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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
貴族騒乱編
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第九十七集 冷残 伍

  9月16日 12:15 鎌倉 藤原邸正面


  俺と南江は血界に穴が空いてるうちに、血界に向かって走った。


  「おまんら!妖術血界内は危険じゃ!来るな!」


  「そう言われて引き下がる俺らじゃないですよ!」


  「仲間は大事にしろって言ってたの先生じゃないですか!そんな事言われても嫌ですよーだ!」


  もっと言い方あっただろお前…


  あと少しだ、あと少しで血界に入れる!


  (魁紀よ、急げ。隣の小娘を掴んで飛び込め。)


  酒呑様?わかった!


  「南江!ちょっと失礼するぜ!」


  「え?ちょっ、ちょっと魁紀君!?」


  酒呑様に言われた通り南江を抱えて血界に飛び込んだ。


  「ふぅ、間に合った。」


  飛び込んだ直後、空けた穴が塞いでしまった。なるほど、穴を空けたとしても一時的なものだったのか。


  「ナイスだよ魁紀君!でも次からはやめてね、恥ずかしいから…」


  「悪かったって…」


  酒呑様が急に話しかけてくるのが悪い、そういうことにしよう。


  「あらあら、凄いね君たち。妖術血界の中にわざわざ入ってくるなんてね。」


  「おまんら、血界内に入ってくることがどういう事なのかわかっちょるのか!」


  正直わかってない、根元先生が口にするまで妖術血界という言葉も知らなかったし。


  「妖術血界っちゅうんは、使った本人含めて血界内に閉じ込めた者全てに対して無差別攻撃する物なんじゃ。そこにおまんらが入ってきたっちゅうことは、おまんらにも攻撃が当たってしまうっちゅうことじゃ!」


  確かに危険だ、でも葉月先生を死なせるより何倍もマシだ。


  「そんなことは気にしちゃダメですよ、一緒に戦って勝ちましょ!」


  南江も同じことを思っていたようだ。


  「いい生徒を持ったね、大地。」


  「気安く呼ぶんじゃねぇ。」


  「好きな人は下の名前で呼ぶものじゃないの?」


  「黙れ。」


  最初に言っていたあれか…


  「魁紀、遥、最初に忠告しちょる。こん中じゃわしは力の加減が出来ん、あいつの攻撃と同じくわしの攻撃も避けるんじゃ、いいな?」


  妖術血界の中じゃそういうことになるよな、でも葉月先生に全力で戦って貰えるように、攻撃をちゃんと避けなきゃな。


  「「了解です!」」


  全神経を尖らせろ、冷残の攻撃と葉月先生の攻撃に気を配りながら、冷残に攻撃を当てる。


  「いい構えだよ君たち、早く血が欲しいな。」


  「おまんがこっから無事に出られたらのう、めでたい脳みそしちょるわ。」


  「あぁ、君が話す度に昂ってしまう、なんだろうねこの気持ちは。」


  冷残が少し顔を赤く染めて昂っていた。


  「君の血を飲んだらと考えると、気が動転しそうだよ。魔妖術(まようじゅつ)八氷鎌晶(はっぴょうれんしょう)。」


  冷残が身の回りで浮いてる8本の鎌をこっちに飛ばしてきた。


  「来るぞ!おまんら!」


  「「はい!!」」


  「秘技・青天霹靂(せいてんへきれき)!」


  葉月先生が技を放ち、青い雷が無差別で降り注ぐ。正直避けるので精一杯で、とても攻撃出来そうにない。


  「対妖魔格闘術・排山倒海(はいざんとうかい)!」


  うっそだろ南江のやつ、普通に冷残に殴りに行ったよ!


  「君は怖くないのかな?大地の雷と私の鎌が。」


  南江の攻撃は冷残が戻した1つの鎌に防がれてしまった。


  「何も怖いことはない!先生と仲間がいるんだもの!」


  そうだったな、言われてみればビビってたんだな俺、少し目が覚めた。


  「南江避けろ!一牛吼地(いちぎゅうこうち)!」


  大太刀を逆さに構え、一気に冷残に切りかかる。


  「君も容赦が無いね、角の子。」


  「容赦なんてするわけないだろ。」


  またしても鎌で止められてしまった。8本もあるとさすがに厄介だ、どうにかしないと。


  「わしに任せろ!忍妖術・雷遁界雷(らいとんかいらい)!」


  葉月先生の新たな妖術に合わせて、血界内の雷が冷残の鎌に集まっていく。


  「鎌が…八氷鎌晶言うことを聞かない!」


  少し冷残の顔に焦りが見える。


  「雷遁界雷、0度以下のものに取り付く雷じゃ。この血界内の全ての雷は雷遁界雷に反応し、おまんが氷を出せば出すほど雷が取り付くっちゅうことじゃ。」


  ほぼ対冷残用の妖術じゃねぇか。


  「当然じゃが、血界内の雷は全てわしの支配下じゃ。そしてその雷が取り付くものもわしが許さん限りわしの支配下からは出られん。」


  雷が通れば最強じゃんこの血界…俺と南江入ってこなくても解決したんじゃ…


  「あらあら、おかしいね。氷は電気を通さないはずだったんだけど?」


  「よう知っとるのう。じゃがよう見てみい、汗かいちょるぞ。」


  よく見ると、冷残が徐々に汗をかき始めた。


  そして言われてみたら、なんだか暑くなってきてる、9月の気温じゃねぇ。


  「電気が流れると熱エネルギーが増える、熱エネルギーが増えるっちゅうことは温度が上昇する。」


  電球が光始めると熱くなるのと同じ原理だ。


  「ここにゃ無数の雷が落ちちょる、それによって生まれた熱は簡単に氷を溶かす。もうおまんの妖術はここじゃ無意味じゃ。」


  なるほど、氷は熱くなった血界内で溶けて水になって、その水に雷が通るわけか!


  「今度おまんらにもちゃんと授業しにゃあいかんのう、魁紀、遥!」


  「「はい!!」」


  そうだ、冷残を倒して、みんなで帰るんだ!


  「やるねぇ、大地。」


  「秘技・極光電雷鼓(きょっこうでんらいこ)!」


  葉月先生が両手を合わせると、背中に雷神が背負う雷鼓が現れた。


  「見て魁紀君、雷が葉月先生に集まって…」


  南江の言うように、血界内の雷が葉月先生の雷鼓に集まっていく、そして太鼓を鳴らすような音が鳴り始める。


  「その雷鼓…まさか雷神の力を持っていたなんてね。」


  冷残は暑さのせいか、その場から1歩も動けずにいた。


  「雷神術(らいじんじゅつ)鳴神(なるかみ)。」


  雷鼓の音と血界内の雷が急に収まった。


  「何も起きないぞ、どうなってんだ?」


  「魁紀君!伏せて!」


  南江に頭を抑えられ、体を伏せた。


  するとこれまでに無いくらいの雷の柱が冷残を襲った。

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