第九十二集 葉月先生を守ろう大作戦開始
9月14日 10:05 自宅 リビング
「早速ですが、16日に葉月先生が動き出すと予想されますので、葉月先生に無茶をさせない為の作戦会議を始めます。」
もうこれ俺から鬼寅と羽澤に話す必要なくなったな。
「あ、魁紀が話そうとしてたことってこれ?」
「うん、そうそう。」
「私がこの話に参加する必要はあるのかしら?」
「5組の話だから部屋戻ってて大丈夫だぞ。」
聞かなくてもいい話に付き合わせるのも悪いしな。
「な…わかったわよ…」
若干不満な感じで鬼寅は部屋に戻っていった。
なんだ、なんか悪いこと言ったかな。
「魁紀、そういうとこだよ。」
困惑した顔で羽澤は言う。
「え?なんか俺いつも鬼寅になにか話した後絶対文句言われない?」
「それは魁紀が鈍感なのが悪い。」
「どん…かん…」
何に気づけばよかったんだ俺は…
「では、作戦会議を始めます。」
何事もなかったかのように、五十鈴は切り出した。
「作戦会議と大層なことを言いましたが、やることは単純です、葉月先生を見張って、無茶をさせないこと。そして葉月先生が危険だと判断した場合、葉月先生の救助をすること。以上の2点です。」
葉月先生を見張る、そしていざって時の救助。言うのは簡単だけどできるかどうかだな。
まず葉月先生が藤原邸に行くのは絶対だ、そして藤原邸に入られたりしたら見張ることも救助することも難しくなる。
だからそもそも葉月先生を藤原邸に入れないようにするのか、俺らも葉月先生についてって藤原邸に入るのか。
「そこで、私たちは予め藤原邸で待機します。丑崎さんは確か昨日の任務で藤原邸に行きましたね、案内をお願いします。」
「了解だ。」
案内って言ってもあそこまあまあわかりやすいぞ、森とちょっとした建物に挟まれてる明らかにすげーやつ住んでるってわかる建物があるから。
「それと、確か藤原邸の西側には森があったようですね、そして東側には狭い路地裏が多く存在する。」
その情報どこで仕入れたんだよ。
「私たち第一班は西側、松永さんたち第四班は東側、南江さんたち第五班は藤原邸正面の草むらで隠れていて下さい。」
「なんで俺らだけそんなバレやすいところなんだ?」
相手葉月先生だぞ、気付かれたら終わりだぞ。
「いえ、丑崎さんたちには予め幻呪符を付与しておきます。そうすれば葉月先生にバレることもないでしょう。」
なるほどな、幻呪符を付与してくれるなら多少は何とかなるだろ。
「葉月先生が中に入りそうになった時は、止めてあげてください、何かをやってしまう前に。」
めっちゃ重役じゃん…
「羽澤さんには申し訳ないですが、今回は私たちでやります。羽澤さんは田口さんたちにバレないよう話を回して欲しいです。」
「まあ仕方ないよね、私最初から話に参加してたわけじゃないし、みんなに任せるよ。」
「すみません、ありがとうございます。」
五十鈴は座りながら、羽澤に頭を下げて感謝した。
「その代わり、ちゃんと葉月先生守ってね、もう先生が変わるのは嫌だから。」
どこか寂しそうに、羽澤は自分の部屋に戻っていった。
「頼まれました。」
五十鈴も羽澤の期待を裏切らないよう返事をした。
「では、私たちは私たちの仕事をしましょうか。明後日、よろしくお願いします。」
「「了解。」」
明後日に向けて、全員改めて気合いを入れた。
9月16日 9:00 1年5組教室
いざ当日、この後はすぐに鎌倉だ。
「おまんら、久しぶりじゃな。」
「「えっ!?」」
驚くことに、葉月先生が来た。
「しばらく休んですまんかった、いろいろあってのう。そんでこれからもしばらく休むかもしれん、まだ半月しか経ってないがすまんのう。ほんじゃわしはやることがあるから、またな。」
話したいことだけ話して、急ぐように教室を後にした葉月先生だった。
「南江さん、松永さん、行きますよ。」
「「わかった。」」
班長たちも動き出したな、急ぐか。
「おいおい、今日任務とか持ってこなかっただろ、何しに行くのお前ら。」
さすがに疑問に思ったか、龍太郎がいてもたってもいられなかった。
「こないだの合同特訓で任務頼まれたらしいよ田口君。」
遮るように、羽澤が龍太郎に声をかけた。
「そうか、俺らは合同任務でいなかったもんな、なるほど。」
すげー簡単に納得してくれたな。
そしてこっちにドヤ顔で親指を立ててきた羽澤が見えた、特に気にしないでおこう。
そんじゃ、支度して行こうか。
葉月先生、勝手に逝かないでくれよ。
10:30 鎌倉 藤原邸正門
できる限り早く来たつもりだけど、葉月先生来るかな。
「では幻呪符をかけておきますね、私たちは西側に行きます。」
「魁紀、なんかあったら呼べよ!」
そう言って五十鈴は俺たちに幻呪符をかけ、夏たちと西側の森に入った。
「にゃーちゃんが丑崎君の妖気覚えてるから、なんかあったらすぐに気付く。」
「要するになんかあったら助けに来るって言ってるぜ、キャハ!!」
「柿原君、黙って。」
「あ、さーせん…」
「まあ、頑張って。」
「にゃー!」
かわいい。
そうして第四班は東側の路地裏に入っていった。
「じゃあ私たちはここら辺の草むらで隠れてよっか!」
ここら辺の…草むら…
「ねぇ遥ちゃん、もっといい所なかったの?」
「こればかしは琴里ちゃんの案だしぃ…」
草むらだと虫が湧くもんね、わかるわかる。
「通君、今度は私をおんぶしてくれない?」
「え、え…え!?」
「それだと隠れる意味なくならないか?」
「それもそうだった…」
松田は諦め、そっと草むらの中に隠れた。
俺たちも松田同様、そっと草むらの中に隠れる。
松田の悩みは解決されないけど、これからのみんなの悩みはちゃんと解決しないとな。
にしても、来ねぇな。
さすがにもう中に入られちゃったのかな…
「お前ら、誰かが来るぞ。」
健太が誰かの妖気を感じたのか、俺たちに報告をした。
すると、足音が聞こえてきた。足を引きずるまでは行かないけど、かなりゆっくりめの足音だ。
「やっとじゃ、待っていろクソジジイ…今引きずり下ろしてやらぁ…」
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