第百七集 学校見学
10月15日 9:00 1年5組教室 丑崎魁紀サイド
「ホームルーム始めるぞ。早速じゃが文化祭は何やるか決まったんか?」
「はい、ダンスを踊ることにしました。」
なんだろうなこの違和感は…いやダンスやる分にはいいんだけど、五十鈴のあの真面目な顔でダンスを踊ることにしましたって言われるとツッコミづらくてしょうがない。
「ダンスか…ええんかおまんら、それで…」
さすがの葉月先生も困惑した。
「はい、教えてくれる方もいますので、ご心配なく。」
「そりゃ準備周到でよかったのう…めでたいのう…」
どんどん小声になる葉月先生だった…
「まあおまんらがそれでええならそれでええわ。任務が無い時間を練習に回せば当日までにゃ間に合うじゃろ。よし次じゃ、学校見学の件じゃが、わしらのクラスに2人来ることになっちょる。期間は文化祭までの約2週間じゃ、ちゃんと面倒見ちゃれよ。」
多いのか少ないのかはともかく、もう見学に来るのか。
「よしおまんら待たせたのう、入ってええぞ。」
ドアが開くと、2人の女の子が入ってきた。え、待って、先に入ってきたあいつって…
「かーいきーー!!!やっと会えた!!」
「おっま鷹取!何しに来た!?てか抱きつくな!!」
鷹取天音、俺の中学の後輩である。かつ、俺のストーカーでもある。短髪黒髪ボーイッシュで完全に俺のタイプだがこいつだけは好きになれん。
「えーなんでよー!やっと会えたのにー!!引っ越したの知らなくて探したんだよー?嬉しいなうっれしいなー!」
「な、なな、な…!」
「幽奈ちゃん大丈夫?」
「だだ、大丈…夫…たぶん…」
羽澤と南江が何やら話してるが今はそれどころでは無い。
「いいから離れろ!」
「おっとっと!」
刻巡を抜かずに振り払ったが、空中を一回転して避けられた。相変わらず反応がいいやつだなムカつく。
「へっへーん!当たらないよーだ!」
「魁紀、おまんら知り合いなんか?」
「は、はい。中学の時の後輩です。」
「それならちょうどよかったのう、鷹取の面倒はおまんに任せたわ。」
嘘じゃん…
「わかり…ました…」
「やったーーー!!」
おいおい…よりによって鷹取がうちのクラスに来んのかよ…この先が思いやられるぜ…
「ふ、冬奈!?なんでお前見学に来てんだ!?」
「うっせバカ兄貴、あーしは琴里さんに言われて来ただけだ、勘違いしてんじゃねぇよ。琴里さんやっほー!」
「いや勘違いもなにもしてねぇよ…」
後から入ってきた金髪の子、夏が冬奈って呼んでるってことは昨日話してた夏の妹か。いや失礼だけど全然似てねぇな。
「なんじゃ夏、おまんの妹じゃったんか。面倒見ちゃれよ。」
「いえ、あーし琴里さんに面倒見てもらうんで大丈夫っす。」
仲悪い兄妹だなぁ。
「なら琴里、任せたで。」
「はい、お任せ下さい。」
「よし、じゃあわしはまた出かけるでのう、あとは頼むわ。2人の見学じゃが、まあ適当に学校連れ回しちゃりゃ大丈夫じゃろ。ほんじゃのう。」
葉月先生は少し急ぐように教室を出ていった。
まじか、これはまずいな。まずいというか嫌だな、鷹取の面倒見とか。
「へへーん、またよろしくねかーいき!」
「1度もよろしくした覚えはねぇよ。」
「ひっどーい!私のファーストキス奪ったのに!!」
「「えええええーー!?!?!?」」
教室が叫び声で包まれる。
「おいバカ!誤解を招くような言い方するな!あれは不慮の事故だろ!」
「不慮の事故でもファーストキス奪われたのは事実だもん!ちゃんと責任取ってもらわないとダメだもん!」
これだからこいつは…
「いーじゃん!私はもう準備出来てるからね!」
「なんのだよ…」
「そりゃもちろん…けっ…結婚…」
「「結婚!?!?」」
再び教室が叫び声で包まれた、それとなんか悲鳴も聞こえた気がする…
「するわけねぇだろ!てかもいいから学校回ってこい!」
「えーー魁紀が着いてきてくれないと嫌だーー!!」
「後から行くからとりあえず教室から出ろ!」
「わーーーーい!!」
ああ…めんどくせえ…
鷹取がルンルン気分で教室を出ると、たくさんの痛い視線に刺されていることに気づいた。
「み、みんな、そんなに見なくたっていいじゃん?ね?」
「どど、どういう事だ魁紀!お前あの子とどこまで行ったんだ!!」
龍太郎は動揺してエライ事を聞いてきた。
「何もねぇよ!言っただろ不慮の事故だって!」
「どんな事故が起きたらそうなるんだよ!」
「それは…あれだよ…」
正直言いづらい。
中2の頃、師匠との修行で学校近くの森で妖魔の討伐をしてたんだけど。その妖魔を逃してしまって、探していたところに鷹取がいた。
鷹取は成績が優秀で1年生ながは特別に任務に行くことが許されていたが、その任務の場所がたまたま俺の修行場所と被っていた。
どうやら帰るどころだったらしく、気が緩んでいたところに、俺が逃がした妖魔が鷹取に襲いかかっていた。
慌てて近づいて妖魔を蹴り飛ばしたまではよかったけど、勢い余って鷹取を押し倒してしまい、その、なんだ、唇が当たったわけだ。こんなこと言えるわけないだろ!!
そこから同じ学校なのがわかり、謝りに行くんだけど、何故か懐かれてしまってストーカーされるようになった。
「なんだよ魁紀、黙ってるってことはやっぱり!!」
「うっさい教室だなー、キスくらいで慌てやがって。あーしなんて琴里さんとキスしたことあるっての。」
「「ええぇぇえええ!?!?」」
夏の妹の発言に思わず俺も叫んでしまった。
「冬奈!?琴里、お前まさかそういう趣味があったのか!」
「そんなわけないじゃないですか。あれは襲われたからそうなっただけです。」
え?襲われたって…夏の妹に!?
「あーし男には興味ねぇんだよ、残念だったなバカ共。」
「あのガキ今すぐしばいてやろうかな。」
「おい龍太郎やめろって、夏の妹だぞ。てかお前他に好きな人いるだろ。」
「それを言うのは契約違反だろ!」
「あっ。」
つい口が滑って新幹線での話を言ってしまった。
「魁紀、帰ってからでいいからさ、鷹取さんの話聞かせてくれる?」
横から羽澤がニコニコ顔で歩いてきた。
やばい、はいかイエスしか選択肢用意されてないやつだ。
「はい。」
「ありがとう。ほら、見学案内するんでしょ、早く行ってきなよ。」
「はい。」
怖い、ただただ怖い。なんで女子ってこうニコニコ話してる方が怖いの?おかしくね?
「琴里さん、あーしらも見学に行きましょ!」
「それはいいんですけど、誤解が解けてない気がするのですが…」
「いいんですよそんなこと!行きましょ行きましょ!!」
新井妹は五十鈴の腕を引っ張り、教室の外へ無理やり連れていった。
さてと、俺もそろそろ行こうかな。じゃないとみんなの視線に殺されそうな気がする。
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