第2話 空は青いか?
ルシア…男
ザンチア…男
ディー…男
ニア…男
ルシアN「もう一度、もう一度あの空へ…自分の翼で…飛びたい、そう思ってどのくらい経ったけな…空は青い、見上げれば分かるほど、ムカつくくらいに」
ディー「いらっしゃい、なんだルシアか」
ルシア「なんだとはなんだよ」
ディー「いつもの事だろ、それとこいつも、いつものだ」
ルシア「あらミルク、お早いのね」
ディー「客の好みを把握してなきゃ、この仕事は務まらねぇからな」
ルシア「ほー、さすが…元殺し屋とは思えない」
ニア「ホントね」
ルシア「ニア!」
ニア「お久しぶり…って程でもないかしらね」
ルシア「お久しぶりお久しぶりさ、二日も君に会えなかったんだ、俺ちゃんは寂しかったよぉ」
ニア「あら、上手く言ってくれるわね」
ディー「あー、ジンライムでいいのか?」
ニア「お客の好みを把握してなきゃ、この仕事は務まらねぇ…」
ディー「うっ…」
ニア「冗談よ、オペレーターを頂戴」
ディー「了解」
ルシア「オペレーター…」
ニア「どうしたの?」
ルシア「いや何でも…」
ニア「そう」
ディー「オペレーター、お待たせ」
ニア「ありがとう…ん、美味しい」
ディー「どうも」
ニア「…飛行機操縦士の間で飲まれてたって説があったわね、オペレーターには飛行機操縦士って意味もあるとか」
ディー「ああ、そうだな、飲まれてたのはあくまで説ってだけだけどな」
ニア「そうね、で、その名前から少し引っかかるものがあったのかしら?元パイロットさん」
ルシア「…へへ、痛い所突いてくるね君」
ニア「あら、ごめんなさい」
ルシア「俺の事嫌い?」
ニア「まだわからないわ」
ルシア「そう」
ニア「まだ空が恋しい?」
ルシア「当たり前だ、俺ちゃんのステージはあの空にあったんだ、唯一の世界だった」
ニア「唯一の世界…か…わかるわ」
ルシア「ニア…」
ディー「だが、お前は腕を失った片腕でも空を飛ぶことはできなくないかもしれんが、ただ飛ぶだけじゃ、お前は満足しねぇだろうなぁ」
ルシア「…そうだろうな」
ニア「ただ飛ぶだけじゃ駄目って?」
ディー「こいつは飛行機のアクロバットパフォーマンスチームの一員だった」
ルシア「チーム、エアロインパルス、エースパイロット!空を縦横無尽に好き勝手に自由気ままに駆ける、誰もが魅了されるフライトテクの持ち主ルシア・ファルシファ!それが俺!だったんた…」
ディー「今じゃただの飲んだくれのアホだけどな」
ルシア「うるへー」
ニア「聞かせてくれる?貴方が何故飛べなくなったのか」
ルシア「つまらないぞ?」
ニア「いいわ」
ザンチア「邪魔するよ」
ディー「いらっしゃい、何にする?」
ザンチア「とりあえずミルクを」
ディー「誰かさんに似てるな」
ザンチア「ここに居ると聞いてね、儂はその誰かさんに会いに来たんだよ、久しぶりだな、ルシア」
ルシア「爺さん!」
ザンチア「探すのに苦労すると思ったが簡単でよかった、会えて嬉しいよ」
ルシア「ああ、俺も会えて嬉しいよ、けどよ、どうしてここに来たんだ、ザンチアの爺さんよ」
ディー「アンタもなんか失ったのかい?ここは名前のせいなのか場所のせいなのか、そんな奴らが集まるんだ」
ザンチア「Losers、遺失者達か…ああ、失ったよ、家族を」
ディー「そうか、はいよ、ミルク」
ザンチア「ありがとう」
ルシア「で、爺さん、なんで俺に会いに来た?」
ザンチア「また飛んでもらう為…と言ったら?」
ルシア「爺さん、アンタ現場に居ただろ?フライト中、エンジンにトラブルが発生、火が上がった、俺ちゃんは緊急脱出、飛行機は空中で爆発、幸い観客に破片が当たるなどの災害もなく事なきを得た」
ザンチア「だがお前さんだけは」
ルシア「ああ、飛んできた鉄の破片がまるでギロチンのように俺の腕を切断した」
ニア「そんなことが…」
ルシア「空に嫌われたんだよ、きっと」
ザンチア「そんな事はない、お前は空に愛されている」
ルシア「んじゃ何だ?鳥の嫉妬か?」
ザンチア「それはわからんよ…」
ルシア「俺はもう飛べない、あの頃のように」
ザンチア「だから儂が来たんじゃよ」
ルシア「アンタが来たから何になるんだよ、帰ってくれ」
ザンチア「……」
ディー「ルシア、この人は客だ、ここはお前の店じゃねぇ、テメェも逆だがうだうだ言うなら帰れ」
ルシア「ちっ、わぁったよ、ほらミルク代な、あばよ」
ザンチア「あ、おい待てルシア!」
ニア「行っちゃった…」
ザンチア「はぁ…」
ディー「残念だったな、ザンチアさん」
ザンチア「こいつに乗ってもらいたかったんだがな…」
ディー「この資料は?」
ザンチア「儂が彼奴の為に開発したもんじゃ、こいつに没頭するあまり儂は家族から見放され、失ったんじゃよ、笑えるだろ」
ディー「…こ、こいつは凄ぇ…ザンチアさん、明日付き合ってくれ、ニアも協力してくれ」
ニア「え、ええ、いいけど何する気?」
ディー「それはだな…」
ルシア「ぐーぐー」
ニア「よく寝てる事」
ディー「そうだな、じゃあ手筈通り」
ニア「ええ、ホントに起きないんでしょうね?」
ディー「ああ、コイツは簡単に起きねーよ、ここが火事になろうが寝てるさ」
ニア「相当ね」
ディー「ああ相当だ」
ニア「起きたらびっくりでしょうね」
ディー「だな、よし行こう」
ニア「ええ」
ルシア「ぐーぐー」
ニア「着いたけど起きそうにないわね」
ディー「…仕方ない、おらっ!」
ルシア「ぶへっ!な、なんだ!?敵襲か!?」
ディー「よう、おはよう」
ルシア「ディー!な、なんで俺の部屋に居るんだ?」
ディー「この広大な荒野がお前の部屋か?」
ルシア「え?あ?な、なんじゃこりゃああ!!どこだここ!」
ディー「あーうるせぇうるせぇ」
ニア「ごめんなさいね、ちょっと寝てる間にに運び出させてもらったの」
ルシア「ニア!?」
ディー「悪いな」
ルシア「はぁ…ったく、で、こんなところまで連れてきてどうする気?」
ザンチア「お前に見せたいものがある」
ルシア「ザンチアの爺さんまで、おいおい…」
ディー「オーケーか?」
ニア「ええ」
ディー「せーのっ!」
ザンチア「ルシア、これがお前に見せたいものさ」
ルシア「シルバーウイング…」
ザンチア「お前の愛機、儂が蘇らせ、その腕でも飛べるようにシステムを開発した、片腕でもあの時のように空を自由に駆けれるように…な」
ルシア「…はは、あんた…馬鹿だよ」
ザンチア「お前のフライト姿が頭を離れなくてな、それほどまでに愛しているんだよ、お前のフライトを」
ルシア「…へへ、気持ち悪ぃ」
ザンチア「飛んでくれるか?」
ルシア「ああ」
ルシア「なるほど、これがこうなってこうで…こうか…オーケー、大体分かった…ザンチア爺さん、あんたすげーよ天才だ」
ザンチア「ありがとうよ、お前も天才だろ?」
ルシア「ま、まぁな!」
ザンチア「天才と天才をかけたらどうなる?」
ルシア「…最強だ!」
ザンチア「行ってこい!」
ルシアN「俺は再び空に飛び立った、雲一つない真っ青な空、視界が霞んだ、ただこの空に自分の翼で飛んで居られるだけでよかった…そう思えた気がした」
ディー「聞こえるか?」
ルシア「ああ、なんだよディー」
ディー「ニアから一言あるそうだ」
ルシア「ニアから?」
ニア「ルシア、見せてよ、貴方の舞台、貴方の世界」
ルシア「……」
ディー「だそうだ」
ルシア「…そうだ、そうだよな、ただ飛ぶだけじゃオーディエンスは満足しないよな、よーし見てろー!」
ニアN「銀の翼を携えて空を自由気ままに飛ぶ、不思議と神々しくて、天使かと思えてしまった事は自分でも恥ずかしくなるくらい笑えてしまう、けど…彼の見せてくれる世界はとても美しかった」
ザンチア「ルシア、聞こえるか?」
ルシア「ああ」
ザンチア「ありがとう、飛んでくれて」
ルシア「礼を言うのはこっちさ、また俺をこの空に連れてきてくれた、ありがとう」
ザンチア「ルシア」
ルシア「あん?」
ザンチア「空は青いか?」
ルシア「ああ真っ青だ、笑える程に」