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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
貴族騒乱編
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第九十四集 冷残 弐

  9月16日 10:45 鎌倉 藤原邸正門


  「行くぞ!おまんら!」


  「「おう!!」」


  葉月先生の掛け声に合わせて、俺たち第五班は構えた。


  「相手は7人、ちょうどいいくらいだね。」


  「いいかおまんら、油断はするなよ、危険だと思ったらすぐに下がるんじゃ!」


  「「はい!」」


  7人でちゃんと連携を取らないとな、実力はともかく、せっかく人数で勝ってるんだからそれを活かさないと。


  「遥!指示をくれ!わしを班員じゃと思え!」


  「え、ええええ!?!?」


  葉月先生の発言に南江は動揺した。


  「と、唐突に言われても…」


  「班長なんじゃろ、指揮の良さは聞いちょる、自分の信じた道を行け!」


  葉月先生の言葉が南江の背中を押す。


  南江の指示の内容はともかく、指示の出し方は五十鈴にも劣らないくらいいいものだ。


  だから自信持って欲しい。


  「わかりました。」


  南江が覚悟を決めた表情になった。


  「私、魁紀君、梁君の3人は前衛、千尋ちゃんと健太君は後衛で援護、通君は後衛の守りを、葉月先生はとりあえず隠れてください!」


  「ほう、それなりに理解できてるのう、了解じゃ。」


  そう言い残して葉月先生は気配を消して消えていった。


  なるほど、葉月先生が忍だということを活かして不意打ちを狙うってところかな。


  「第五班!あとはいつも通りだよ!」


  「「了解!」」


  「あと彼女には触れないように!葉月先生が氷漬けにされたんだから触れちゃうと氷るかも!」


  南江の言う通りだ。


  前の任務では触れることはなかったけど、もし触れた場所から徐々に氷漬けになると考えれば、接近するのは難しいな。


  「いい所を突くね、だけど意味ないよ。」


  冷残はそう言いながら氷の鎌を横に振り、吹雪を飛ばしてきた。


  「総員!散開!」


  南江の号令に合わせて前衛と後衛が散開し、吹雪を避ける。


  「梁君、魁紀君、今回私は役に立てなさそうだから、攻撃は2人に任せるね!」


  南江は接近専門な上に武器を持たないから仕方ない。


  「了解!」


  「任せろ!」


  まずは梁と2人で何かしら突破口を見つけなければな。


  「気を抜いたらダメだよ。」


  あと少しで顔同士が触れてしまうところまでに、冷残がいた。


  そしてすぐさま鎌を俺に振りかざした。


  「守護の盾!」


  俺と冷残の間に無理やり割り込み、通が鎌を止めた。


  「ありがとう通!」


  「だ、大丈夫!」


  通が入ってくれなかったら完全にやられてた。


  「いいね、いい盾だよ。」


  「魁紀君…はな、れて!」


  通の言葉を聞いてすぐに退避した。


  通が攻撃を止めてくれているが、徐々に押されているのがわかる。


  「千尋ちゃん!健太君!今!」


  南江の号令が下りる。


  「了解!対妖魔投擲術(たいようまとうてきじゅつ)紫雨(しぐれ)!」

  「了解だよ!炎呪符(えんじゅふ)・乱!」


  健太の紫に輝く投げナイフと、松田の炎呪符が放たれる。


  「おっと、それは痛そうだ。」


  冷残は後ろに飛んで下がり、2人の攻撃を避けた。


  「葉月先生!お願いします!」


  「終わりじゃ。」


  南江の号令に合わせ、葉月先生が飛んでる時の冷残の背後に現れ、忍者刀を背中に刺した。


  「よし!」


  上手くいったと思い、嬉しくて声を上げる南江。


  「こんなのでやられる私ではないよ。」


  だがそう簡単に上手くいくことも無く、冷残は後ろに手を回して葉月先生の腕を掴み、こっちに投げた。


  投げられた葉月先生だったが、空中で受身を取って無事に着地した。


  「すまん遥、不意打ちは無理じゃった。」


  よく見ると、葉月先生の忍者刀の先端が氷漬けになっていた。


  「刺す直前に氷で防がれちょった。」


  南江の考えが読まれていた、さすがに簡単に倒されてはくれないか。


  「悪くなかったよ、いい連携だ。」


  冷残の言葉に余裕を感じた。


  「さあおいで、みんな氷漬けにしてあげるから。」


  そして余裕と共に、殺気を放つ。


  「黙れ、余裕なのも今のうちじゃ、お前だけじゃなく後ろで倒れてるクソジジイにも用があるんじゃ。とっととくたばれ。」


  冷残にも劣らないほど、葉月先生も殺気を放つ。


  これは、葉月先生の足を引っ張らないように頑張らなきゃな。


  10:45 鎌倉 藤原邸西の森 五十鈴琴里サイド


  「……」


  目の前に白いローブの女性が唐突に現れたわけですが、もしやこの方が葉月先生を…ただ少し様子がおかしいですね。


  「琴里、あれは分身だ。特訓した時の琴里と同じ感覚だ。」


  「そのようですね、実体にしては空気が薄過ぎます。」


  「だったら余裕ってことか!」


  「油断はダメだよ翠。」


  「氷の鎌か、投げるのは厳しいな。」


  「鎌だけとは考え難いけど、とりあえず攻撃を当てないとだね。」


  皆さん戦闘準備はバッチリのようで、安心しました。


  「分身だろうと実体だろうと、喧嘩を売ってくるなら買うまで!第一班!行くぜ!」


  10:45 鎌倉 藤原邸東 松永茉己サイド


  「……」


  黒いローブに黒い鎌を持つ女性、イメージしてたのとはちょっと違うけど、唐突に現れて武器を構えてるなら、倒す。


  「班長、こいつたぶん本体じゃないぜキャハ!」


  「にゃー!」


  にゃーちゃんもそう思うなら、そうみたいだね。


  「でも手加減はいらないよ、柿原君もみんなも、戦闘準備して。」


  「「了解!」」


  今度こそは、先生を救うんだ。

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