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干支十二家妖魔日記  作者: りちこ
貴族騒乱編
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第九十集 璇嵐

  9月13日 10:45 鎌倉 藤原邸東 張璇サイド


  「なんなんだこれは…こんなことになっているというのになぜ誰も気付かぬのだ…」


  丑崎殿と別れて東側に来てみたのはいいものの、なんだこれは…


  「なんだよこれ、黒い炎で辺りが燃えてるじゃねぇか…」


  「さすがにこれは酷いですね…」


  黒い炎…そして何故か燃えているのに燃え広がらない。何かの妖術なのか…


  「…ん?奥に何か見えますね。」


  雪代殿が路地裏を眺めて言った。


  「雪代殿、何かおるのか?」


  「黒いローブの女性?が見えます。しかも黒い鎌を持っていますね、おまけにいいケツをしてます。」


  「千代川、あとはわかっておるな?」


  「いちいち言わなくてもわかってるよ!」


  うむ、千代川がちゃんとやってくれるなら心強い。ちゃんとやってくれる時が少なすぎるからな…


  そして、黒いローブの女性が徐々にこちらに歩み寄ってくる。


  「最初に聞いておく、貴殿は人間か?妖魔か?」


  「……」


  返事は無し、か。


  「ならば、拘束させて頂く!いざ参る!!」


  拘束してここら一帯に広がる黒い炎のことを聞かねばな。


  「一番槍は俺がもらうぜ張璇!」


  「馬鹿者!無闇に…!」


  「俺を誰だと思っている、1年1組最強の!千代川宗則(ちよがわむねのり)様だ!対妖魔剣術(たいようまけんじゅつ)巌弥(いわみ)!」


  剣術の名門、千代川家の剣技か。相変わらず一撃が重いものだ、斬りつけた地面が割れてしまってる。


  「おいお前、避けんじゃねぇよ。」


  「……」


  「ならこれはどうですか!氷呪符(ひょうじゅふ)(ろう)!」


  「動きを封じてくれたか雪代!これなら!」


  ん?氷の牢が溶け始めてる…!?


  「千代川!待て!」


  千代川を連れて戻さなければ!


  「んうおぉ!!」


  「…!」


  危なかった、千代川を連れて戻っていなければ斬られていた。


  「ありがとう張璇、助かったわ。」


  「どうってことはない、拙者に負ける前に死んでもらっては困るからな。」


  「あんなんじゃ死なねぇよバーカ。」


  「なっ!」


  「はいはいお二人とも、落ち着いてくださいよ。」


  千代川と2人して雪代に尻を揉まれ、情けない悲鳴を上げてしまった。


  「雪代!何をする!」


  「何してんだ雪代!」


  「いやぁ、2人とも怖い顔してますからねー。ちょうどいいところにいいケツが2組あったので、つい、ね!」


  バカバカしい…


  「氷も効かない、接近も厳しいってなると、やっぱり他の方法を考えるためにちゃんと頭冷やしてやらないとダメじゃないですか。なんなら陰陽で頭冷やしてあげましょうか?」


  「「結構だ…」」


  だが雪代の言う通りだ、千代川がいるとどうしてもすぐに頭に血が上ってしまう。どうすれば…


  「おい張璇!頭下げてるな!そっちに行ってるぞ!!」


  なに!?


  「……!」


  「くっ…これしき!」


  剣で止めることは出来たが、なんだこの感触は…あまりにも軽いぞ。


  「……」


  なんだこれは、鎌から黒い炎が出ているだと!?


  「離れやがれ!」


  「氷呪符(ひょうじゅふ)(らん)!」


  「……」


  千代川と雪代のおかげで距離を取ってくれたか。


  ただ打開策が見つからぬな、先程の軽い感触の訳がわかれば…


  「おい張璇!考え事すると頭を下げる癖やめろ、戦闘中だぞ!」


  「お主にだけは言われたくないぞ千代川!いつも何も考えずに突っ走るから拙者が!!」


  「お二人共、もうケツに未練はないのですね?」


  「「あります!!」」


  おのれ千代川…拙者はなぜこんな男に負けたのだ…


  拙者はずっとおのれの剣術を磨いてきた、それでもこの男に勝てなかった、剣術だけではこの男に…剣術だけ…?


  「ふふ…ふはははは…!!」


  「ど、どうした張璇、ついに頭が壊れたか?」


  「拙者としたことが、大事なことを忘れていた。これでも妖術科だというのに、妖術から目を逸らしていた。」


  そうだ、今の拙者には剣術だけじゃない、妖術も使えるのだ。


  「千代川、雪代、拙者に合わせて一斉に仕掛けるぞ!」


  「なんだなんだ?急にどうした?」


  「ほほう、さっきよりいいケツになってますね張璇さん!」


  実体として考えるにはあまりにも軽すぎる、だがちゃんと実体だと思わせる重さもあった。黒い炎が燃え広がらないのも、重さが足りないからだ。


  すなわち、あやつがただの妖気の塊であれば、全てのことに説明がつく。


  「2人とも!妖気をぶつけるぞ!」


  「なにがなんだかわかんないけど、わかった!」


  「わかりましたよ!」


  すぅ…はぁ…


  深呼吸だ、頭を冷やせ…


  「舞い上がれ!妖璇嵐(ようせんらん)!」


  拙者の新たな技、妖璇嵐(ようせんらん)。それは妖気を纏わせた竜巻、貴殿を葬るまで消えることは無い。


  「派手にやりやがって、だったらもっと派手にだ!対妖魔剣術(たいようまけんじゅつ)大山伽羅木(だいせんきゃらぼく)!」


  横一列に広がる剣のような葉、そして黒いローブの女性に向かって発射された。なるほど、あの葉は確か(いちい)と言ったか、頭悪そうなのに難しい言葉を使うものだ。


  「2人には負けないですよ!氷呪符(ひょうじゅふ)海綿氷(かいめんひょう)!」


  黒い炎を包むように、氷の結晶が出来上がる。そして氷の結晶は黒く燃えながらローブの女性に飛んでいく。


  「「届けぇぇぇ!!!」」


  「……!!!」


  竜巻と葉と氷でぐちゃぐちゃだったが、竜巻が消え、太陽の光が少し差し込む。


  「やれたようだな…」


  「疲れたわさすがに…」


  「そうですね…あとでケツ揉ませてくださいね…」


  「「断る…」」


  「そんな殺生な!!」


  雪代のことはともかく、任務を果たせて何よりだ…


  丑崎殿たちは、ご無事なのだろうか…


  11:10 藤原邸前 丑崎魁紀サイド


  最初の場所に帰ってきたけど、あの3人がまだ戻ってないということはまだ戦ってる最中かなにかあるってことだな。


  「みんな、東に行ってみよう。」


  無事であってくれよ。


  11:14 藤原邸東


  「おいお前ら!大丈夫か!」


  張璇たちが向かった所に行くと、3人揃って倒れていた。


  「あぁ丑崎殿か…拙者たちは大丈夫だ、少々疲れただけだ…」


  完全に疲弊しきっているな、何を相手にしたらこうなるんだ。


  「なんかあったんだな?」


  「あぁ、黒いローブで黒い鎌を持った女性が…」


  「黒?氷とかじゃなくて?」


  「どうやら違う物を相手にしたようだな…」


  こっちは色で言うなら白だけど、全身氷だったからな…にしても黒いローブで黒い鎌…葉月先生をやった相手とはまた違う奴がいるのか?

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