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first time

登場人物


主人公 アイくん


名前 高嶋(たかしま) 藍翔(あいと)

ニクネ アイくん、藍翔「くん」

誕生日 1月10日

身長 156cm

性格 明るいみんなのアイドルみたいな存在。けど実は超ヘタレ、臆病、メンタル弱め、人見知り


名前の由来 誕生日の1月10日から来ている。1が(あい)、10が「とう」と読むことから「と」で「あいと」



アイくんの昔馴染み


名前 白石(しらいし) 涼来(しずく)

ニクネ 涼来「ちゃん」 、しーちゃん、しぃ、おチビちゃん

誕生日 8月7日

身長 148cm

性格 のんびりしている。聞き役、世話好き、天然で明るい女の子



アイくんの相棒 “しゅんくん”



名前 梶岡(かじおか) 瞬翔(しゅんと)

ニクネ しゅん(くん)、瞬翔「くん」

誕生日 2月10日

身長 165cm

性格 しっかり者、明るく元気


グループ名 『Twin翔』

しゅんくんとアイくんで活動

本名等は明かされていない、




涼来の友人


名前 七沢(ななさわ) 十彩(とあ)

ニクネ とあ、とあちゃん




その他


Twin翔の先輩、後輩、ライバル


それからファン、など


ここに1人の演技派なアイドルがいた。彼はみんなの人気者。背は小さいが可愛い顔した、その名は“アイくん”。小さい頃から老若男女問わず人気だった。まさにアイドル。

そんな彼に寄せられる数多く寄せられるファンレター。その数々はマネージャーが確認して大丈夫だと判断したもののみ本人が見れることになっているが、彼は普段から絶対確認済みのものでも見ない。しかし、その日は確認しようと手にとったマネージャーの手元にあるものに目が止まった。見覚えのある字、名前。間違えないとアイくんは思った。スっとマネージャーからそれを取るとなんの躊躇(ちゅうちょ)もなく彼は開いた。

「え、アイくん!ちょっと!」

マネージャーは驚き、取り返そうとするが、そうもいかなかった。顔がとても穏やかになったから。

「………やっぱり。大丈夫。これは」

「……珍しいな、藍翔(あいと)がファンレターみるなんて」

相棒やマネージャーが驚くのも無理もない。見たのはこれが初めてである。

「……あぁ、ファンレターじゃない。だけどなんも問題ないから」

「……やけに嬉しそうじゃん?もしかして知り合いとか?」

「……ん。大事なヤツ。俺をアイくんにしてくれたやつ」

彼の大事そうに読むその顔は見たことないくらい穏やかで優しい顔をしていると相棒、瞬翔(しゅんと)こと“しゅん”とマネージャーは思った。

その彼が読む手紙の相手は、彼の昔馴染みの涼来(しずく)だった。内容はただ一言。『アイくん、帰ってきたよ。頑張ってるね、いつも見てる』たったそれだけであるが、それだけで十分。それだけで頑張れる。

「……アイくんにしてくれた?」

「うん。しゅんもマネージャーも、もう俺が演じてるのは知ってるだろアイドルを。そのアイドルアイくんに俺をした人で俺の……初恋」

「……演じてるのは知ってるが、何それ気になるんだけど?……名前は…これなんて読むの?」

珍しく読んだ一通の手紙から、“アイくん”の原点が明かされた。

「……これは“しずく”と読むんだ。俺はさ……」



彼、アイくんは物心ついた頃からずっと人気者だった。でも彼は人見知りでなつくことはなかった。そんな彼に転機が訪れたのは幼稚園に上がる少し前のこと。近所の公園に親と遊びに行った。遊んでる子達と話なんて出来ず、1人で遊んでいると、女の子が1人話しかけてきた。

「ねぇ、きみはなまえなんていうの?しぃは、しずく!よろしく」

「………あいと」

女の子は、自分のことを名乗ると、彼にも名前を聞いてきた。人見知りだけど藍翔は小さな声でボソリと呟くように名乗った。

「じゃあ、あいくんだね!」

すると女の子はそう言ってニコリと笑った。

「……あいくん、いっしょにあそぼう!」

遊ぼうと言われ最初は戸惑った。女の子…いや、同い年くらいの子と遊ぶこと自体が初めてでどうしていいか分からなかった。

「しぃね、さいきんひっこしてきたの。あのマンションに!ともだちいなくてあいくんがいちばん目のともだち!」

「………ぼくも、あのマンションにすんでる。あと……ぼくもしぃちゃんがいちばん目のともだちだよ」

ニコニコ話す“しずく”に可愛いと彼は思った。同じと聞いてさらに仲良くしたくなって口を開く。

「ほんとう!?いっしょだね!あいくん、かあいいからいると思ったのにしいがいちばんだなんてうれしい!」

やっぱりニコニコする涼来の顔が好きだな、もっとみたいと彼は話に一生懸命答えていた。 彼の親はそれを見て驚いた。

「…あいが…珍しい」

「……すいません、うちの子が……」

「あ、いえいえ。あまりにも珍しく話してるんでびっくりして。おたくのこなんですか?ありがとうございます」

藍翔は名前を聞かれようが今までは喋らなかった。隠れに来ていたのに、喋っているのはびっくりだった。

「…いえいえ、こちらこそ。引越してきたばかりで仲良い子がいないので良かったです」

「……そうなんですか。お子さんいくつですか?凄いしっかりしてるように……」

「今、3歳です。そんなしっかりしてますかね?ただ天然なだけですよ」

親同士もすっかり打ち解け、仲良くなっていた。

同じマンションということもあったが、階が違くてもお互いの家に最初のうちは預けられて遊んだり、出会った公園に行ったりとても仲良くなりしょっちゅう遊んでいた。家が分かると、こっそり親のいない時にどちらかがお家に行って遊ぶこともあった。

出かけて遊んでいる時は、藍翔は同年代の子供などが寄ってくる。けど、人見知りな彼は打ち解けられないし、喋れない。

ある日いつものように親に内緒でお家に言って遊んでいると涼来が突然仁王立ちで言い放った。

「…今日からしぃが、アイくんをしぃがぷろでゅーすします!」

「………ぷろでゅーす??」

「そう!あいくんはかっこよくてかあいいから、あいどるなの!だからあいどるになるです、あいくん」

その一言から涼来による藍翔をプロデュースすることが始まったのだ。最初は涼来以外と喋れるようになることから初め、可愛い言動や行動をすることの練習をした。そうしたこともあり、小学校に上がる頃には涼来以外の人の前ではアイドルアイくんを、みんなの望むアイくんを演じていっていた。

「アイくん〜、可愛い〜♡」

「…ありがとう。でも僕より君の方が可愛いよ?」

こんな小っ恥ずかしいセリフをサラリと言ってのけるが彼は、本当は人見知りだと言うことを忘れないでほしい。ただ、誰かと会えばアイくんスイッチが入るが、一定の時間が経てば演じているのも疲れ、切り替えが必要。そんな時の気をぬける唯一の癒しがプロデューサー涼来。彼はスっと居なくなり図書館にこっそり隠れるようになった。それが彼のオフにしたいサイン。涼来が探し当てると彼は甘える。

「しぃ〜ちゃーん、疲れたよー。(いや)して」

「……はいはい。お疲れ様アイくん。藍翔に戻っていいよ」

「…はァァ〜、やっぱしぃちゃん好きだなぁー、落ち着く」

2人きりになったときに癒しを求め甘える。告白したって涼来は答えてくれやしなかったが。それでもよくって、癒されてまたみんなのアイくんに戻れていた。

「あいくんのずっと息抜きの場所になるからねしぃは」

しかし「ずっと」と約束をしたはずのプロデューサー涼来は、小学校3年の頃に引っ越してしまった。それから癒しなしじゃ演じきれず、不完全なアイドルなこともあった。

みんなの望むアイくんを演じるのに疲れ、素の姿である臆病なヘタレでメンタル弱い藍翔に戻りつつある時、一通の手紙が届いた。

『藍翔くんへ

あいくんのことだからしぃが居なくなって、“アイくん”を演じきれてないんじゃないかな?

でもね、あいくんなら“アイくん”をもう1人でも演じれるよ。あいくんなら大丈夫。できるよ。やれば出来る。ずっと遠くから応援してるよ。

あとね、あいくんは本当にアイドルになれるんじゃないかな?なれたら頑張って!応援する!涼来がなんたって“アイくん”のファン1号だから!涼来より』

励ましの言葉が(つづ)られたその手紙に勇気づけられて、またみんなのアイくんを演じれるようになった。そして疲れたら癒されるため、手紙を読んだ。さらにその手紙に背中を押されアイドルになることを決意。オーディションに合格し、アイドルとして一緒に合格した“しゅん”とデビューすることに。


「……そんなわけで、しぃは俺をアイくんにした原点なわけ。これはそのしぃから来たもの。字でわかる。内容も涼来らしいよ」

「あぁ、あのよく読んでる手紙の子か!その彼女は、どこに帰ってきたん?わかるの?」

「…………それは分からないけど、近いうちに俺の前に現れると思う」

嬉しそうな藍翔を見守ることしか出来なかった。そしてその相手が彼女として紹介されてもこんな顔されちゃ否定出来ないと、まだ先のことかもしれないのにそう思ってしまった。

手紙を機に藍翔は演じている“アイくん”さらに磨きがかかり、ファンを魅了した。

「……藍翔、なんか色気が増した?あの手紙がやっぱ動かしてる?」

「うん、あれが“アイくん”を変えたんだよ。いつでも変えるのはしぃなんだ」

相棒のしゅんにもわかる。ファンを魅了させることを普段の藍翔には想像つかないくらいする。それが“アイくん”。



アイくん達は久しぶりの学校にいた。彼らはアイドルなんてしているが、本業はまだ学生。学校は芸能科と普通科とあり、彼らは芸能科。

「…え、アイくん達よ!久しぶりじゃない?!やばいときめく!かっこいい♡♡」

「アイくーん!」

呼ばれればにっこり微笑んで手を振る。毎度の神対応。なんたって学校だろうと“アイくん”だから。

「……神対応最高!アイくんの対応も最高だけど、なんか転校生来るらしいよ?女の子!可愛い子かな?」

「あー!知ってる。なんか背の小さい子でしょ。可愛いって噂だよ〜」

女子の噂話に耳を傾けていた藍翔はその転校生が涼来だと確信した。自然と笑みが溢れる。後で会いに行ってやろうと密かに思う、、、がヘタレでそんな勇気もないが。



昼休みアイは1人図書館に向かった。図書館は芸能科と普通科の間にあり、両方の生徒が行き来するが、出入りして良い時間が決まっているので、接触出来る時間がないようになっては居る。昼休みはとくに出入りする人は居なく、藍翔はよく来ている。

「……あ。やっぱここに居た」

「……しぃちゃん!?」

「うん。久しぶり。藍翔くんは元気してた?」

ほぼ1人だし、ここに来る人は相棒くらいだと思っていた。女の子の声、なんだか聞き覚えのあるその声に振り返れば懐かしい顔。

「……しぃぃぃちゃ〜ん!元気してたよ〜、しぃちゃんも元気そうで良かった〜!」

「うん。……相変わらずだね藍翔くんは」

「……うん。朝ね、普通科の女子が転校生来るって話してて直感でしぃだって思ったんだよね。そしたらやっぱそうだった。当たってる?転校してきたの?」

周りに居ないから“アイくん”には想像できないような猫なでなで声が出てくる。猫のように抱きついてスリスリと甘える。

「うん。そうだよ、今日からここの生徒」

「……やっぱり。でもしぃちゃん、ここは暗黙のルールで時間が決まっているんだよ?今は芸能科の時間」

「……知ってる。だからこっそり来た。藍翔くんはここに居るって思ったから。しかもねこの端っこに」

クスクス笑いながら涼来は言った。

昔も確かに演じるのに疲れて涼来に癒して欲しいときに図書館の隅にこっそり隠れに行って弱虫な、ヘタレくんに戻っていた。

「………さすがしぃちゃんだな。最近はしゅんしか見つけに来なかったから嬉しいよ。でも俺はアイドル。だから接触禁止なんだよ?ここにもう来ちゃダメだよ?」

「………良い相棒に恵まれてるね。そうか〜あいくんはもうしぃと会えなくて平気なんだね〜。じゃ、今日でさい……」

「わぁー!それはないよ〜しぃ〜ちゃ〜ん!酷いよー!そんなこと言わないで、あいくんと会ってよ、癒して。しぃちゃん近くにいるなら癒して…」

涼来もずるいのは分かっている。こう言ったら藍翔が「わかった」と返事が出来ないの分かっていて言っている。彼女も、もう離れたくないと思っているから。

「……あはっ。やっぱあいくんは変わらないや。分かったいいよ、でも学校は会えないよ?」

「………じゃ、しぃちゃん家に行く。どこ?」

「前住んでたマンション。階が違うの…701。……待ってるね、じゃあね」

約束をして、そっと涼来は図書館から出る。必要以上の会話は出来ないからだ。いつ先生や生徒が入ってきて見つかるか分からないからだ。



約束はしたが、再会したあの日からまだ行けていない。仕事が忙しく、行けそうな時がないのだ。それでも少し会えたことにアイくんのモチベーションは上がっていた。

「……藍翔。この収録終われば、今日は終わり。早く終わらせて帰るぞ」

「あぁ。もちろん」

今日は今収録が終われば早く帰れそうな目処がついた。だったら意地でも早く終わらせて涼来に会いたい。それが本音。いつも以上にスイッチがはいる。藍翔の熱意は相棒にも伝わる。瞬翔も早く終わらせて帰ろうと。久しぶりに早く帰れるから。

「……それでは、Twin(ツイン)(しょう)のお2人です。どうぞ」

司会の声にTwin翔の曲がかかり、歌が始まる。2人はファンが楽しむためのツボをよく知っている。いかにして魅力を出すか、ときめかせるか。歌って踊ってかっこよく、アイドルを演じる。ときに可愛さも出して。早く帰りたいがそれ以前にファンを楽しませるのが仕事。丁寧にこなす。自分たちの出番が終わると、後数組のアイドル、歌手が歌い今日の歌番組は終わる。そうしたら帰れる。2人はそれしか頭にない。質問されることは承知で他も考えているが。

収録が終わると一目散に帰ろうとする2人。

「…お。きたきた、アイ、しゅん、これから飯行かねぇ?」

一緒に出演していた先輩に声をかけられた。2人は迷った。だが、藍翔の答えは決まっている。

「………先輩すいません。今日はダメです。俺、約束があるんです」

「……なんだ。アイはダメか、しゅんは?」

「………俺はいいですよ、とくに用事ないんで」

藍翔はずっと早く終わるこの日を待っていた。だから先輩の誘いに乗るわけには行かない。約束をした彼女の元へ。

「…じゃ、先輩。また今度誘ってください。本当にすいません!」

「あぁ。アイ!今度は来いよ!」

「…もちろんです!さよなら先輩。しゅん!またね!」

挨拶をして藍翔は後にした。たぶん瞬翔に後で文句言われるかもと思いつつ、でもやっと約束を果たしに行くことでいっぱいだった。

「……アイくん。」

「……マネージャー……?」

急いで向かおうとする藍翔にマネージャーから今度は声がかかる。

「……アイくん、例のあの子の所行くんだろうけど、十分気をつけて」

「うん。分かってる。ありがとう」

心配してくれる、マネージャーにお礼を言うと今度こそ後にする。忠告通りに気をつけて。とは言うものの涼来のマンションは今は住んでないが実家と同じところ。

「……しぃ、お待たせ」

「……うん。遅くても良いからくればよかったのに。相変わらず真面目だなぁ〜」

「うん。でもしぃちゃんに悪いなって思って。と言うか、癒してよ〜しぃちゃん〜俺あの日約束してからずっと頑張ったんだよ〜」

入れてもらうなり、アイドルスイッチはすっかりオフになり甘える。

「ふふっ。はいはい、リクエストは?」

「……うーん、なんでもいいの?じゃあ、久しぶりにしぃちゃんの手料理食べたい!オムライス!」

「わかった。待っててすぐ作るよ」

お互いの両親が共働きで、居ないことが多く2人は互いの家に行き来することが多かった。その為昔は涼来が、料理など藍翔に振舞っていたこともある。久しぶりの手料理はとても懐かしく、美味しかった。

「……さすがしぃちゃん。美味しい」

「そりゃもちろん愛情込めてますから」

「……ありがとう」

久しぶりに愛情のこもった温かいご飯にありつけた気分は最高に良かった。こんな温かいご飯を食べられるなら、毎日でも食べたい。けどそんな訳にも行かない。藍翔はアイドルである。そう簡単にも行かない。会いたいってときに会えないのが現実。

「……しぃ、また俺が来れる時、作ってくれる?」

「もちろん」

「……ありがとう。じゃあ今度は連絡するから教えて」

また会えるように約束をしてくれればまた藍翔はそれで頑張れる。アイドルとして。世界中を笑顔に。世界中を虜にさせるつもりで演じるんだアイドルを。


藍翔は今までアイドルとして歌番組や、バライティ番組にはよく出演し、“アイくん”を演じることはいとも簡単に出来ていたが、ドラマで演じる事はずっと避けて通ってきていたが、まさか、断ることの出来ないドラマの撮影を余儀なくされるとはこの時は思っても見なかった。

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