第9話 【走り出す心】
ルシアN「地に足つけて二足歩行、気持ちが昂って足の回転が速くなる、ダッシュ、誰よりも速く、一番に!まぁ俺ちゃんはスピード乗って、翼に風受けて空に舞うんだけどな」
ディー「相変わらず暇そうだな、天才パイロット」
ルシア「なぁんだと!?こちとら暇じゃねーんだ!終わってからお前のとこきてんだかんなぁ!」
ディー「へいへい」
ルシア「からかいやがって」
ディー「へいへい、ほらミ…ほらミルクでちゅよー」
ルシア「ごくっ、んまんま、僕ミルクだいちゅきー!!ってアホかー!何やらせんだ」
ディー「暇だったもんで」
ルシア「からかいやがって」
アンナ「か、かわいい」
ルシア「は?」
アンナ「何いまの?もっかいやって!ねぇ!ねぇ!ねぇ!」
ルシア「ちょちょちょ!」
ディー「いらっしゃい」
ルシア「冷静だな、おい!」
アンナ「ほらミルクだいちゅきー!ってワンモア!ワンモア!!」
ルシア「だー!離れろぉー!!」
ラック「はい、そこまで」
アンナ「あう」
ルシア「ふぃー…助かった、ナイスラック!」
ラック「どうも、で、ご注文は?お姉さん」
アンナ「何このイケメン!名前は?歳は?趣味は?」
ルシア「いいから落ち着け!」
アンナ「んえ!」
ラック「あはは」
アンナ「ふぅ…」
ディー「落ち着いたか」
アンナ「…はい」
ディー「ご注文は?」
アンナ「アメリカンレモネード」
ディー「はいよ」
ルシア「で、なんでこんなしみったれたとこ来たんだ?」
ディー「しみったれたは余計だ、ほらよ」
アンナ「ありがとう、ん、おいし」
ルシア「てかよくここわかったな」
アンナ「エリカが教えてくれたよ、で、ここに来た理由だけど、一つはこの前の御礼、ありがとう…」
ルシア「お、おう」
ラック「なんかあったの?」
ルシア「まぁ色々な」
ラック「ふーん」
ディー「一つはって事は他にも理由があるのか?」
アンナ「うん、私さ、もう一度走ってみようと思う」
ラック「…それだけ?」
ルシア「ラック…」
ラック「ん?」
ルシア「わりいな、ラック…彼女は義足だ」
ラック「あ、ご、ごめんなさい」
アンナ「あ、うん、いいよ.あ、チューしたら許し」
ルシア「調子乗んな」
アンナ「ぶー」
ディー「で、もう一度走ってみるって?生活するには歩けりゃいい、義足なってまで走ろうと思ったのはどうしてだ?」
アンナ「私さ、実は陸上選手だったんだ、こー見えてオリンピック目指してたんだ、でも片脚失って断念したんだ…不思議と落ち込んだりとかはしなかったよ、エリカの事があったからかな…それとも」
ラック「それとも?」
アンナ「義務みたいになってた荷が降りたのかもね」
ラック「義務?」
アンナ「良い結果残さなきゃとか強くならなきゃとか…好きな事なのに違う事に目が向いて見えなくなって苦しんでたんだと思う」
ラック「そっか」
アンナ「でも好きな事って結局捨てきれない、忘れようとしても戻ってきちゃうのよ、誰かさんみたいに…ね!」
ルシア「お、おう…確かにな!俺ちゃんは空へまた羽ばたいたわけだし!まぁ一人じゃ飛べなかったけどな、もがれた翼の代わりがあっから飛べるようなった、最高のパフォーマンスができるかはわかんねーけどな!」
アンナ「ルシアは最高よ、今も昔も!ずっと待ってた、空飛ぶ貴方を、帰ってきた、片腕なっても…だから私も帰ろうって…大好きな走る世界へ…別に選手じゃなくてもいい、走るって事をもう一度始めたい」
ディー「走る事を始める…か…当たり前が無くなるとこう思えるようなるのか…ウチは失った奴らが集まるがアンナみたいなのは中々居ないな」
アンナ「失ったからって諦められる?悲観するのはある、でも諦めて忘れるってできないんだ、絶対に大事なもんなら…ずっと探しちゃう」
ルシア「……だな、俺もそうだ、忘れようなんて簡単に出来ねぇんだ、初恋の女を忘れる方が何百倍も簡単だ…焦がれちまうんだよな…よっし!アンナ!いい奴紹介してやるよ!今から行けるか?」
アンナ「あ、ああ」
ラック「僕らもついてく?」
ルシア「来たいなら来いよ」
ディー「暇だし行くか」
ラック「戸締りちゃんとしてね」
ディー「あいよ」
ルシアN「俺ちゃんとアンナは失ったもんは違うけど、似たようなもんだ…俺ちゃんはアンナと愉快な仲間達を連れ、ザンチアの爺さんとこに来た、アンナが走れるように義足を作ってくれって相談にいきなりだが応えてくれた、義足が出来上がり、1週間が経った」
ディー「いらっしゃい」
アンナ「よっす」
ルシア「おーアンナ!調子どうだ?」
アンナ「いい感じ!ザンチアさん、天才だね」
ルシア「だろ?」
アンナ「まだ全力ではできないけど軽く走るくらいならできるようなったよ」
ルシア「いいじゃん!」
ラック「全力で走れる日も近いかもね」
アンナ「ラック!」
ルシア「おはようさん、眠そうだな」
ラック「ゲームしすぎて寝不足、目がしぱしぱする」
アンナ「はうっ!か、かわいし…」
ラック「??」
ルシア「こりゃ病気だわな、はは」
ディー「アメリカンレモネードでも飲んで落ち着きな」
アンナ「ありがとう…ふぅ…」
ディー「で、さっきから握りしめてるそいつはなんだ?」
アンナ「ふふふ…はいこれ!」
ディー「4月8日」
ラック「マラソン」
ルシア「大会?」
アンナ「そう!マラソン!出よ!てか二人のエントリーもしといたから!」
ルシア「は?」
ラック「え?」
ディー「あ?」
アンナ「てことでよろしく!私の晴れ舞台付き合ってよね!」
ルシア「んな勝手な!」
ディー「マジか」
アンナ「ザンチアさんを信用してないわけじゃないけど、何あるかわかんないだろ?心細いじゃん」
ルシア「…しゃあねえ、付き合うか」
ディー「…だなぁ…良い歳のおっさんにはキツいんだけどなぁ」
ルシア「まぁ、頑張ろうぜ」
ラック「応援してるよ」
ルシア「応援?馬鹿言うな」
ラック「え?」
ルシア「アンナ、当日エントリーは?」
アンナ「可能!」
ディー「ふふ」
ルシア「ふっふっふ…お前も道連れじゃあ!!」
ラック「なんでぇええ!!??」
ルシア「引きこもってないで、たまにぁ動けぇ!」
ディー「で、何時スタートだ?」
アンナ「12時!11時30分に現地集合!遅れないでよぉ?」
ルシア「へいへい」
ラック「で、当日を迎えて時間は11時50分」
ディー「俺らの準備は万端」
ルシア「だな!」
ディー「だがしかし」
ルシア「な!ん!で!肝心の言い出しっぺが来ないんだょおお」
アンナ「はぁっ…はぁっ!」
ラック「あ、来た」
ルシア「遅い!」
アンナ「ごめんごめん、なんかワクワクして寝れなくってさ」
ルシア「子供か!」
アンナ「まぁまぁ…間に合ったんだし許してよ」
ディー「そうだな」
ラック「そうだね、ね?」
ルシア「お、う、おう」
アンナ「さてと目標は完走!皆んな一緒にゴールへ!オーケー?」
ルシア「ったく、しゃあねぇな…オーケー!」
ラック「オーケー」
ディー「オーケーだ」
アンナN「パンっと銃声が鳴り響き、スタートする、大袈裟かもしれないけど私にとっては人生の再スタートの合図だと思った、順調に走ってけるかはわからないけど…私達は揃って走りゴールを目指す、走り続けてゴールまであと少しなったところ」
ディー「…はぁ…俺もまだ捨てたもんじゃないな、案外走れるもんだ」
ルシア「やるじゃん、おっさん」
ディー「お前もすぐなるさ」
ルシア「嫌なもんだ」
ディー「さて」
ルシア「ラーック!無事かぁ!」
ラック「はぁ…はぁ…きっつい」
アンナ「頑張ってラック、もうすぐゴールだから」
ラック「う、うん」
ルシア「お!ゴール見えた!」
ディー「ふぅ…やっと終わる」
アンナ「………たい」
ルシア「アンナ…?」
アンナ「走りたい!」
ルシア「あ、おい!!」
アンナN「私は全速力で走った、そしてゴールした、その瞬間、義足は壊れて私は地面に倒れ込んだ、疲れて大の字になり青空を見上げてた」
ルシア「はぁっ…はぁっ…おい、無事か!?」
アンナ「へへ…ブイ!」
ルシア「あーあ、ぶっ壊しちゃってまぁ…ザンチアの爺さんに叱られるぞ」
アンナ「…へへ」
ディー「ふぅ…追いついた」
ラック「はぁ…はぁ…はぁ」
ルシア「で、どうよ?」
アンナ「最高に気持ちよかった!」
ルシア「ならよかった、よぉーし、これからお疲れ会でもするか!」
ディー「だな、まぁ勘定はよろしくな、ルシア」
ルシア「な!?うーん…まっいっか!」
アンナN「誰だって止まることなんてある、でも何かが始まれば足は勝手に進むんだ、未来へ…走れ」