【第3話】死は二人を繋ぐ
ラック…男
ニア…女
ルシア…男
ジョン…男
イザベラ…女
slot pixess
ラックN
「良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い合う…それが男女が迎える幸せだと僕は知っている…でも、わからない、それは今の僕じゃなく前の僕でもわからなかった…と、思う。」
ルシア「よー」
ラック「いらっしゃい」
ルシア「おー!ラック、元気か?」
ラック「元気だよ」
ルシア「おう、なら笑え!」
ラック「はは」
ルシア「はい、いつものありがとう、フリじゃなくなる、夢見て待ってるぜ」
ニア「お邪魔するわよ」
ルシア「邪魔するなら帰っ…ニア!」
ニア「どうも、ラックもこんばんは」
ラック「こんばんは」
ニア「ディーは?」
ルシア「そーいや居ねーな、便所か?でけーなげーウンコだな!」
ラック「違うよ、ディーは今日は休み、なんか用があるって」
ルシア「ふーん、そう」
ラック「何飲む?」
ルシア「ミルクで」
ニア「私はグレンフィデックのロックくれるかしら」
ラック「かしこまりました」
ルシア「ニアって強いの飲むよね」
ニア「好きなのよ」
ルシア「俺ちゃんは真似できねーなぁ」
ラック「はい」
ルシア「サンキュ」
ニア「ありがと、ルシア、ん」
ルシア「お、乾杯」
ニア「ん…そういえば今日はJAZZじゃないのね」
ラック「そうだね、ディーが変えたんじゃないかな?昨日は僕出てないからわかんないや」
ルシア「まぁいいじゃん!かっけーし、slot pixess!!」
ニア「ああ、これそうなのね」
ルシア「ああ、NOW LIPはマイナー曲だからわかんないか、ラック、トラックNo.1!」
ラック「了解」
ニア「…あ、知ってるわ、THE WAYね」
ルシア「正解!サイコーにパンクでロックで!もーエモすぎ!」
ニア「確かに彼女のボーカルは魅力的ね、ハスキーでかっこいいわ」
イザベラ「…ありがと、光栄だわ」
ラック「いらっしゃい」
ジョン「そこ平気かい?」
ラック「ええ、どうぞカウンター席へ」
ルシア「おいおいおいおいおいおいおい…マジか!?レジェンド降臨じゃねーか!ジョンにイザベラだ!あ、握手して下さい!」
イザベラ「はい」
ジョン「1年前にバンド抜けた俺達によくそんな興味持てるな」
ルシア「そりゃあもう!あんたらは最高のカップルだからだよ!」
ジョン「ありがとう…あ」
ルシア「震えてんな、やっぱり…」
ジョン「ああ、酒にタバコ、終いにゃヤク、やり過ぎて中毒…おかげでギターが弾けなくなった…失っちまったよ」
ルシア「そっか」
ラック「何飲みます?」
ジョン「ターキーのロック、ダブルで、イザベラは?」
イザベラ「同じでいいわ」
ラック「どうぞ」
ジョン「まさか俺達の曲がかかってると思わなかった、君の趣味か?」
ラック「いや、マスターのレコードです」
ジョン「そうか」
ルシア「おいおいラック、表情くらい作れって」
ラック「…あ」
ジョン「いや、気を使わなくていい」
イザベラ「そーゆーの疲れちゃったから」
ルシア「あらそーお?」
ニア「イザベラさん、なんでバンドを辞めたの?」
イザベラ「意味がないからよ」
ニア「意味?」
イザベラ「そう、彼がヘロインのせいでギターが弾けなくなった…彼の音で歌えなきゃ意味がない、もう戻らない音、彼のギターは死んだ、なら私の方も死んだの、ほら」
ニア「うっ…」
ジョン「エグいだろ?コイツは喉切ったんだよ、俺のギターと共に自分の歌も死ぬって…今じゃ歌えないけど話すまでできるようなった…ホントに死ぬ所だったんだぞ」
イザベラ「ふふ」
ジョン「はは」
ルシア「…笑えねぇ」
ニア「…愛ね」
ジョン「ああ、愛さ」
イザベラ「そう、愛、彼のギターだけじゃないけどね、」
ラック「それはどういう?」
ジョン「…こういうこと…んっ」
イザベラ「んっ」
ニア「大胆」
ラック「ん?」
ジョン「わかんないか?俺はイザベラを愛し、イザベラは俺を愛してるってことさ、死ぬ時も一緒だ」
イザベラ「彼を死んでも愛してる、だからこそ喉を切れたのよ」
ラック「…愛…わからない」
ジョン「君くらいの歳で珍しいな」
イザベラ「そーね、可愛い顔してるし、モテると思うのに」
ラック「…そうなのかな、よくわからない、わからなくなったのかわからなかったのかもわからない…」
ジョン「ん?」
イザベラ「変な子ね」
ルシア「ああ悪ぃ、お二人さん、コイツは感情を失ってるんだ」
イザベラ「感情を?」
ルシア「んで、こちら歌の女神様も歌うことを失ってる、
ジョン「歌の女神様?」
イザベラ「…もしかして…ニア?」
ニア「え、ええ」
イザベラ「歌えないって?私みたいに喉を…って訳じゃなさそうね」
ニア「そんな恐ろしいことできないわよ、原因はわからないけど歌おうとすると声が出ないのよ、きっと神様の嫉妬の呪いね」
イザベラ「呪い…ふふ、確かにそうかもね、ニア、貴方の声は神々しさまであったから」
ニア「でも、いつかまた歌えるようになるわ」
イザベラ「そう、待ち望んでるわ」
ルシア「あ、ちなみに俺ちゃんはこれ、左腕」
ジョン「左手のない客に、歌えなくなった女神、感情を失くしたバーテンダー、そして俺はギターが弾けなくなって、イザベラは歌うことわ失った」
イザベラ「何かしら失ってる人ばっかりね」
ニア「ここの店の名前は?」
イザベラ「…Losers」
ジョン「敗者、損失者、遺失者」
ラック「なんでかわからないけどそう言った人がここには集まる」
ニア「類は友を呼ぶのよ、私もつい最近ここに来たの」
ルシア「遺失者が集うBAR Losers」
イザベラ「悪くないわね」
ジョン「ああ、気に入った」
ラックN
「それから二人は飲んで食べて、話して朝まで居た。楽しんでた…のかな?考えるときっと楽しいって感情だったと思う、みんな笑ってたから」
ジョン「ありがとう、楽しかったよ」
ルシア「こちらこそ!」
ニア「ええホント」
ラック「ありがとうございました」
イザベラ「またね」
ジョン「ああ、それから君にこれ」
ラック「これは?」
ジョン「ちょっとしたラブレターさ」
ルシア「ラブレター!?いいな!見せろ」
イザベラ「だめよ、それは彼に渡したんだから」
ジョン「帰ってから見るんだ、いいな」
ラック「はい」
ジョン「よしまたな」
イザベラ「さよなら」
ラックN
「ラブレター、愛の手紙…中身は愛の言葉なんて何も書かれてない物だった」
ジョンN
「君に見てもらいたいものがある、ここに来てくれ」
ラックN
「書き記された場所に僕は向かった、昨日知り合ったばかりのお客さん、何故か行かないといけないと思考した」
ジョン「よく来たな」
イザベラ「いらっしゃい」
ラック「どうも」
ジョン「座ってくれ」
ラック「失礼します」
ジョン「単純な疑問だ、何で感情を失った?」
イザベラ「先天的な感情欠乏はあっても後天的なんて聞いた事がないわ」
ラック「…願ってしまったんです、それ以上は言えないです」
ジョン「願った…神様の気まぐれで叶ってしまったのか…なるほどな」
イザベラ「ホント迷惑な神様ね」
ジョン「そうだな、さてと」
ラック「…?」
ジョン「2つ目のラブレターだ、読んで…声にはしないでいい」
ラック「……これって…」
ジョン「ああ、そうだ」
イザベラ「愛してるからこそなのよ」
ラック「愛してるからこそ…」
ジョン「そう、愛してるからこそ大事で、何かをしたい、されたい、そばにいたい…見て、聞いて、触って…感じて…愛してるからこそしたくなる」
イザベラ「喜び、怒り、哀しみ、楽しみ…家族でも友達でも恋人でも…愛してるからこそ分かち合える」
ジョン「君は感じないだろう、だからこそここに来てもらったんだ…」
ラック「……」
イザベラ「貴方が何を感じるかはわからないわ、何もないかもしれないけど」
ラック「はい」
ジョン「これからやる事が終わったら昨日の彼でも呼んで来たらこうなってたって言えばいい、対処してくれるだろう、じゃあ、さよならだ」
イザベラ「そうね」
ジョン「おいで、イザベラ」
イザベラ「愛してるわ、ジョン」
ジョン「ぐっ!ああ、俺もさ…」
イザベラ「うっ!」
ジョン「良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、そして死は二人を繋ぐ…ここに愛を誓います」
イザベラ「ずっと一緒よ」
ラックN
「二人はお互いの胸にナイフを刺して、抱き合い…絶命した…幸せそうに…涙が流れてたのに哀しみとは思えなかったのは何故なんだろう…僕に渡されたのは二人の遺書だった」
ジョンN
「最期に素敵な場所に出逢けた、もっと早くに出逢いたかった…でも僕は限界らしい…辛うじて生きてる、最期だから頑張ってみた、ギターも弾けないこの僕を愛してくれた彼女、最初に決めた取り決め、死ぬ時は一緒…僕は死ぬ、彼女と一緒に…愛してるからこそ……最後に一言、何もないかもしれないけどラック…君は愛されてる…いつかわかる…じゃあ、サヨナラ」
イザベラN
「愛してるからこそ、死ぬの、一緒に…彼の人生は私の人生…終わりも一緒…わかってもらえなくてもいい、あの店、Losers…たまたまだけど出逢えてよかった…ホント最期の晩餐?楽しかったわ、貴方も笑ってくれれば良かったけどね…笑ったりできてたんなら思い出せるはずよ、また願ったら感情復活するかもね、保証はしないけど…じゃあサヨナラ…」
ラックN
「僕は書かれてたようにルシアを呼んだ…ルシアはすぐに来てくれた、焦って救急車を呼んで泣いていた」
ラック「ありがとうルシア」
ルシア「…っう…うぅ…ジョンさん、イザベラさん…うぅ…ゔぁああ」
ラック「哀しいの?」
ルシア「当たり前だろ!お前と違って感情あんだよこっちは……ラックお前」
ラック「何?」
ルシア「…何で泣いてんだ?」
ラック「え?」
ルシア「お前感情が…」
ラック「わからない…」
ルシア「…そっか…」
ラックN
「頬に伝わった…温かいもの…水、僕の涙だ、きっと哀しいから出た、哀しい?何が?わからないけど何か感じたのなら…僕はまた笑ったりできるかもしれない…失うように願った…今度は返してもらうよう願ってみてもいいのかもしれない」