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6話:暗躍と地下闘技場

「親方、よかったんですかい…?」


意気揚々と出ていくアノンの後ろ姿を見ながら、

部下たちは複雑な気持ちでガルガヴァンに問う。


周囲にはチンピラたちの倒れた山と破壊された内装の残骸。

20人はいた部下たちが、圧倒間にただの子供に蹴散らされたのだ。


一応貧困街の裏を牛耳っていると言っても過言ではない

自分がこのまま舐められたままでいいのかということを言いたいらしい。


部下の問いかけにニヤリと笑ったガルガヴァンは言った。


「別に俺らが、わざわざ出ばる必要なんてないんだよ。相手側からあの地下闘技場に出るって言ってんだ。そこできっちりと落とし前はつけさせるさ。地下闘技場の恐ろしさとくと味合わせてやる。」


“さすが親方っす”という部下の声はガルガヴァンに聞こえていない。

彼の頭の中ではどう盛り上げる要員としてアノンを利用するか。


その血肉、を無駄なく使いこむ算段を考える。

心に昏い気持ちを発生させながら。


「せいぜい覚悟しておくんだ。

このガルガヴァンをコケにしたらどうなるか思い知らせてやるぜ。」


もう見えなくなったアノンに向けて呟くのだった。


その日の深夜、すっかりと日が落ちた貧困区街。

人っ子ひとりいなくなったその薄暗がりの路地裏。


フードをかぶった二人組が会話をしている。


黒いフードに身を包み、ほとんどその姿を視認することはできないが

差し込んでくる月明かりに照らせられて、その素顔が少しだけ垣間見える。


一人は凛とした意志が強そうな女性、フードの隙間から

昏い紺色の髪がかすかに見える。もう一人は黒髪で黒縁の眼鏡が見え温和な笑みを浮かべた女性。


どちらも周囲を確認しつつ壁越しで、相手を視界に入れないように会話をしていた。

その彼らの足元にはアノンをガルガヴァンのところまで案内をして部下の三人組が

白目を向いて倒れている。


「…ふむ、大した情報は持っていなかったな。」


一人がそう言うと、視線を倒れている三人へと向ける。


「すみません、イゾリア教官の予想通りでした。

 所詮はチンピラ大した情報があまり聞けませんでしたね。」


もう一人の声色に若干の残念さが滲み出る。

その会話は横で伸びているチンピラ三人の様子など点で気にした様子もない。


「それでは…イゾリア教官、定時報告をお願いいたします。」


ほとんど聞こえないような小声で、

囁くように笑みを浮かべた片方のローブ姿の人間が喋った。


「うむ、……ガルガヴァンの屋敷に潜入。…地下闘技場の次の開催日程が3日後であることが判明した。

 開催に合わせて我々も動く。部隊編成の手筈を。」


「了解しました。摘発は作戦通りということで、準備を進めておきます。」

「ああ…頼んだぞ、ミナリス副官。私も大会リストへの参加はうまく滑り込めた。」


「さすが教官!これなら今回の任務、簡単に終われそうでよかったですね。」


「…最後まで油断は禁物だが、相手は所詮裸の王様だ。

一国の軍事力には勝てまい……それより無駄話はここまでだ。そろそろ切り上げる。」


「了解しました。ではご武運を……」


片方の人間の姿が確認し、イゾリアと呼ばれた人物は動き出す。

周囲を気にしつつ、さらに別の暗がりへと入っていく。


暗がりの奥まで進むと小言で何かを唱え、軽くかがむ。

その瞬間、2階以上はある建物の屋上まで跳躍を見せた。


夜風が踊り、その人間の頭のフードがペラりとめくれる。


キリッとした美形な女性、昏い紺色の長髪が腰まで伸びている。

気の強さと凛々しさを表したその風貌は一種の神々しさを感じさせるようだった。


バサバサと風で煽られる髪を片手でおさえ、


「あの、アノンという少年。一体何者だ…こちらも少し調べる必要がありそうか。」


ボソリと彼女はそう呟いたのだった。


地下闘技場での興行当日夜。

なんとかバーバルの口添えによってシスターに若干怪しまれつつも

今日を迎えることに成功したアノン。


今日はバーバルのところに泊めてもらうということをシスターに伝え、

ガルガヴァンの部下に案内された地下闘技場まできている。

そして現在は選手の個別控え室へと押し込まれていた。


この部屋からでも観客の歓声と地鳴りが定期的に響く、

トーナメント戦の試合はすでに始まっているらしい。


どうやら参加者はかなり厳選しているらしくアノンを入れても

8人程度しかいないとのことだった。


強面のおじさんに部屋で待っておけと言われたアノンだったが、

「あー、あー落ち着かないなぁー」


ぐーるぐーると同じところ何周もしている。

それもそのはず、いくらある程度腕っぷしがあるとはいえ、

観客の前で、見せ物ように扱われる試合など初めてなのだ。

ただでさえ、戦闘に関しては素人同然。今までもたまたまの勝利がほとんどだ。


それでもーーーー


「でもとりあえずは一勝を目指す…」


歩きながらも、とりあえずは1勝ということを胸に刻む。

初戦敗退では何も得れずに終わりなのだ。

それではここまでリスクをとって出場した意味がない。


誰が相手であろうと、勝利を勝ち取る必要があった。


しかし目下の疑問としては


「でも、僕以外の人ってどんな人たちなんだ…」


試合に参加するにあってアノンは事前情報などは全く知らされていない。

それどころか組み合わせ表も見ていなかった。


これはガルガヴァンの故意に見せないようにしたのだが、自分の周り以外、あるいは大切な事柄以外に関しては全く無頓着なアノンにとっては見たところで何も変わらなかったかもしれない。


無駄にウンウンと思案していたアノンだが、それを遮るように部屋の扉が叩かれる。


「はい…」


とアノンが返事をすると、扉が少し開き、


「おい、7番。出番だぞ…」


運営の男にそう声をかけられる。


“ついにきた…”


そう思いながら、アノンは

男に連れられ部屋を出ると、暗がりの大扉の前に立たされた。


「そこで待っておけ。そのうち扉が開く。開いたそのまま中へ入っていきな」


それだけ説明すると男は後ろに下がっていき、残されたのはアノンのみ。

自分の心臓の鼓動がドクンドクンと鳴っているのがわかった。


そして扉が凄まじい音を立てながら、


上昇していく、それとともに明かりが、言葉にならない観客の声がアノンの耳にどんどんと届いていくアノンの足そして胸へと光が照らし始め、



そして━━━━━━


ストック分は毎日お昼の12時に投稿します。(予約投稿機能を使用しています。)

どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。


ブックマークや評価は作者のモチベーションにもなりますので、

もしよろしければ、何卒お願いいたします。

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