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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
134/193

第百二十四集 立直一発自摸

  10月21日 9:15 1年5組専用体育館


  「じゃあ始めよ、童子切も遠慮なく使っていいから。」


  「わかった。」


  羽澤に童子切を使うのは少々心苦しいが、使うべきタイミングが来たら使おう。


  にしてもさっきの怖かったな、なんで女子ってちょっと睨んだだけであんなに怖くなるの?どういう現象?ニランダラコワイ現象って名付けたい。


  「行くよ、雀呪符(じゃんじゅふ)断幺九(たんやお)!」


  あれは確か斬撃だったな、なら。


  「丑火斬(ぎゅうかざん)!」


  「魁紀ならそうするよね!雀呪符・一盃口(いーぺーこ)!」


  なんだそりゃ聞いたことねぇな。って斬撃がもう1発!


  「予想外の攻撃が来ると咄嗟に避ける、そしてこれでさらに追い詰める!雀呪符・一気通貫(いっきつうかん)!」


  一から九のなんだあれ、萬子だったっけ?が突っ込んで来る…!どういう仕組みかわかんないけど、こんなんで俺を追い詰められると思うなよ羽澤!


  「丑火壁(ぎゅうかへき)!」


  炎の壁だ、これなら防げる!


  「甘いよ魁紀、一気通貫は妖気の間を貫通する!」


  丑火壁から一気通貫とやらが貫通してきて、モロに食らってしまった。


  「どうかな魁紀、私だってずっと何もしてこなかったわけじゃないよ!」


  確かにそうだな…いてててて。思いっきり腹を殴られた気分だ。だが冷残との戦いを潜り抜けた俺はこんなもんじゃねぇぞ。


  「まだまだ、こんなんじゃ俺は倒れんぞ。」


  「しぶといね。」


  「しぶとくて悪いね、次だ。丑神(うしがみ)吽那迦(うなか)よ、我に力を与えたもう、捧げるは我が魂の祈り。突っ走れ、丑気(ぎゅうき)!」


  1つ段階を上げる、妖気をどんどん使って妖気限度を高める。それには丑気が1番効率がいい。


  「丑気…それを引き出せて嬉しいよ。」


  「ちょ魁紀さん!オーラ出しすぎだ!ダンス練習に影響が出ちまうだろうが!」


  「すまん冬!ちょっとだけ我慢して練習してくれ!」


  「魁紀おま!いつから冬奈とそんな仲になったんだ!」


  「何サボってんだバカ兄貴、あーしは魁紀さんのこと尊敬してんだからその呼び方を許してんだよ。」


  あー、なんか話ややこしくなってるけどいいや、夏だし。


  「行くぞ羽澤。」


  「うん、来い!」


  1番警戒しなきゃいけないのはリーチってやつだ、こっちから踏み込んだら威力が増した陰陽が飛んでくる。


  だけど丑気を使った今なら、突進力でなんとかなる。


  「一牛吼地(いちぎゅうこうち)。」


  「速い…!雀呪符・立直(リーチ)!」


  「それじゃ遅せぇよ。」


  ただ、ギリギリ間に合ったのか、俺の動きが少しだけ固まって、振り遅れた。


  「あっぶない!ギリギリ!立直一発、雀呪符・三色同順(さんしょくどうじゅん)!」


  至近距離でそれを放つか、間に合うかな!


  「丑火斬(ぎゅうかざん)!」


  こっちも至近距離での斬撃だ、間に合わせてやる!


  「間に合うのそれ!?」


  反撃が間に合って爆発が起きる。俺は反動で軽く後ろに仰け反ったが、羽澤は完全に後ろに吹っ飛んでしまった。


  「まだやれるか?」


  「まだこんなんじゃ、終わんないよ。」


  よし、まだ丑気を続けたまま戦える。


  「じゃあ、行くぞ。」


  「うん!」


  「丑火錘(ぎゅうかつい)。」


  とりあえず遠距離で様子見だ。


  「雀呪符・(はつ)!」


  「くっ!」


  衝撃波か、丑火錘が消えちまったじゃねえか。


  「次、雀呪符・(ちゅん)!」


  中の字、なんだかよくわからんが避けられる!


  「丑火斬(ぎゅうかざん)!」


  「させない!雀呪符・(はく)!」


  今度は白い壁か、なんなんださっきから!


  「これで揃った、テンパイ、雀呪符・立直(リーチ)!」


  またリーチか、だけど今度は踏み込まねえぞ。


  「さすがにもう踏み込んで来ないよね、なら自分で持ってくるまで!」


  羽澤は右手を上げた。何をするつもりだ。


  「今、我が清廉潔白の願いに応えよ!立直一発自摸(リーチいっぱつツモ)!雀呪符・大三元(だいさんげん)!!」


  なんだかよく分からんがとりあえず距離を!


  「無駄だよ!」


  「何だこの壁は!」


  後ろに飛んで下がると、白い壁にぶち当たった。


  「大三元、白發中の3枚の牌が揃うと出来上がる役。白は的、發は矢、そして中は…当たるということ!」


  なるほど、この後ろの壁がその白で、今迫ってくる發が矢ってことか。壁のせいで避ける場所がない、しかもこの發から感じられる妖気も並のもんじゃねぇ…くそっ!


  「当たってくれたね、魁紀。これでちゃんと私のことは下の名前で。」


  「それは少し早とちりだな羽澤。」


  「なに!」


  發に当たりはしたが、童子切を抜いたことで酒呑様の力でなんとかなった。


  (カッカッカッ!どうした魁紀よ、苦戦してるではないか。)


  (羽澤は強かったってことだよ。それと羽澤は真剣なのに、俺がちょっとずつ力を出すのも失礼ってもんだ。)


  (言うでは無いか、でも無理はするでないぞ。)


  (言われなくても!)


  「その姿、酒呑童子…」


  「ちゃんと俺だ、童子切を抜くと酒呑様の力が勝手に放出されるからな、こんな見た目になるのは仕方ない。」


  さて、今の状態なら使う妖気の量は尋常じゃないはず。この状態を保てられれば…ってもうちょっとしんどいな…


  「さあ羽澤、もう1段階上げるぞ。」


  「これが魁紀の本気…ってことだね…」


  「そうだ、だけどそんなに長くは続かない…続く限りやってやる。来るなら今…」


  あれ…ダメだ…足が勝手に…


  「魁紀?魁紀!!」


 

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