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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
136/193

第百二十六集 作戦会議

  10月25日 13:00 1年5組専用体育館


 3日ほど経ち、ずっと作戦について考えながら修行をした。少しでも強くなれるように。


 ただ…


  「はい先輩方お疲れ、とりあえず1時間休憩、休憩が終わったら練習再開だ。解散!」


  死ぬ…こんなんダンスの練習じゃねぇだろ…どうやったら片手で体支えられるんだよおかしいだろ…あと頭を床に付けて体を回転させるとか殺す気だろ…


  「はいみんな、ちゃんと水分取ってね。今日はいつも以上に過酷だったからストレッチもしっかりやってね、手伝いが必要だったら呼んで!」


  すげえな圭のやつ…


  「魁紀君大丈夫?昨日もだいぶやられてたみたいだし、体に不具合とかは?」


  「全身不具合だよ…」


  「それは大変だね…じゃあちょっと体起こして足を広げて、背中押すから。」


  「ありがとう…」


  いや待て、俺足硬いから押されたら死ぬ…!


  「圭押すのちょっと待って…って痛いたいたいたいたい!!!」


  「魁紀君かった!よくこれで今まで動けてたね。」

 

  「誤魔化してたからな…上半身はともかく下半身は柔軟じゃないから、動きの制限がな…」


  だから両足広げて前に体を倒すなんて死んでしまう。


  「じゃあ軽く押すから、痛かったら言ってね。」


  「助かる…いててて…」


  「本当に硬いね…」


  「すごいだろ。」


  「褒めてないんだけどね…」


  ダンスの練習、いつまで続くかわかんないけど、そろそろ龍太郎を助けるために動かなきゃな。


  それにはまずあの5人を呼ばなきゃな。夜に飯にでも誘ってみるか。


  「そういえば魁紀君、龍太郎の件はどうなったの?」


  今それを聞いてくるか。関係ないっていうのも今更だし、話しておくか。


  「ちょうど今日の夜に龍太郎を助けるために作戦会議をするつもりだ。俺含めて6人で。」


  「そうか…ありがとう魁紀君、うちの班長を助けようとしてくれて。」


  「当たり前だろ、友達なんだから。」


  龍太郎を取り戻して、相馬恵を活動再開させるんだ。


  「それなら魁紀君、1つお願いしてもいいかな。」


  圭は俺の背中を押す手を止めた。


  「僕も連れてってくれない?必ず役に立ってみせるから。うんたぶん…頑張るから…」


  自信無くさないで…


  「先に言っておくと、この件はもう既に警察や妖術救助隊が関わってる。俺たちが別で勝手に行動してるのを見られた時、最悪何かしらの処分を受けることになるかもしれない。それでもか?」


  「うん、僕の班の班長の危機に班員の僕がなにもしないのはおかしいでしょ?少なくとも僕はそう思う。大谷さん、井上さん、妹山(せやま)さん、日高さんのみんなもこのことを知っていたらきっと同じことをするはず。」


  「そうか。じゃあ頼らせてもらうよ圭。」


  「ありがとう、わがままを聞いてくれて。」


  「いや、むしろ助かるよ。宿題を出されたもんだからね。」


  「宿題?」


  おっと、その話はしなくてもよかったな。


  「気にしないで、こっちの話だ。」


  「わかった。」


  「ちなみに、大谷はさっき言ってた6人に含まれている。圭と同じ考えだったよ、様子がちょっと変だったけど。」


  病んでるというか闇堕ちしたというか。


  「そういえば確かに、昨日の練習からちょっと違和感があったんだよね。急に怖い笑い方しだしてた。」


  うっわこっわ、やっぱ闇堕ちしてんじゃねぇか。


  「じゃあ俺からも1つ頼みがある、大谷になんかあった時、圭と第二班のみんなで助けてやってくれ。」


  嫌な予感がした時は先に手を打つべし、古事記に俺が追加で書いたから間違いない。


  「わかった、みんなに言っておくよ。」


  「よし、それじゃ今日の夜ご飯、どっか行って食べない?圭含めて作戦会議をする。」


  「了解。」


  「場所はそうだな、新横浜の討魔酒場にしよう。」


  これで人手に困ることはもうないはず、あとは俺が最後までみんなを信じ切れば全部上手くいく。


  18:00 新横浜 討魔酒場 食堂


  「なんか人多くない?」


  「なんでこんなに人が多くなったのかしら。」


  「私は人が多くてもいいけどね!魁紀さえいてくれればなんでもいい!」


  うーん、やっぱり多いよなあ…


  「私もなんでもいいよ、龍太郎を取り戻せるなら。」


  「てかよくこんだけ集まりましたね、さすがの人望ですね魁紀さん。」


  「これ僕場違いじゃないかな、大丈夫かな…」


  別に俺は人望あるわけじゃねぇし圭も場違いじゃないから大丈夫だ、たぶん。


  「じゃあ早速だが作戦会議を始めるぞ。まず今回の目的をはっきりさせよう。」


  「龍太郎君の救出と。」


  「相馬恵の活動復帰だわ。」


  「そう、その2つだ。」


  「ちょっと待って魁紀君、なんで歌姫が関わってるんだ?」


  そうか、圭に話してなかったな。


  「極秘情報だが、ニュースは見ただろ?相馬恵は活動休止してるが、身を危険から守るために今はうちで匿ってる。」


  「嘘でしょ…」


  「マジすか!?恵ちゃんと同じ屋根の下なんて羨ましすぎますので今すぐ会わせてくださいお願いしますなんでもします!」


  「ん?今なんでもするって言ったよね?」


  「魁紀、それはそこまでにして。」


  「はい。」


  さすがに続きは許されなかった。


  「まあそんなわけだ、それで2つの目的に対して、ちゃんと倒すべき相手はそれぞれいる。」


  「自称紳士のモヤの本体。」


  「花念、そして龍太郎を乗っ取った花怨。」


  「モヤ紳士についての情報は鷹取が言った通り、自称紳士の情報以外全くなし。花念と花怨はそれぞれ元妖刀だったが、何故か使用者の体を乗っ取って自分の意思で動いている。」


  で、そこでこいつらは同じ目的なのかと言うと。


  「モヤ紳士、そして花念と花怨。恐らくだがこいつらの目的は違うと思う。」


  「それはなんでですか?」


  「自分の口で言ってくれたからだ。モヤ紳士は自分は相馬恵の騎士だと言い、妨げになるものは血に染まってもらう。そして相馬恵が世界一になることを望んでいた。対して花念と花怨は自分達の居場所が欲しかった、兄弟揃ってな。目的が一緒じゃない以上、同じ場所にいることはないだろう。だから今回の作戦は二手に分かれる必要がある。」


  「でもどこにいるかはわからないんだよね、どうやって探すの?」


  圭に痛いとこを突かれてしまった。


  「それなんだよな問題は…」


  「おもろい話をしちょるのう、わしも聞かせてもらおうか。」


  この声…!


  「葉月先生、なんでここに?」


  振り向くと、葉月先生がいた。


  「任務が終わったから軽く飯をと思っちょったらおまんらがいたからのう。つい癖で盗み聞きをしてしもうた。悪いのう。」


  「いえ、それはいいんですけど。」


  「お詫びと言ってはなんじゃが、わしが情報をやろう。」


  それは願ってもないことだけどなんで葉月先生がこのこと知ってんだ?


  「なんで葉月先生がこのことを?」


  「最初に調べとったのは花念と花怨じゃ、洛陽で厳重に保管された花念が唐突に消え、同時に前の保有者だった桜庭薫(さくらにわかおる)も行方不明になった。そして花怨、ついこないだ龍太郎と一緒に行方不明になった。」


  花念と桜庭薫が行方不明になったと思ったら、龍太郎と俺たちの前に現れて、花怨を蘇らせて龍太郎ごと連れ去っていった。


  「じゃがちょうど先日、花念と花怨の居場所は掴んだ。」


  「それはどこですか!」


  大谷がテーブルを叩いて、鬼の形相で葉月先生に迫った。


  「江戸城跡じゃ。」


  江戸城跡…なんでそんなとこに…


  「理由は知らんが、やつらはあそこを拠点にしちょるらしい。そして今は動きを止めている。」


  つまり、叩くなら今…


  「わかりました、ありがとうございます。ふふふ…」


  「「えっ。」」


  大谷の笑い方に対して全員が反応した、あまりにも怖かった。


  「次は歌姫さんの方じゃが、こっちはしっぽを捕まえるのは簡単じゃった。」


  簡単…?モヤが自称紳士って言ってるだけだったんだけど…


  「なんじゃ気づかんかったのか。健太や千尋、優生でも連れて行けばすぐわかったはずじゃ。」


  「それで、誰なんすか、犯人は。」


  「プロデューサーの佐曽利勇生じゃ。」


  「「うそっ!!」」


  冬と鷹取は驚きのあまり席を立ってしまった。


  「あんな優しい人だったのになんで!」


  「私に任務を依頼した時もあんなに紳士的だったのに…え、紳士…」


  「そう、そこじゃ。おまんらが見たモヤとやらは仕草や言葉こそ佐曽利とは違ったじゃろうが、本質は同じじゃ。言わば佐曽利が表、モヤが裏の人格みたいなもんじゃ。」


  言われてみれば確かに、佐曽利さんもモヤも目的は同じだった、相馬恵を守り、世界一に押し上げるため。


  「佐曽利は前からいろいろ怪しくてのう、基本的にどんな事件があっても妖術救助隊の前に警察が事件に当たるんじゃが、佐曽利が介入したせいで死体の情報は警察の段階で揉み消されるんじゃ。人が死んどるのに情報が出回らないから調べてみたらこれじゃ、佐曽利は自分だと分からないように分身にモヤをかけ、そいつに裏で工作させちょる。」


  マジか…これが本当なら今まで俺たちが受けた任務は一体…


  「それじゃ私に任務を依頼したのはなんでですか?人を殺めるんだったら任務なんて依頼する必要はないんじゃないですか。」


  それもそうだ、バレたらまずいのに外の人間に護衛をお願いする理由がわからん。


  「簡単な話じゃ。そうすることによって少しでも自分が疑われる可能性を潰すんじゃ、そもそも歌姫さんのプロデューサーっつー地位に立っとれりゃどんな可能性も金やら力やらで握りつぶせるんじゃがのう。」


  人柄が良かったから疑うこともなかった…疑ったら俺達も握りつぶされていたところだった…


  いや待てよ、じゃあその事を知った俺らはどうなる…でもさすがに今の俺達の情報は佐曽利さんの所に入らないんじゃ…ただ万が一のこともある、もし俺達の情報が佐曽利さんに渡ったとしたら起こりうることは…はっ…!


  「鷹取!急いで家に戻るぞ!相馬恵が危ねぇ!」

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