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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
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第百十八集 失敗の先

  10月18日 20:45 東京ドーム外 南側


  「鷹取!」


  クソ、負傷してるやつを狙うとは…!


  「だーれが応急処置してると思っているんだ!」


  呼ぶと同時に、鷹取はもう既に女性を抱えて避難していた。さすが天才!


  「悪あがきはしないで頂きたい!もう時間がないのですよ!!」


  時間がない?だったら精一杯時間稼ぎするまで!!


  「丑火錘(ぎゅうかつい)連射(れんしゃ)!」


  俺の気が済むまで丑火錘を打ち続けてやる、これ以上はやらせん!


  「魁紀!もうすぐ薬守さんが来てくれるわ!私も援護する!」


  「助かる!」


  「君たちは邪魔してくれないと思っていたんですがね、非常に残念ですよ!反呪符(はんじゅふ)(だつ)!」


  反呪符の使い手か、このままじゃ丑火錘が奪われてしまう、消すしかない。


  「判断が早いですね!ですがこれで接近できます、対妖魔格闘術・(めん)!」


  顔への左ストレートか、なめるな!


  「あまいあまい!(どう)!」


  「あまいのはあんたよ!猛虎(もうこ)!」


  腹を狙われたところを鬼寅の猛虎で凌いだ。


  「品のないお嬢様ですね、一体どこで教養を失くしたのやら。いえこれは失礼な言葉を、申し訳ございません。」


  「品のない紳士に言われたくないわね!双猛虎(そうもうこ)!」


  猛虎に続いて、今度は2匹の虎がモヤに向かって駆け抜けて行った。


  「猛々しい虎ですが、反呪符・奪!」


  2匹の虎が動きを止め、こっちに振り向いて走ってきた。


  「さあ行きなさい、双猛虎!」


  「奪う陰陽ね、今時珍しくもなんともないわ。あんたの限界、私が確かめてあげるわ!螺旋業虎爪(らせんごうこそう)!」


  鬼寅は空中で体を捻らせ、両手の中華包丁から回転する虎の爪を放った。


  虎の爪は双猛虎をものともせずに突き破り、モヤに向かって行った。


  「その程度の技など!反呪符・奪!」


  だが虎爪は止まらなかった。


  反呪符・奪の効果は、相手の妖気を使った技を奪う陰陽だ。ただその奪う対象と同等かそれ以上の妖気を使って(だつ)を放たなければ奪えられない。


  現に鬼寅の虎爪が止まらなかったのは、虎爪の妖気が(だつ)の妖気を上回ってたからだろう。


  「なんですと!」


  避ける暇を与えることなく、虎爪はモヤを貫通した。


  「やるではありませんか、さすがは干支十二家と言ったところですか…実力を見誤ってしまいましたよ。」


  こいつ、なんで俺らのこと知ってんだ。


  「鬼寅の嬢ちゃん!大丈夫か!おお丑崎の兄ちゃんもいるじゃん、久しぶり!」


  「薬守さん!お久しぶりです!」


  ちょうど決着がついたところに、薬守さんがやってきた。


  「あいつが嬢ちゃんが言ってたモヤか。うん、胸を貫かれてるからもうじき消えるだろ。それより負傷者は?」


  「負傷者はあっちにいます、結構酷い怪我してるので、お願いします。」


  「おお任せとけ、直ぐに飛んで跳ねられるようにするよ!」


  直ぐに飛んで跳ねるは危ないだろ…


  「今日はもう潮時ですね、ですが君たち、自分たちのしたことを後悔することになりますよ。」


  「どういう意味よ。」


  「目撃者が数名いるなら、私が人を殺したという情報は警察に渡り、そして世間に伝わるでしょう。それがどういうことかわかりますか?」


  どういうことだ、こういうやつがいるって分かるとみんな警戒するようになるから逆に大丈夫なんじゃないのか…いや違う、警戒するからダメなんだ!相馬恵のライブで死人が出たなんてニュースが流れたりしたら、相馬恵のライブに人なんて来なくなってしまう…


  俺たちの任務はライブを守ることなのに、これだと俺たちが壊したことになる…


  「よくお気づきになりましたね丑崎さん、そう、君たちの行動が恵のライブを、恵を壊すことになるのです!思う存分後悔してください。」


  「待て!」


  モヤはそう言い残して消え失せた。


  最悪だ…龍太郎が乗っ取られた上に、あいつが大好きな相馬恵のライブも守れなかった…


  「魁紀…」


  「気にするな、嬢ちゃんも兄ちゃんもよくやった。負傷者も心配ない、あと1週間もすれば元通りになる。」


  薬守さんが優しく慰めてくれた。負傷者が無事ならとりあえず安心だ。


  でもやっぱり、俺は…


  「丑崎の兄ちゃんは考え過ぎだ。いいか、任されたことを成し遂げれなかったのは確かに失敗だ。だがその失敗にずっと囚われたまんまじゃダメだ、そこから何を学べるかを考えてみろ。なんで失敗したのか、どうやって失敗したのか、どうすれば良かったのか。まだ若いんだから、もっと色んなこと考えてもおじさんは悪くないと思うよ。」


  失敗から何を学べるか…


  「あーダメだダメだ、つい教師癖が出る。じゃあそろそろ警察来ると思うから、ちゃんと事情聴取に応えるように、またね。」


  「あ、はい!ありがとうございました!」


  礼はいらないと言うかのように、薬守さんは手を振りながら負傷者のところに戻った。


  そうだな、ちゃんと考えたこともなかった。今までは失敗したらどう取り戻せばいいかばっかり考えてた。


  でも違かった、失敗したらちゃんと失敗を飲み込まなきゃいけない、今まで以上に失敗に立ち向かわなければいけない。


  なら今やるべきことは…


  「鬼寅、警察が来たらちゃんと全部話そう。そしたら今日は帰ろう。」


  「うん、わかったわ。」


  「魁紀!私は卯道さんと一緒にこの人を病院まで送るから先帰ってて大丈夫だよ!」


  「おー、わかった。」


  鷹取は薬守さんと一緒に行くようだ。


  そしてタイミング良く、警察の方も到着した。

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