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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
130/193

第百二十集 血濡れの歌姫

  10月19日 10:00 鴨居 らりぽ〜と


  どこに行くか悩んだ末、らりぽ〜とに来てしまった。買い物するわけでもなく、映画を見るわけでもなく、ただ散歩するために来た。


  にしても本当に広いよな、ここ。何度迷子になったことか。小さい頃はプラモデルを見に来て、気づいたら親とはぐれたし、あんましいい思い出ねぇな…


  「さて、どう時間潰そうかな。」


  なーんも思いつかない、なんせ予定なんて未定だ。ま、とりあえず歩くか。


  10:05 らりぽ〜と1F


  1階は服ばっか売ってんなー、俺ファッションに疎いからちゃんとした服全然持ってないんだよな。今着てる服なんて中学の時からずっと着てるパーカーだし、上は紺、下は黒でめっちゃ色合い暗いし。


  それに比べて店員さんとか歩いてる他の学生っぽいやつらを見ろ、めちゃくちゃオシャレ、そしてかわいい。


  「俺もそろそろいいセンスの服買った方がいいんかなぁ。」


  10:20 らりぽ〜と2F


  2階、服とか靴とかの店ばっか。久しぶりにきたけどここってそんなに服屋に独占されてたっけ?どこ見ても服、服、服。もう帰ろうかな…


  でも新しい靴は欲しいな、冷残、花念とモヤとの戦いで前に履いてた靴がだいぶボロボロだ。確か3階にXYZマートがあったはず、そこで買おう。


  10:25 らりぽ〜と3F


  あったあった、ここのランニングシューズ軽くて履き心地もいいから好きなんだよなぁ。前の靴はだいぶ前のモデルだから、最新モデルのやつがいいな、さらに言うなら青とオレンジが入ってるやつがいい。


  「あれ、魁紀君じゃん。こんなところで何してるの?」


  こんな時まで知り合いがいるとは、いっそのこと県外でも行けばよかった。


  声の方に振り向くと、新谷がそこにいた。


  「よっ、ここで会うとは奇遇だな。」


  「本当にそうだよ、靴のコーナーにいるってことは、魁紀君も靴買いに来たの?」


  「そうそう、今履いてる靴がもうダメになっちゃってな。もってことはお前もか?」


  「うん、僕は文化祭のダンスに向けて新しい靴をね。いいダンスを組み立てるにはまず足からだからね。たぶん…」


  たぶんかよ…


  「それより今日は1人なんだね、羽澤さんも鬼寅さんもいないし、あとこないだから来た見学の子も。」


  「うるさくなるから1人で出てきた。」


  「そ、そうなんだね、大変だね。」


  「まあな。せっかくだし、2人で買い物してくか、この後暇か?」


  「うん、暇だよ。一緒に行こうか。」


  その後、しばらく新谷と買い物をした。


  男2人で買い物するってのもなかなか新鮮な気分だ、なんだかすごく気楽な感じ。わちゃわちゃしてなくてすごく落ち着く。


  12:00 らりぽ〜と3F フードコート


  いろいろ見回ってたら昼になってしまった。そろそろ飯でも食おうってことで、フードコートに来た。


  「思ったより時間経ったね。」


  「そうだな、靴買うだけの予定だったのに運動着も買っちゃった。」


  上下セットを2着も買ってしまった。


  今後休みの日でも何が起きるかわからんから動きやすい服装をだね。


  「じゃあ魁紀君先に買って来ていいよ、僕席取っとくから。」


  「おーけー、助かる。」


  新谷とほぼ初めて話したりするけど、今までの誰よりもやりやすいな。うちのクラスの連中が特殊すぎるってのもあるけど。


  さてさて、何を買おうか。うーん、牛タン定食かなやっぱ。


  注文だけして、呼び出しベルを貰って席に戻る。


  「おまたせ、新谷も行ってきな。」


  「ありがとう。」


  いやぁ、いいなこの普通のやりとり。今までになかった感覚だ。


  少し待つと、新谷もベルを持って戻ってきた。


  「何頼んだ?」


  「僕は海鮮丼だね、魁紀君は何頼んだ?」


  「俺は牛タン定食。」


  「いいね、僕もそっちと悩んだけど、結局好きな海鮮丼にしたよ。」


  俺が欲しかった学生生活はこういうものなのかもしれない。友達と買い物して、ご飯を食べて、それで普通の会話をし続ける。これはいいものだな…


  「魁紀君?どうした?顔色悪いよ。」


  「なんもなくはないけど、気にしないでくれ。」


  「もしかして昨日の任務で何かあった?」


  察しがいいなこいつ。でもそうだな、クラスメイトだし話す義理はあるか。


  「そうだな…実は…」


  俺は昨日の任務のことを全部新谷に話した。龍太郎が乗っ取られてどこかに連れ去られたこと、歌姫相馬恵のライブ後に死者が大量に出たことも。さすがに相馬恵がうちに居候してることは言わなかったけど、それ以外のことは全部話した。


  「そうか…龍太郎が…」


  「すまねぇ…俺がもっとちゃんとやれてたら…」


  「それ以上はダメだ魁紀君、龍太郎もそんな言葉を望んではいないはずだ。」


  だけどあれはもっとどうにかなったはずだ、龍太郎の異変に気づいた時に気絶させれば花怨に体を奪われることも無かった。


  「うちの班長、バカだし普段なんも考えてないけど、強さとプライドだけは取り柄なんだ。だから自分がもっとやれてたらなんて彼のプライドを傷つけるようなおこがましいことは言わないで欲しい。魁紀君は確かに強い、うちのクラスでトップなことに対しては異議はないけど、もっと他のみんなの強さを信じてもいいんじゃない?そしたら少しは肩の荷が軽くなるんじゃないか?弱い僕が言っても説得力ないかもだけど…いやないよね…やっぱり今の忘れて…」


  こんだけ言って忘れるのは無理があるって…


  でも新谷の言う通りだ、自分が上手くやれてれば助けれたなんてのは確かにおこがましい。他人が助けられる前提で、遠回しにそいつは助けられる側の人間だって言うようなもんだ。龍太郎に聞かれたら殴られてたな。


  「ありがとう。おかげで少しわかったよ、また1つの失敗から経験を得ることができた。」


  「失敗?」


  「そうだ、失敗と言うより失言かな。」


  「それなら僕の方こそ、少し上からの物言いになっちゃったし…」


  さっきの勢いが見る影もないな…


  「じゃあお互い様ってことで!ほら、早くしないと味噌汁冷めるぞ。」


  「あっ…」


  ちなみに、俺の牛テールスープも冷めてた。


  14:00 らりぽ〜と1F 入口


  「今日はありがとうな、付き合ってもらって。」


  「僕の方こそ、久しぶりに楽しい買い物になってよかったよ。またね!」


  「おー、またな!」


  さてと、帰るか。


  14:15 電車(東神奈川行)


  暇だし、羽澤に見習って携帯でニュースでも見てみるか。


  携帯を取り出してLwwiter(ルイッター)のトレンドを見る。


  なんだこれ?血濡れの歌姫?なんの話だ?


  謎のトレンドをタップしてみると、何万件ものつぶやきがヒットした。


  『もう歌姫のライブには行けねぇな、死にたくねぇし。もう歌姫じゃなくて血濡れの歌姫か。』


  『恵ちゃんのライブで死人が出たらしいね、しかも血塗れの。優しい歌姫が殺人なんて信じられない。』


  『誰が考えたかわかんないけど血濡れの歌姫か、今の相馬恵にピッタリな呼び名だな。』


  『死んだ人ってみんな相馬恵のファンなんだろ?俺の友達も1人亡くなった。もしかしてあれか?Lwwiterで相馬恵の悪口言ったからか?だとしたら怖い怖い、悪口言っただけで消されるとか本当に歌姫様は血に塗れてるな。』


  なんだよこれ…朝にニュースが流れただけでこんな話になるのかよ…!


  表面上の情報でしか判断できないから仕方ないにしろ、全部相馬恵のせいにするのはおかしいだろ!


  ちぃっ、こんな所で熱くなっても仕方ない…そういえばさっき興味深いことが書かれてたな。悪口を言ったから消された、か。そんなバカって言われたから殴ったみたいな小学生じゃないんだから、だれがそんなことすんだよ。


  いや、あのモヤか…自分のことを相馬恵の騎士と言うくらいだからやってもおかしくないけど、騎士だって言うならもっとまともな理由があるはず。


  でも心当たりはあのモヤしかない、モヤで顔とか一切分からなかったけど、そのモヤを生み出してる本体がいるはず。その本体の正体を突き止めれば、相馬恵はまた表舞台に立てる。


  めんどいけどやるしかねぇな、とりあえず家に帰ってからまた考えよう。


  16:00 江戸城跡 ???サイド


  「さてさて、花怨様、花念様。やって欲しいことがありますわ。」


  「なんだ、言ってみろ。花念を呼び覚ました上に居場所をくれたんだ、それに見合う頼みなら聞いてやる。」


  「お話が早くて助かりますわ。丑崎魁紀という男が持ってる童子切を奪って頂きたいのですわ。」


  「童子切か、日ノ本最上級の妖刀を奪ってこいと?」


  「そんな危ないことはしたくないなー。」


  下級妖刀風情がよくいいますわね。


  「そして、これは頼みではありませんわ。」


  「なに?」


  「命令ですわ。」

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