかった?」
「失礼じゃない!つい先程まで寝ていたのだから仕方ないじゃない!」
寝癖、その一言で片付けばいいのだが、妹山の寝癖は通常の人一倍に酷いものであった。
「でも〜、寿寧の寝癖っていつも凄いよね〜、治まってる時見たことないかも〜。」
「紀衣までも…」
「うむ、せめて家出る前に、直すんだな。」
「僕は特に…今の方が個性あるしいいんじゃないかなぁって…やっぱりなんでもない…」
「圭、そこになおれぃ、剣の錆にしてくれる!」
「あっちょ今危ないんだから暴れないでよ!!」
断の下で、新谷と妹山は追いかけっこを始めたのだった。
「龍太郎、早く戻ってきて…お願い…」
そして大谷は、龍太郎の体の傍で、彼の回復を待つのであった。