表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

1話:日常と貧困区街

数年ぶりの新作です。

ゆったり投稿出来たらいいなと。


どうぞよろしくお願いいたします!

イーデン皇国<<貧困区街>>

人生の終着点、そのそんな風に揶揄される。

始めからそこにいる人間はどうすればいいのか。


そこにいる人間は、そんなこと気にも止めない。

全てを諦めている。ただただ今日を生きる為に、働くのだ。


そんな変わり梅しない区街の朝、


アノンはいつものように日雇いの仕事に精を出していた。


周辺では珍しいその風貌、黒髪にところどころ薄くシルバーメッシュの入った短髪に、

無害を貼り付けたような顔、目元は優しげで凛々しく、将来は期待させる顔立ちの少年。


腕には少年の10倍はありそうな程の細長い鉄鋼を何本持ち運んでいる。

いったいその細腕のどこにそんな力があるのか。気になるほどに。


そのアノンに3人組の少年が近づいていく。

周囲の人間が”またか”とアノンから遠ざかったのがわかった。


それに気づかないアノンは屈んだ状態で、

小さな部品の整理を始めた。


でっぷりとした二人の子分と

間にリーダーらしき少年を真ん中に据えた少年達が彼を囲むように立つ。

服装もアノンとは異なり、しっかりとした身なりをしているおり、ここの住人でないことは一目瞭然だ。


そこで初めてアノンは囲まれたことに気付いた。

手元が影になり、作業に集中できなくなった為だ。


その真ん中の少年が、そんなアノンへ声をかける。

「おい、白髪」


「……」


しかし、その声に反応することなくアノンはその手を止めることはしない。


「おい、ボーレンさんが声かけてんだぞッ!挨拶しろ」

「そうだそうだッ、挨拶しろよッ」


二人の子分が囃し立てるように騒ぐ。


それをボーレンと呼ばれた少年が騒がしいぞ、

とでも言うかのように左右の二人を手で制した。


「おい、白髪。俺の父さん、皇国の財政部門に勤めてるんだ。お前のとこの孤児院、経営が厳しいらしいじゃないか。これ以上、寄付が集まらないとどうなるのかなぁ〜」


その言葉に初めてアノンはピクリと反応を見せる。


アノンにとってその話は初耳であった。

そして彼らは自分がお世話になっている孤児院について何か情報を知っているらしい。


孤児院を運営しているシスターの口からそんなこと言葉は聞いたことがないが、

0ではない可能性を考えてアノンの体は思わず反応してしまう。


それが彼らに付け入る隙を与えることをアノンはわかっていた。

この嫌がらせまがいの行動をアノンは幾度も受けてきたのだから。


アノンが示した反応に

ボーレンは自分の広角が上がるのが分かった。


このいけすかない小僧の弱みを掴んだと彼は思った。

昔から弱い奴をいじるのが好きだった、それは彼自身が自分を強く見せようとする虚言ではあるのだが、

そんなこと彼は気づかない。


「お前、土下座しろ。そうすれば俺が父さまに掛け合ってやってもいいぞ。

助けて下さいってそういえよ。」


ニヒルな笑みを浮かべて、ボーレンはアノンの周囲を歩き回る。

二人の子分は土下座・土下座と囃し立てるように騒ぎ出した。


周囲にはアノンと同じように仕事に従事している人間がいるが、

その誰も彼らの行動に我関せずといった形で無視を貫いている。


「―い」

ボソッと、アノンから呟かれた言葉、誰も聞き取れるものはいない、


「ああん、何言ってんのか聞こえねぇぞ」

「そうだ、そうだ聞こえねぇぞ」


二人の子分が耳を傾けると、

はっきりとした声でアノンは口を開いた。


「土下座、しません。」


まさか断れるなんて思いもしなかったのだろう。

アノンの言葉に固まる二人。


「おまえ―――」


アノンに駆け寄ろうとした一人、しかしもう一人のよって抑えつけられる。


「な、なにすんだ―――」


その言葉に振り向いた子分がボーレンの表情を視界に捉えた瞬間、言葉を失う。

そこには怒りの形相をしたボーレンの姿があったからだ。


子分二人の間「どけ」とでも言うかのように押し広げ、

アノンの胸ぐらを掴み、 思いっきり殴りかかる。


「ぐっ…」


無防備なアノンは抵抗することもなく、その場に倒れ伏す。そんなことお構えなしに

ボーレンが上から乗りかかりその拳が振り下ろされる。


鈍い音が辺りに響き続ける。

二人の子分はボーレンの所業に震えるように固まっている。


どのくらい経過したのか、

ぷッと腫れ上がったアノンの顔にボーレンが唾を吐きかける。


「ゴミが、俺に逆らうんじゃねぇ…!」


苛立ちを隠せない、

ボーレンは「ふん」とアノン状態に満足したような顔でその場を後にした。

二人の子分はそんなボーレンの後ろを恐る恐るついていく。


嵐が去ったかのような静けのなか、

その場に残されたアノンのくぐもった唸り声が聞こえる。


殴られるのは慣れている、そして思った以上に体がダメージを受けていないこともアノンは経験から知っていた。


「今日は琴戦に触れてしまったかぁ、失敗したなぁ。」


うまく言い逃れて、興味を無くしてくれれば今日見たくボコボコにされることもないのだが、

孤児院のことを言われて考える前に頭が体が反抗してしまった。


シスターの言葉が脳裏によぎる

“その力は、自分の身に危険が迫った時に使いなさい。むやみに見せびらかしたらしていけません。いいですね、約束ですよ”


「分かってるよ、約束だし。でも…」


アノンは怖かった。自分にだけ降りかかる災厄であれば、

彼は甘んじてそれを受ける。しかし今の彼には守りたい場所、守りたい人たちができてしまったのだ。


それを害されることを想像しただけで、アノンは自分自身に恐怖してしまう。自分でない自分が暴れ出すようなそんな感覚。


仰向けに寝転がりながら空を見上げる。

そのまま数分じっとすると、まだ立ちくらむ体を揺らめかせきながら、

アノンは何も意に介することなく、作業を続けたのであった。


恐怖を、何かを振り払うかのように作業に集中した。


ストック分は毎日お昼の12時に投稿します。(予約投稿機能を使用しています。)

どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。


ブックマークや評価は作者のモチベーションにもなりますので、

もしよろしければ、何卒お願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ