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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
貴族騒乱編
111/193

第百一集 冷残 捌

  9月16日 13:15 鎌倉 藤原邸正面


  南江の声がした。


  そして南江が技を放った。その名は風神術、葉月先生の雷神術に並ぶはずの技だった。


  「ひろ…み…」


  葉月先生は言った。今は亡き根元先生の名を。


  「南江、その姿はなんだ。」


  振り返って南江の方を見ると、南江の姿が変わっていた。


  「祈りが実ったの!そしたら風神様が応えてくれたの!」


  そういうことだったのか、風神術が使えるのも、風神のように風袋を掴んで浮いているのも風神が力を貸してくれたからなのか。


  「遥、風神様が力を貸してくれたっちゅうんか。」


  「はい!今だけ風神様の力の一部を使うことができます!」


  さすがにずっとという訳にはいかないか。


  「祈祷が終わってしまったか。仕方ないね、3人まとめて片付けるとしよう!」


  冷残が瓦礫(がれき)の中から出てきた。


  「南江、あいつが風神術に慣れてないうちに片付けるぞ。」


  「そのつもりだよ!葉月先生も援護お願いします!全力で楽しんでいきますよ!」


  南江はそう言いながら、冷残に向かって行った。


  そしてその瞬間、葉月先生もきっとそう思ったに違いない。南江の後ろ姿が、根元先生にそっくりだった。


  「時間は限られてるから、早くやられてよね!」


  「君にできるかなぁ、借り物の力を使う君にぃ!!」

 

  「借り物だとしても、大切な人から借りた力なんだ!風神術・隼風(はやかぜ)!」


  「魔妖術・黒炎鎌残(こくえんれんざん)!」


  南江と冷残の技の撃ち合い。


  南江は冷残に向かって風袋を煽ると、槍のような風が飛び出した。


  それに対して冷残は両手の禍々しい鎌で、黒炎の斬撃を飛ばした。


  風と斬撃は衝突し、爆発を起こした。


  「南江のやつ、すげー力を手に入れやがって。」


  「そりゃそうじゃ、ありゃもともと洋海の力だったんじゃからのう。」


  葉月先生が後ろから歩み寄って来た。


  「根元先生、めっちゃ強かったですもんね。」


  「そうじゃ、同世代じゃ洋海より強かったやつなんて見たことないのう。」


  そんな人が俺たちの先生だったのか…


  「それにしても意外じゃな、あの風神様が力を貸すなんてのう。」


  「それはどういうことですか?」


  「ちょっと2人とも!喋ってないで手伝ってよ!!」


  はいはいすみませんでした。てか南江のやつまた冷残を瓦礫に飛ばしてるし。


  「その話はまたあとでじゃ。」


  「わかりました!」


  再び葉月先生を後方に置き、俺は南江と一緒に前線を張る。


  「南江、その力はどれくらい使える?」


  「体が持つ限り風神様の力は使える、だけど体にかなり負担のかかる術は使えない。」


  さすがに限界があるか。あの時根元先生が出した妖術血界が使えればと思ったけど、簡単にはいかないか。


  「でも頑張る、風神様がくれたこのチャンスを無駄にしたくない。」


  頼りになるねぇ、うちの班長は。


  「わかった、でも無茶すんなよ。」


  「まっかせなさい!」


  南江は自信満々に上げた右腕を叩きながら言った。


  「雷神の次は風神とはねぇ、私は嬉しいよ!一度に風神雷神、そして酒呑童子様の力を拝めたんだから!」


  冷残が再び瓦礫の中から出てきた。


  どうも嬉しそうだけど俺は全くそう思わない、こちとら丑神の力と酒呑様の力解放してるんだから消耗が激しくて今でも倒れそうなんだよ。


  「それじゃ、まだまだ行くよ!!」


  「来るよ!魁紀君!」


  「あいよ!」


  冷残が両手の鎌を振り回しながら走ってきた。


  「いいねいいね!君たちの血の価値がどんどん上がっている、根こそぎ頂いていく!!」


  (なあ洋海、おまんならこういう時どうするんじゃ。生徒が目の前でわしの仇を倒してくれようとしちょる時に、おまんなら…)


  「血よ、血よ!今こそ我を導きたまえ!!血の価値を知らぬ者たちに救済を与えたまえ!!魔妖術・氷炎流血鎌(ひょうえんりゅうけつがま)!!」


  冷残は両手の鎌を連結させ、更に禍々しい両刃鎌(りょうばかま)を作り出した。


  次の技で決めるつもりだな、しかもここら一帯根こそぎ刈り取る勢いで。


  (わしはおまんより弱い、雷神様の力なんて手に入るべきでもなかったんじゃ…そんなわしに、何ができる…)


  (気楽に行け、大地。)


  「洋海!?」


  「これで最後だよ君たち!魔妖術・屍山血河氷炎鎌(しざんけつがひょうえんれん)!」


  (さすがじゃ、おまんは…)


  「忍妖術・雷遁雷壁(らいとんらいへき)!!」


  冷残の鎌が俺たちに届く前に、葉月先生が前に現れ、雷の壁を張った。


  「「葉月先生!!」」


  「わしのことは気にすな!!行けぇぇぇぇ!!!」


  葉月先生…!!


  「南江!!俺を上に飛ばせ!!」


  「わかった!私も行く!!風神術・吹風(ふきかぜ)!」


  南江が俺を上に飛ばしたのと同時に、自分も風袋を使って上がってきた。


  「魁紀君!風を使って突っ込むから、頑張って耐えてね!」


  「南江こそな!」


  南江は風袋を回転させ、竜巻を発生させた。


  「行くよ!」


  これで決める、決めてやる!!


  「風神術・荒神排山倒海(あらがみはいざんとうかい)!!」


  想像しろ、今放てられる最高の技を!


  「酒呑妖術(しゅてんようじゅつ)酔狂羅生門(すいきょうらしょうもん)!!」


  童子切と刻巡を交差させて構えて、力を込める!


  「「はあああああああああああああ!!!!」」


  竜巻で南江と一緒に回転しながら冷残に向かって突っ込んでいく。


  当たった衝撃からか、とてつもない爆発が起きた。


  13:20 鎌倉 藤原邸西の森 五十鈴琴里サイド


  「琴里!なんかすげぇ爆発がしたぞ!警戒をやめて戻った方がいいんじゃねぇか?」


  ローブの女性が消えてから結構時間が経ちましたが、これは夏の言う通りに正面に戻った方が良いみたいですね。


  「わかりました、戻りましょう。」


  無事でいてくださいね、葉月先生…!


  13:20 鎌倉 藤原邸東 松永茉己サイド


  「にゃーーー!!!」


  爆発の音、そしてにゃーちゃんが震えている、嫌な予感がする。


  ローブの人も消えたし、そろそろ戻った方が良さそう。


  「みんな、一度正面に戻るよ。」


  嫌な予感が当たらなければいいのだけど…


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― 新着の感想 ―
[良い点] 風神術でもしかしたら、と思ったのですが根元先生が力添えしてくれて、風神様の力を借りることが出来たのでしょうか。 ずっと生徒のことを大切に想っていた先生が力を貸してくれて、凄く感動しました。…
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