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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
血濡れの歌姫編
118/193

第百八集 天才

  10月15日 9:20 1年5組教室前廊下


  「おっそーい!何秒またせたと思ってるのー!」


  「なんで秒刻みなんだよ、そんな待ってねぇだろ、ほら適当に歩くぞ。」


  見学なんてさっさと終わらせて帰りたい…


  「どう、学校楽しい?」


  「お前は俺のお母さんか、俺の事より自分のこと気にしたらどうだ、そろそろ受験だろ。」


  「忘れたのー?私は天才なんだからね!問題ないよ!ちなみにもちろんここに入学するから、毎日会えるね!うれしいうれしい!」


  あぁ…帰りてぇ…こいつが入学する前に退学してぇ…


  「でも本当に良かった、また会えて。引っ越したのを聞いたの6月とかだったし、時間なくて全然来れなかったの。」


  来なくてよかったんだけどね。


  「2週間毎日会いに来るから、またよろしくね!かーいき!」


  俺の背中を叩きながら、嬉しそうにする鷹取。


  「見学に来たのはいいけど、任田のことはだいたい知ってるんだよねー。どうしよっか、学校抜け出して遊びに行く?」


  「行かねーよ。」


  なんだよ知ってんのかよ、じゃあもう帰ってよくねぇか?


  「じゃあさ、久しぶりにやってみる?」


  「なにを。」


  「勝負だよしょーぶ!!体育館使えるんでしょ?しょーぶしよーよ!」


  「なんで俺がそんな面倒なことを…」


  そういややってたな、負けたことないけど。


  「中学じゃ魁紀以外に負けたことないんだからね!今日こそ勝ち星をいただくぞー!」


  「いや、無茶すんなって。」


  「無茶じゃないもん!なぜなら!私は天才なんだから!ね!」


  それさっきも聞いたよ。


  「しゃーない、任務来てるわけじゃないし、やってやるよ。」


  「そーこなくっちゃ!」


  あー、まじめんどくせえ…帰りてえ…


  9:30 1年5組専用体育館


  「なんでギャラリーが集まってんだ?」


  「さっすが魁紀、人気者だねー!」


  いやまじ誰だ、クラスのみんな集めてきたやつ。


  「魁紀!五十鈴から聞いたぞ!模擬戦するんだってな!みんな集めてきたぜぇ!」


  龍太郎だったのか…あの坊主人を集めるのだけは得意みてぇだなおい。


  「集めなくていいだろ、たかが模擬戦でクラス全員連れてこなくていいだろ。」


  「知らないのか魁紀、その鷹取って()はなかなか有名人なんだぜ。」


  そうだったのか、全く知らなかった。


  「自他ともに認める天才らしいぜ、そんな娘がお前に惚れてるなんて…俺は許さんぞ!」


  許されるもなにも勝手に鷹取が惚れてるだけだろ、てかこれ惚れてるって言うのか?


  「いいのか龍太郎、隣にいる大谷にあのこと言ってやってもいいんだぞ。」


  「俺が悪かったもう黙るから許して!」


  手のひらドリルとはこのことか。


  「ふふーん、そろそろ始めようか魁紀!」


  「おう、とっとと終わらせて帰る。」


  武器は剣1本か、間合いにさえ入れなければ負けることはないが、鷹取の反応に対応されないように先読みして動かないとな。


  「誰かに審判お願いしたいなー、あ!ことりん!お願いしていい?」


  ことりんってもしかして五十鈴のことか、もうそんなに仲良くなったのか。


  「審判はわかりましたけどことりんはやめてくださいね鷹取さん。」


  勝手に呼ばれてるだけだったのか。そういやあいつ知り合ったばっかの人でも親しく呼んでたな。


  「両者、位置について。模擬戦ですので、死に至るような攻撃や後遺症が残るような攻撃はしないでください、何かあれば私やみんなが止めに入ります。よろしいですね?」


  「はーい!」

  「了解だ。」


  「両者、抜刀。」


  お互いに剣を抜く。鷹取は1本の剣を、俺は大太刀の刻巡を。


  「始め!」


  開始の合図が下された。


  攻めてこないか、こっちが踏み込むのを待ってるのかなんなのか。わからないからこっちから試しで踏み込んでみようか。


  「丑火斬(ぎゅうかざん)!」


  新しく編み出した遠距離攻撃だ。冷残戦で痛いほど遠距離攻撃の大事さを分からされたからな、新しく編み出したぜ。攻撃は至ってシンプル、飛ぶ炎の斬撃だ。


  「相変わらず軽々と大太刀を振ってくるね!だーけーど!」


  鷹取は俺の斬撃に剣先を向ける。斬撃は剣先に当たるが、当たった瞬間消えていった。


  「そういや忘れてたな、お前の妖気の特性。」


  「そう簡単に忘れられちゃうの私悲しい!泣いちゃう!」


  ほんっとめんどくせえ…


  「妖術や陰陽をかき消す、厄介極まりない特性だよなお前。」


  「へへーん!」


  私すごいだろ、みたいな感じで胸を張る鷹取。


  「じゃあ小細工は無しだ、行くぞ。」


  「いいねいいねー!魁紀のその本気の顔が見たかったー!かっこいいなー!」


  こいつじゃなかったらきっと少しは照れたんだろうな、俺。


  「丑火錘(ぎゅうかつい)。」


  冷残の八氷鎌晶を参考に、敵に追従する牛の頭状の炎を身の回りに顕現させる。


  そしてその状態で鷹取に向かって走る。


  「なにそれ!魁紀すごーい!!」


  「余裕を持つのも今だけにしろよ、お前の悪い癖だ。」


  「そんなことないもーん!!」


  あるんだよなぁこれが、何回も自分に余裕を持ちすぎて俺に負けてきたんだから。


  「だったらそれのままでいい。おらよ!」


  鷹取の攻略法は1つ、妖術や陰陽を使わずに武術で押し切ることだ。だが鷹取も当然そのことは理解している、だから鷹取は何よりも武術が得意。その上反射神経は常人のそれでは無いため、大抵の攻撃は反射で対応される。


  じゃあどうするかと言うと、妖術や陰陽を武術と同時に使って気を逸らせばいい。


  「おっ…もい…!!」


  「俺の剣を受けるのが精一杯ならそれまでだな、丑火錘(ぎゅうかつい)!!」


  剣の攻撃を受けさせたあとに鷹取を囲うように炎を射出する。これであとは鷹取の動きに合わせて隙を突けば俺の勝ち。


  「もうそう簡単にやらせないぞー!鷹天空襲(ようてんくうしゅう)!」


  鷹取は力づくで俺の剣を押し返し、剣を上に放り投げた。


  すると後ろに一回転して飛び上がり、こっちに向けて剣を蹴り飛ばした。


  「そういうことかよ、丑火斬(ぎゅうかざん)!」


  丑火斬で剣を弾き返し、状況を元に戻す。


  それにしても今後ろに一回転した時、わざとではないがパンツが見えてしまったな…白だったな…


  「今パンツ見たでしょ!」


  鷹取はスカートを抑えながらそう言った。


  「いや、今のはお前の不注意でしょ。そして見えたと言うより映ったが正しい。」


  間違ったことは言ってない、見ようとして見たわけじゃないからな。


  「絶対見た!じゃあ何色だったの!!」


  「ここで言えるわけないだろ!お前のパンツ事情がかかってんだぞ!」


  「じゃー言えなかったら勝負は私の勝ち!」


  「白。あっ…」


  やばい、ついプライドが邪魔して言ってしまった…


  「やっぱり見た!可愛かったでしょ!」


  「待て鷹取!今はそれどころじゃ…」


  「「魁紀…??」」


  体育館の観客席から俺を呼ぶ声が聞こえた、しかも2つ。


  「は、羽澤!?あと鬼寅!?なんでいるんだ!!」


  「魁紀が模擬戦するなら見ないわけないでしょ?」


  「仕方ないから魁紀の模擬戦を見に来てあげてるだけよ、勘違いしないで欲しいわ。」


  な、なんで2人共怒ってんだ?鷹取のパンツを見たのがそんなにいけなかったのか?いけないな…


  「鷹取さんごめんね、ちょっとそこの魁紀に用事が出来たから勝負の続きは今度でいいかな?」


  「嫌なら、私が魁紀の代わりに勝負してあげるわ。負けても泣かないことね。」


  どうなるんだ?俺この後どうなるんだ!?!?

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