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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
127/193

第百十七集 血濡れ

  10月18日 20:30 東京ドーム スタッフルーム 丑崎魁紀サイド


  ライブは終了した、観客も徐々に帰っていき、何事もなく任務が進んでいく。


  正確には龍太郎が花怨に乗っ取られてどこかに消えたから何事もないことはないが、今のところ観客には被害が出てないから任務としては成功だ。


  でも絶対元に戻してやるからな、龍太郎。


  「今日もお疲れ様でした。田口さんの件は申し訳ございません、任務をお願いしたばかりにこんなことが…」


  佐曽利さんは深々と頭を下げて俺たちに謝罪した。


  「佐曽利さん、頭をあげてください。龍太郎も覚悟の上で任務に臨んでますので、こんなことになったのは俺たちの力不足が招いた結果です。なので佐曽利さんは謝らないでください。」


  実際、俺たちの誰かが妖刀の体を乗っ取る対処法を知っていればこうにはならなかった。


  「お気遣いありがとうございます。では失礼ですが、少しお手洗いに行ってきますね。」


  「はい、お構いなく。」


  「おっといけません、重要なことを伝え忘れていました。本日の任務ですが、お客様たちが無事に退場でき次第完了としますので、お客様たちをよろしくお願いします。」


  なんでもお客さん第一とは、プロデューサーは伊達じゃないな。


  「ではまた後ほど。」


  「了解です。」


  佐曽利さんはちょっと急ぐようにしてスタッフルームを出た。相当我慢してたんだろうな、申し訳ない…


  「魁紀!私たちも行こ!」


  「行かねぇよ、てか女の子が男誘ってトイレ行こうとするな。」


  どういうタイプの連れションだよ。


  「トイレじゃなくて偵察だよ!でも、魁紀がいいなら、トイレも…一緒に行かないこと…ないよ?」


  「偵察か、それなら行かなきゃダメだな。トイレなら1人で勝手に行ってこい。」


  違うとこにいくなら「も」って使うな紛らわしい。


  「ちぇー!」


  「どうでもいいけど、早く行かなきゃお客さん帰っちゃうわよ。」


  「あー、行こうか。」


  20:32 東京ドーム外 南側


  さてと、大体帰ったな。今回は特になにも起こらなかったか、何も起こらなくていいんだけど。


  「待って、今私の妖気探知にバチッと妖気が弾けた感じがした!どこかで妖気を使った人がいる!」


  「だいたいどこにいるかわかるか!」


  「ここから真反対のところ!」


  よりによって真反対かよ、こっから最速で回っても間に合わねぇ!


  「2人とも私の手に捕まりなさい!駆けるわよ!」


  鬼寅は両手を俺と鷹取に伸ばした。


  「間に合うのか?」


  「(ただし)ほどじゃないけど、私なら間に合うわ!ほら早くしなさい!」


  「わかった!」


  俺と鷹取はガシッと鬼寅の手を握った。


  「行くわよ!虎走(こばしり)!」


  鬼寅が1歩目を踏み出した瞬間、足が地面から離れ、体が宙に浮いた。


  「それ小走りのレベルじゃねぇぞ!!」


  「黙りなさい!舌を噛むわよ!」


  足をぶらんぶらんさせながら鬼寅に手を握られて前へ進む。正直前を見る余裕すらないから今どこにいるかすらわからん。


  「今西側に着いたから、あと数秒着くわよ!準備して!」


  はっや!今走り出したばっかだろ!?


  「3、2、1、着いたわ!足下ろして!」


  無理無理無理無理急停止してまともに着地できるか!


  というわけで鷹取と2人してケツから着地したのであった。


  「痛った…」


  「まゆまゆちょっとくらいゆっくりでも間に合ったでしょ!痛かったー!」


  「早く着いたからいいでしょ、それより何もないじゃない。」


  着いたはいいけど、鬼寅の言う通り周りには何も無かった。


  「いいやあるね、ほらあそこ、私たちに気づいたからか隠すのが雑になってるとこが!」


  鷹取の指さす方を見ると、確かに空間が歪んでるところがあった。


  「あんな幻惑私には効かないからね!反呪符(はんじゅふ)(しょう)!」


  鷹取が反呪符をかけると、歪んだ空間が消え始めた。


  「な、なによ、これ…」


  「なんで…なんでこんな酷いことになってるのに誰も気づかないの…!」


  歪んだ空間が消え、そこに現れたのは…大量の死体だった。


  「たす…けて…」


  死体の中から助けを呼ぶ声が聞こえた。


  何人死んだかわからないけど、助かる人がいるなら…!


  「どこだ!今助ける!!」


  俺は死体の山に手を伸ばし、生きてる声を探した。


  「魁紀!?何してるのよ!」


  「血塗(ちまみ)れになっちゃうよ…!」


  そんなことはどうでもいい、手を伸ばさなきゃ届かない命があるんだ。


  「ここ…たすけ…て…!」


  「そこか!!」


  少し動いた手を掴み、ゆっくり外に引っ張り出した。


  「あり…がとう…たすけて…くれ…て…」


  女性の方だ、こんな傷負ってるのによく生きててくれた。


  「もういい喋るな、直ぐに病院に連れていくから待っててくれ!鬼寅!近くに卯道家の病院は!」


  「わかったわ!確か東京なら薬守(やくも)さんの病院があるはず、今電話するわ!」


  確か陽葵(ひまり)さんの弟さんだったな、薬守(やくも)さんがいるなら安心だ、ならまずは応急処置しねぇと。


  「鷹取!応急処置を…!」


  「まだ生きていた方がいましたか、手を抜いたつもりはなかったんですがね。」


  背後から声、あとこの喋り方はまさか…!


  「誰ですか君たちは、私の邪魔をしないで頂きたいのですが。」


  振り向くと、人の形をした黒いモヤだった。幻惑系の妖術かなにかか。


  「質問に答えないとは失礼なやつらですね、では恵の邪魔者として排除させていただきます!」


  恵だと?


  「お前、恵って相馬恵のことか。お前は一体相馬恵のなんなんだ!」


  「私の質問に答えてないのに自分の質問に答えてもらえると思いましたか?でも私はこれでも紳士ですから答えて差し上げましょう。私は恵の騎士です。恵の妨げになるものを全て排除するものです!!」


  妨げになるものを排除…ってことはここの人達は…!


  「じゃあここの人達もお前の仕業ってことか、なんでこんなことをした!」


  「申し上げた通り、妨げになるからですよ。恵の妨げになるのであれば血に染って頂けなければなりません、それが恵のためになるのです。」


  「それは相馬恵が望んでることなのか!」


  「私が望んでいることですよ!恵は日本一!いいえ世界一になる歌姫なのです!そのためなら私は世界が血濡れになっても何一つ問題ありません!」


  狂ってやがる、相馬恵の近くにこんなやつがいたなんて佐曽利さんから聞いたことねぇぞ。


  「話が長くなってしまいました、ではそこの女性の方、恵に歯向かったことをあの世で後悔していてください!」


  モヤはそう言いながら手を前にかざした。


  「鷹取!」


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