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人形劇

「ぶつけ……?すみません、どういうことでしょうか」


 ギュナは、首を傾げコーに尋ねた。



「ああ。逆賊共は、まず、腰を落ち着けるところを探すだろう。

 血気に逸った奴らが、自分たちで拠点を立てるなんて高尚なことはするわけはない。


 そうなると、手頃な集落を襲って、そこを拠点とするのが手っ取り早い―――。


 メラムトオーク族の本隊は、マズトン攻めで手が塞がっていると知っているんだから、逆賊は安心して暴れまわるはずだ」



「な、なるほど。つまり―――、メラムトオーク族として、前もって目をつけていた集落を、逆賊たちが先に襲って奪う可能性がある……ということですか」


「ああ、そうだ。ちなみに、どこを襲うつもりだったんだ?」


「はい、丁度メラムトオーク族の集落と、マズトンの真ん中ほどにある集落です。

 キリレア、というエルフの集落でした。人口はおよそ3千人と少しだったと思います」


 それと、とギュナが付け加える。


「この辺りのめぼしい集落は、ほとんどメラムトオーク族が制圧してしまいました。

 従いまして、ある程度の規模を保っている集落は、もう数少ないはずです」



「ならば、逆賊はそこを襲う可能性はさらに高まるわけだ。


 ……さて、ここで朗報だ。マズトン騎士団の奴らは、オーク族の兵隊が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そして、もしこの状態で、マズトン騎士団に、()()()()()()()()()()()()()()()()とどうなると思うか?」



 コーの目が狡猾な色を帯びる。


 現在、マズトン騎士団は、目下の敵をメラムトオーク族と定めている。

 彼らは、オーク族の手強さを分かっているため、おいそれとは手を出してこない。



 だが―――、その宿敵が、4()()()()()()()()()、集落を襲う、ということが、()()()()()()()()()としたら?



 戦の基本は各個撃破だ。相手の勢力が4千人程度であれば、一気に叩けば圧倒できる、と考えてもおかしくはないだろう。



 つまり―――、この策が上手く嵌まれば、オークの逆賊とマズトン騎士団で潰し合わせることができる。


 もし、策に掛かり、逆賊と騎士団で殺し合いをしてくれたらしめたものだ。

 こちらとしては、不満分子を排除したうえで、敵勢力を削ぐことができることになる。



「な、なるほど!とても良い策に思えます……!」


 チェチーリアとギュナは喜びの色を顔に出す。



 しかし、テレサは渋い顔のままで口を出した。


「まあ、そりゃその通り行きゃええが、実際理想論もええとこやで。

 まず、逆賊が本当にキリレアって集落を襲うか分からんし、マズトン騎士団に告げ口したとしても、信じるかどうか分からんし、信じたとしても、攻撃しに行くかもわからんやんけ」


 コーはそれには逆らわず、素直に頷く。


「ええ、ですからこれはあくまでも上手くいけば、の策とはなります。


 しかし、この策を成功させないと、ジリ貧となるのも確実です。

 もし仮に、逆賊がオークの集落へ攻めて来たら?そこで消耗したところに騎士団が攻めて来たら?……我々に残された選択肢は多くはありません。


 また、急がないと手遅れにもなりましょう。何せ血に飢えたオーク達ですからね。いつ集落へ襲撃を掛けるか、分かったものではありません」


「まあ、そうやわな……分の悪い賭けやが、突っ張るしかあらへんか……」



 テレサは、決心した。

 マズトン騎士団を操り、オークの逆賊とぶつけ合う―――。考えてみるととても面白そうじゃないか。



「さて、そうすると、キリレアへマズトン騎士団を呼び寄せやなあかんが、それはどうする?」


 コーは、少し考えて、口を開く。


「それは集落の者に言わせるのが一番でしょう。我々”融解連盟”の誰かが、()()()()()()としてキリレアの長老かなんかに告げ口すれば一発だと思いますよ。


 現に、他の集落はオーク族に蹂躙されてきたのですから、危機感は十分にあるでしょうしね」


 コーは、ちらり、と二人のオークに視線を向ける。


 二人の少女は、気まずそうに俯いた。



「キリレアの長老からマズトン騎士団へ陳情を行い、騎士をキリレアへ派遣してもらう、と」


 二人のオークを特に気に掛けず、テレサは話を進める。


「ええ。先ほども申し上げましたが、マズトン騎士団の目下の敵はメラムトオーク族です。少人数のオーク族を叩ける機会とあれば、騎士団が出陣する可能性は十分ある、と思います」


「ふむ。ええやろう。その作戦やったら、万が一上手くいかなくても、うちらに掛かる被害も少なそうやしな……」


 テレサは頷く。


「では……、キリレア長老への口利きは、コーがやってくれるか?考えたのもあんたやし、一番うまくまとめてくれそうやからな」


「ええ。発案したのが私なのですから、当然文句はありません……。


 さて、お嬢さん方。この冴えないハーフゴブリンめを、キリレアへご案内頂けますかな?」



 コーはおどけて恭しく腰を折る。


 チェチーリアとギュナは、慌てて椅子から立ち上がり、頷いた。

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