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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
138/193

第百二十八集 誰だテメェ

  10月25日 19:35 日本武道館


  相馬恵が…ライブをしてる…でもなんか様子がおかしい。


  「恵ちゃんが、妖魔相手であんなに楽しそうに歌うなんて…」


  冬は力が抜けたように体制を崩した。


  「これはこれは!ようこそいらっしゃいました!我が賓客達よ。ほら恵、挨拶をしないと失礼ですよ。」


  この声は…!佐曽利さんか!


  「あら、丑崎様に鷹取様、それに羽澤様や鬼寅様まで。わざわざ私のライブに来て頂き、誠にありがとうございます。」


  「誰だテメェは!」


  冬は立ち上がって叫ぶ。


  「恵ちゃんはな、ライブ中とそれ以外で人が違うんじゃないかってくらい言葉遣いが違ぇんだよ。マスコミやら他の歌手と話す時はすんげー丁寧だけどよ、ライブ中は一切そんな言葉遣いはしねぇんだよ!誰なんだよテメェは…恵ちゃんの皮を被ってファンを舐めた真似してんじゃねぇ!」


  「ほう、さすがですね。こんなコアなファンがいてくれるとプロデューサーとして嬉しいですよ。恵、ちゃんとプロ意識を持ちなさい、ファンが傷つきますよ。」


  「申し訳ございません佐曽利様。」


  冬の言う通り、今の相馬恵はおかしい。俺たちと接してた時の口調に聞こえるけど、なんだか違う。


  「冬奈の言った通りだよ…妖気漏れてるよ、恵ちゃん。」


  「「は?」」


  相馬恵から妖気?昨日まではそんなこと…


  「いやはや、さすがです。馬鹿だが天才であることは侮れませんね。」


  「誰が馬鹿だ!」


  お前だよお前。


  「隠していても仕方ありません、恵、もう十分ですよ。」


  「かしこまりました、佐曽利様。」


  突如、相馬恵から妖気が溢れ出す。


  「皆様見ててください、これが新しい私です!」


  まるで妖魔だ…人間の形を保ってはいるが雰囲気は完全に妖魔だ。


  なんでだ、妖気を持っていたなら今まで気づかないわけがない。なにせ同じ屋根の下で暮らしてたからな、だがなんでそれを隠し通せた…


  「答え合わせは必要ですか?」


  「要らないよ、佐曽利さんがさっき渡したんでしょ。少ない期間だったけど恵ちゃんと一緒に過ごしてきた、その時に妖気のありなしなんてわからないはずないでしょ。」


  「ククク…クハハハハハハハハ!!!さすがです!!全国を探してもあなたのような天才は見つからないでしょう!!やはりあなたに任務を依頼して大正解でした!あなたが私の依頼をこなして頂ければ私の事を疑うやつもいなくなるというもの!ええ全て私です、私がやったのです!!恵に妖気を与えたのも、ここに妖魔を集めたのも、モヤを使ってファンを皆殺しにしたのも全て私です!!どうですか?私の描いた物語は完璧なのです!恵と世界に羽ばたくのも近い未来でしょう!あなたたちはそれを眺める資格を与えましょう!恵が世界一の歌姫になるところをその目で見届けるがいい!!」


  こいつ…!!


  「黙れよ、ゴミが。」


  冬が冷たく言い放った。


  「今、なんと?」


  「黙れつってんだよゴミが、二度と喋んな。あーしらの恵ちゃんになにしてんだよゴミ、今喋ったこと全部てめぇの願望だろうが、たかがてめぇの願望に恵ちゃん巻き込んでんじゃねぇよ。ガタガタ言ってたけど結局てめぇなにがしてぇんだ?世界一なってどうすんだ?富か?名声か?そんなもん人の力借りてねぇで自分でどうにかしろやゴミが!」


  ゴミゴミのラッシュ。佐曽利さんは言った、相馬恵が世界一になると。それ即ち佐曽利さんが世界一の歌姫のプロデューサーになるということ、富と名声は勝手に着いてくる。つまりそれを狙って…


  「あなたも私が殺してきたファンと同じタイプでしたか…残念です、せっかくあなたのような理解のあるファンがいてくれたというのに。恵、やっておしまいなさい。」


  「はい、佐曽利様。」


  佐曽利さんはステージ裏へ歩いていった。


  「おい待て!ゴミが、こんな時になっても恵ちゃんを使うのか!」


  「さあ妖魔たちよ!恵のために動きなさい!そこにいる10人の人間たちを殺しなさい!」


  さっきまで動かずにいた妖魔共が一気に動き出した。


  やべぇ、まだ囲まれてないけど1万の妖魔を相手にしねぇと…!


  「本性を出したね、やっと。」


  「ええ、待ちくたびれたわ。」


  「天才の私を舐めた罪を償わせてやる!」


  羽澤、鬼寅、鷹取が1歩前に出てそれぞれ構えた。


  「雀呪符(じゃんじゅふ)一気通貫(イッキツウカン)!」


  「一虎当千(いっことうせん)!」


  「鷹天襲突(ようてんしゅうとつ)!」


  3人とも突き抜ける攻撃をし、道を切り開いた。


  「気は進まないけど、雑魚は任せて!」


  「恵ちゃんを元に戻しなさい!でないと許さないわ!」


  「ちゃんと天才のいい所を、魁紀に見せなきゃだからね!」


  あいつら…


  「魁紀さん!恵ちゃんはあーしが止めます!あのゴミをお願いします!」


  「わかった!無茶すんなよ冬!」


  「任せろっすよ!推しが困った時は、ファンが助けるのは当然だろ!!」


  佐曽利さんはステージ裏に行った、でアナウンスが聞こえたってことは放送室かなんかにいるってことだ。少し遠いがあの3人が道を作ってくれた、この機に!


  だが突然、横の壁がぶち壊され、2つの影が現れる。


  「探したぞ、丑崎魁紀!童子切を頂いていく!」


  「また会ったね角の君!約束通り本気で潰してあげるよ!」


  「お前らは…!!」


  現れたのは花怨と花念、突進してきた勢いに押されて、そのまま強引に連れられていく。


  「さあ、童子切を渡せ!」


  「童子切さえあれば、今度こそ僕たちは平和に暮らせる!」


  首を掴まれて、壁に押さえつけられた。なんだ、こいつらも酒呑様の力が欲しい口か。


  「お前らごときに、渡すわけねぇだろ!!」


  「ならば殺して奪うまで!」


  「ちぃっ!!」


  押さえつける力が増していき、壁は壊れ、外に放り出された。


  まずいな、首はもう掴まれてないけどだいぶ高さあるな。花怨と花念はもう斬りかかってきてる、ここは丑気で!


  「ははっ!探したのはこっちもだよ!会いに来てくれて嬉しいよ、花怨!」


  大谷…!!


  「なんだ貴様は!」


  「なんだとは酷いじゃない、あなたに依存しまくりの、大谷朋実だよ!!」


  大谷は花怨に向かって不意打ちの蹴りをかまし、そのまま2人して違う方向に落ちていった。


  これはチャンスだ、花怨と花念を引き剥がせたのは大きい。


  「あの女ぁ!!」


  「どうした花念、お兄ちゃんがいなくなって寂しくなったのか!」


  「ほざけ!僕と兄さんはもう引き剥がされることはない!君をここで殺し、童子切を頂く!」


  「魁紀君!!」


  俺を呼ぶ声、ああ圭か。花怨は手強いだろうし、大谷に人の心が残ってるなら龍太郎の体を傷つけることも難しいだろ。


  落ちながら、そっと大谷の方に指を指した。


  「…うん!わかった!」


  助かるぜ、圭。


  「じゃあ花念、前の続きと行こうか!」


  「驕るなよ、人間が!!」


  「俺を人間扱いしてくれるか、嬉しいじゃねぇか!」

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