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Losers  作者: こーへ〜
5/11

第5話【忘れられぬ慟哭】

ディーN「愛を知り、護るもんができた…大層な物言いをしたが、そんな奴は家族を持つ人間、いや動物なら当たり前だろう…だが、俺はそれを護る為に俺と同じように護る者が居る奴の生を奪った、自分が生きる為に…だからバチが当たったんだ…」


ディー「雨か…この天気じゃ客なんて来そうにないな…少し早いが閉めるか…」

ニア「どうも」

ディー「おお、ニア」

ニア「いきなり扉が空いたからビックリしたわ」

ディー「ああ、すまねぇ、天気も悪いから閉めちまおうと思ってたんだ」

ニア「あら、そう?なら帰ろうかしら」

ディー「寂しいこと言うなよ」

ニア「冗談よ、ふふ」

ディー「敵わねぇな」

ニア「ほら、案内して」

ディー「はいよ、いらっしゃい、お客様」

ニア「ふぅ」

ディー「何にする」

ニア「ギムレットにして」

ディー「ギムレットには早すぎる」

ニア「…なにそれ?」

ディー「…ああ…コアだったか、レイモンド・チャンドラーの小説『長いお別れ』にある台詞さ」

ニア「へぇ…知らなかったわ」

ディー「まぁ知らなくてもいいことではあるしな、はいよ、ギムレット」

ニア「…ん、おいし…長いお別れね…このカクテルにはその意味があるの?」

ディー「まぁな、あとは遠い人を想う…とかな」

ニア「遠い人を想う…そう、居るの?」

ディー「急だな、おい」

ニア「ふふ、悪い?」

ディー「いや」

ニア「で、居るのかしら?」

ディー「…居るよ、もう届かないけどな、二人」

ニア「あら、二股?」

ディー「ちげぇよ、嫁と息子だ」

ニア「…えーと、離婚?」

ディー「違う……」

ニア「…?」

ディー「………殺したんだ、俺が…7年前のあの日に」

ニア「7年前…」


ディーN「俺はなんで話そうと思ったのか…今でもわからなかった…その出来事は7年前、殺し屋の俺が一丁前に女に惚れた、愛した、そして一緒になり子宝に恵まれた、人の人生を摘み取る俺が家族を持って暮らしていた」


オリビア「エド!いってらっしゃい」

アラン「パパいってらっしゃいー!」

ディー「ああ、行ってくる」


ディーN「エドワード・デイビス、これが俺の本名だ、今更かも知れんが…全く実に殺し屋には相応しくない送迎だったろうか」


アラン「おかえり!」

ディー「ああ、ただいまアラン、いい子にしてたか?」

オリビア「おかえり、貴方、ご飯にする?お風呂にする?それとも」

アラン「ご飯!!」

ディー「はは!アランはご飯が優先だとさ、それとものやつはアランが寝てからな」

オリビア「んもぅ…冗談で言おうとしただけなのに」



N「平凡な、ごく普通な、幸せな家族の風景だ…その裏で俺は」


男「ひぃっ!嫌だ!!助けてくれ!!」

ディー「それはできないな」

男「だ、誰だ!?なんで知りもしないお前が俺を殺そうとする!?だ、誰かに頼まれたのか!?」

ディー「それは言えない」

男「た、頼む…!!お、俺には妻も子供も居るんだ!!護るもんがあるんだ、こんなとこで!し、死ねないんだ!!」

ディー「……もう喋るな」

男「ひぃっ!がはっ!な、なんで……アンナ…キャシー…」

ディー「ミッションコンプリート」


ディーN「平和で幸せな家庭の裏で俺は人を殺していた、相手の家庭や人生を奪っていった、何も感じないでいれた事が何か苦虫を噛み潰したような気持ちになっていった、そんな日常を繰り返しく中、最悪の依頼が舞い込んで来たんだ」


依頼人「やぁ、忙しいところすまないね、君へのいらっしゃいルートを入手するのに手こずってしまったよ、どうすれば君とコンタクト取れるかって!ああ、すまない、話が長くなるといけないよね」

ディー「いえ別に構いませんよ、それで依頼は?」

依頼人「いや、簡単に事だ、とある場所に行って止めを刺してきて欲しいだけなんだ」

ディー「止めを刺す?」

依頼人「そう、場所はルーカスにある第四倉庫、地図は送っておく、そこに捕まってる人間を殺すだけだ」

ディー「何故そこまでできていて俺に依頼する?」

依頼人「いや、なに、ただ君の殺しを見たいだけさ」

ディー「…悪趣味な事で」

依頼人「報酬は1億だ、成功確認次第、君に届けよう…では、よろしく頼む」


ディーN「俺は言われた通り、送られてきた地図の場所へ向かった、簡単な仕事、破格の報酬額、断るわけがない」


ディー「ここか…アレだな、袋に入れられて拘束か…古臭い手だな…まぁ、いい、これで1億だ、さっさと終わらせよう」


ディーN「少しだけ冷静になれたらよかったんだ、少しだけ…俺はこの時、殺す相手を確認しようともしなかったんだ、首の位置を確認しナイフで突き刺す、帰ろうとした、その時、電話が鳴った」


ディー「なんだ?言われた事はやった」

依頼人「ああ、見てたさ、実に愉快だった」

ディー「ホント、悪趣味だな」

依頼人「いや、そうでもない、何故愉快なのかは僕の復讐が完了したからだ」

ディー「復讐?」

依頼人「エイドリアン・ホーディー、彼を覚えてるか?」

ディー「…」

依頼人「覚えてるわけないか…殺した人間なんて…僕はその弟のマーカスだ、名前なんて言ったら素性調べられて殺されるね、はは…まぁいいんだ、やる事はやったから…兄さん、やったよ、兄さんからすべて奪った奴に復讐してやったよ…ははは…ディー、最後に一つ言っておくよ、奥さんと息子が待ってるから早く帰ってあげなよ、家で待ってるか分からないけど…あはは!ははははは!!兄さん…今、そっち行くよ、そっちで幸せな家族になろう」


ディーN「そう言うと銃声と共に倒れる音が耳に響いた…」


ディー「……自殺…か……帰ろう、オリビアとアランが待ってる…」


ディー「待て、なんで依頼人はオリビアとアランの事を知ってた…まさか!?」


ディーN「俺は慌てて自分が殺した人間の入った袋を開けた」


ディー「…あぁ…神よ…嘘だと、これは悪い夢だと言ってくれ…オリビア、アラン…嘘だ…嘘だ、うそだぁあああ!!」


ディー「袋の中にはオリビアとアランが無残な姿で眠っていたんだ…俺が、俺が殺したんだ…」

ニア「そんな……」

ディー「……」

ニア「…ほ、本当に貴方が…」

ディー「ん?」

ニア「貴方が本当にやったのかしら?既に殺されてたかも…しれない…じゃない…」

ディー「いいんだ、大切な妻と息子に気付けず刺してしまった…俺が殺したも同然さ」

ニア「でも…」

ディー「カルマ…だったのかもな」

ニア「カルマ?」

ディー「そうカルマだ、業が己に振り返ってきた、因果応報ってもんさ、そうケリつけるしかなかったんだ、報復する相手も勝ち誇ったように死んでった、自ら死のうにもびびっちまって死ねなかった、人の命は簡単でも自分だと、とんだチキン野郎だったよ、手元に残ったのは金だけだったさ」

ニア「そう、それでこの店を?」

ディー「ああ、負け犬の店をな、みっともなくさ」

ニア「でも私、好きよ、ここ」

ディー「そうか、グラス空いたな、次はどうする?」

ニア「同じでいいわ、あとディーには…日本酒も仕入れてるなんてやるじゃない、なら貴方にはカミカゼを送るわ、飲んで」

ディー「おお、悪いな…」

ニア「日本に行った時に聞いた事があるの、このカクテル言葉は…貴方を救う」

ディー「救う」

ニア「救うわ、いつか私の歌で、私が貴方へのレクイエムを歌ってあげる、覚悟しておきなさい」

ディー「お、おう…ほらギムレット…とカミカゼ」

ニア「では私の決意とディーの…何にする?」

ディー「死への希望?」

ニア「に乾杯!」

ディー「はは…乾杯」


ディーN「死ぬ事に希望を持つなんてバカらしいかもしれない、けど敗北し遺失し損失した俺にはピッタリかもしれない…まだ待たせてしまうかもしれないけど、もう少しだけ待っててくれ…ああ、会うまでに色々考えとかないとな…全く、楽しみだ」

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