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魔王は転職してYouTuberになりました

作者: 非課金さん

魔王は部下に裏切られ、別世界に飛ばされた。

今、魔王は東京で一人暮らしをしている。職業はYoutuber。


この世界では魔力が制限されている。そんな状態で世界を支配できようか。

まずは影響力が必要だ。そう思ってアルバイトの片手間にセミナーを開いてみたり、

路上でスピーチをしてみたり、芸能事務所にも売り込みした。


だがどれも上手くいかなかった。


最後の手段として、はじめたのがYoutubeだ。

毎日投稿を欠かさずしていたがなかなか成果が実らなかった。

だが、一つの動画がバズったのがきっかけで、魔王は

有名なYoutuberへと転身したのだ。


記念すべきその動画のタイトルは


「スライム作ってみた」


ありったけの魔力を駆使してスライムを生成したが、

魔力を使い力尽きた魔王をスライムが襲う。


そのせいで死にかけたが、そのリアリティに視聴者からは

大ウケだったようだ。


今でも、「あのスライムどうやって作ったのですか?」

とか「すごくリアルなCGでしたね!」

とファンからのコメントを貰っている。


その動画で味をしめた魔王はそれからも自身の経験を活かした動画を毎日投稿し続けた。


「ポーション、作ってみた」

「魔界のモーニングルーティン」

「勇者のくせになまいきだを本人が実況」


どの動画も絶好調だ。

魔王は世界征服の趣旨を忘れ、夢中でYoutuberとしての人生を楽しんでいた。


ただし、いつまでも安楽の人生は続かない。

Youtuberが必ず通るいばらの道を魔王はくくらなければいけなかった。


魔王の動画が炎上した。


きっかけはとある料理動画を投稿したことだ。

「魔界チュロスの作り方」という動画を魔王はあげた。レシピを真似して

作り、腹を壊した視聴者が続出してしまった。


「ネタとして投稿しているんだから真似して食べる方がおかしい」

と庇うコメントもあったが、この動画をきっかけに多くのアンチを抱えてしまった。


毎日のように批判中傷コメントを目にすると気力がどんどん奪われる。

魔王はその日を機に落ち込むことが多くなった。それでも投稿は毎日続ける。

落ち込んだ状態で投稿するから、動画のクオリティも低くなる。

そうしたら余計に視聴者からの批判が増える。負のスパイラルに陥ってしまった。


今、異世界での魔力が残っていたらアンチ全員の毛穴から血が噴き出る呪いをかけたいくらいだ。



嫌気をさして魔王は動画投稿をやめた。



動画配信をしないこと一ヵ月、ただただ、今まで貯金したお金を切り崩して家に引きこもる。

時々、コンビニに必要な物を買っては家でだらだらと過ごす。

もはや自身が魔王であったことも、Youtuberであったことも忘れそうだ。


月日がたち、魔王はポストに何かが入ってることに気付いた。

新たなる嫌がらせだろうか?炎上したあの日から、住所も特定されて時々家に見覚えのない荷物を送りつけられたり、落書きをされたりといたずらが絶えない。


ポストを確認すると、中にあったは一通の手紙だった。


魔王は手紙をもって部屋に戻る。

正直中を見るのが怖かった。また心ない言葉で傷つけられるのだろうか。

恐る恐る封筒を開き、中の手紙に目を通す。


魔王さんへ


はじめまして、魔王さんの私はファンです。

魔王さんがスライムを作ったあの日から、ずっと応援していました。

私は学生ですが、人間関係に上手くいかずいつも学校に行くのが辛かったです。

もう何もかもが嫌でしょうがなかったです。


そんな中、魔王さんの動画を見るのが毎日の楽しみになりました。

馬鹿馬鹿しいことをやって笑いを届けてくれる魔王さんの動画を見ているとき、

私はとても幸せです。


最近魔王さんの動画が見られなくなって心配です。

その後どうされてますか?無理せずに、また動画で魔王さんの動画をみれることを

楽しみにしています。


魔王は手紙を何度も、何度も読み返した。


ファンの存在がいることを改めて気づかされた。そして勇気づけられた。

手紙の送り主は魔王の動画によって勇気づけられたのと同時に、魔王自身はその人によって

動画投稿を作る勇気が与えられた。


「よし、作るか」


そう独り言を言い、魔王は新しく動画撮影をはじめた。


撮影を終え、編集に入る。

動画作成の大半は編集時間が占めるのだ。


集中してパソコンの前で作業を行っていると後ろから声がした。


「魔王様!やっとお会いできましたね!私です、しもべのアメミトです」


魔王は目を疑った。

異世界にいるはずの、魔王軍の一人がこちらの世界に来ている。


「今、こちらの世界と向こうの世界をつなぐワープホールを作りました!ワープホールは後一時間で消えてしまいます!魔王様、一緒に行きましょう」


突然の宣告に魔王は焦った。残る時間は1時間。

異世界に戻る時がきた。元の世界では部下たちが待っている。

この機会を逃したらいつ戻れるのかわからない。いや、一生戻れないのかもしれない。



だが、魔王には動画を楽しみにしているファンたちがいた。



今まで動画を楽しみにしていた人たちがいる、ということをこの手紙で知った。

視聴者を裏切り、見捨てることができるのだろうか。


答えの無い迷宮に思考をめぐらせる。

そして魔王は覚悟を決めた。


「一時間...わかった..一時間待ってくれ」


魔王は動画を改めて取り直す。

魔王はカメラのスイッチを入れた。

限られた時間でせいいっぱいの気持ちを込める。


どうも魔王です!

今回はですが、お知らせしたいことがあります。


私、魔王は本日をもってYoutuberを辞めます。

Youtubeの動画配信はとても楽しかったと同時に、辛いことももちろんありました。

動画配信を行ったことは決して無駄なことではなく貴重な宝です。


動画投稿をしている中でファンの存在を知り、私はとても嬉しかったです。

手紙を送ってくださったファンの方、この場にて恐縮ですが本当に感謝しています。


そして今まで応援してくださった皆様、今までありがとうございました



編集をする時間もなく、その動画を急いでアップロードする。


「そろそろ、いいですか?」

アメミトはワープホールの幅が少しずつ小さくなってゆくのを気にかけて言う。


「...大丈夫だ」

やり残したことはないといえば嘘になる。できれば配信を続けたかった。

こんな形で終わりになるのも少し無念だ。

あの手紙の送り主の気持ちにこたえたかった。


「では、いきましょう。早くしないとワープホールが消えてしまいます」


「ああ」


アメミトがワープホールへ向かって歩くのについていった。

二人は闇の中へ消えて行った。


~異世界~


ここはミトーレの町。そこでは勇者が仲間の騎士と酒場で話をしていた。


「で、どうだった?あの手紙は魔王に届いたみたいだけど」

勇者は騎士に向かって訪ねる


「だめでしたね。魔王をあの世界に留めるには少し弱かったかと。」


「ん~、やっぱり恋人とかできないと難しかったかなあ」

勇者はテーブルに足を置き、天井を見上げる。


「勇者さん、そろそろ正攻法で魔王を攻めた方がいいのでは?」

騎士はあきれた顔で言う。


「それだと、つまんないじゃん?」


「相変わらず性格悪いっすね...魔王の動画にアンチコメントを書きまくったのもあなたの指示ですし...」

付き合っていられない、という顔をしながら騎士は酒場から出て行った。



「さーて、次はどうしよっかな~俺もYoutuberやってみようかな」


酒場で勇者は独り言を言う。



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