四月一日異世界帰りの物語。
「俺の名前は四月一日である!」
「いや、知ってるけど急にどうした」
「今日は四月の一日だぞ」
「知ってるけどそれがどうした」
「つまり俺の日と言っても過言では無い」
「いや、過言ではあると思うがそんな誇大妄想をもってしまっても仕方がない気はするな」
「なんかお前俺に厳しくないか? 俺の事そんなに嫌い?」
「いや、特別嫌いと言う程ではないが」
「好きではないと?」
「好きって言って欲しいのかよ」
「当然だろう? 俺が異世界からやっと帰ってきて平穏な生活を送れるようになったと言うのに久しぶりにあったお前は昨日別れたばかりくらいのノリで、よう久しぶり。とか言うしさ」
「……」
「なんで黙る? もしかして実は寂しかったとか? そうだよな……急に俺が居なくなったんだから寂しくないわけないよな」
「あーすっごくさみしかったなー」
「その棒読みも照れ隠しと受け取っても?」
「良くない。が、まぁいいだろう。お前の異世界冒険記を聞かせてくれよ」
「むっ、そうかそんなに気になるのか。ならば話してやろう。アレは異世界に行ってすぐアウストロロピテクスにて……」
「なにその名前」
「名前忘れたから今考えた」
「あっそ、続けて」
「アウストロロピテクスで奴隷のように値札をつけられ売られていた女の子が居てな、その子が俺の目の前で脱走したんだ。俺は売ってた爺に頼まれて追いかけた。しかしその子の目を見たらとても元いた場所に返す事なんて出来なかったよ」
「……」
「疑ってるのか? それとも嫉妬か? 俺が女の子と仲良くしてたと聞いて腹が立ったのか?」
「いいから続けろ」
「ふむ……その女の子は俺にベタ惚れでな。まるで盛りのついた犬のように尻尾を振って付いてくるわけだ」
「なるほど」
「だから俺は尋ねたね。あなたの帰るべきお家はどこですかってな! 傑作だろう?」
「いや、ちょっと何言ってるかわからないですね」
「それでな、何も分からないみたいだから俺も必死にその子の家を探してやったのさ」
「ふむふむ、それで?」
「結果的には全く見つからなかった。俺達は途方にくれたよ。この子を連れて二人で逃げようかとも思った」
「それから?」
「そっからは急展開の連続よ。その子を狙う野犬のような奴に襲われたり、なぜか棒を振り回す大人に追いかけられたり、売ってた奴に捕まって有り金ふんだくられたり」
「それ異世界の話だよね?」
「そう言ってるだろ?」
「ふぅん。じゃあ続きをどぞ」
「襲い来る試練を乗り越えるたび俺達の絆は強くなった。そりゃもう離れられなくなるほどにな」
「羨ましい事ですな」
「妬くな妬くな。しかしその子の俺に対する気持ちはもう抑えられなくなってしまっていてな、四六時中くっついて離れなかったんだ」
「そりゃすげー」
「それからも一緒に生活を続ける事になって俺達はもう一線を越えていたし、このまま一緒にいる決意をした」
「なるほど。それでこっちにも連れてきたと」
「そういう事になるな」
「……君らの出会いと馴れ初めはよく分かった。」
「だから……この子を家においてもいいか?」
「嫌だと言っても飼うんだろ?」
「飼うとはなんだ! 一緒に暮らすんだぞ! 新しい家族なんだぞ!」
「はいはい。ほんとにしょうがない奴だよお前は」
「いつも苦労をかけてごめんなさい」
「で? その異世界ってのは結局どこの事なの?」
「昨日まで転勤で働いてたグンマー」
「アウストロなんとかは?」
「ペットショップ」
「お前ペットショップから逃げた犬をそのまま連れ帰ったのか? 犯罪じゃねぇか」
「いや、だから店主に捕まって有り金をふんだくられたんだってば……里親探しても誰も引き取ってくれなかったし」
「あー、そういう……」
「うん、そういう……」
「野犬みたいなのと棒を振り回す大人は?」
「ただの野良犬と警棒振り回す警察」
「……ほんとやだこの人」
「そんな俺の事を好きになったんだからしょうがないと諦めてくれよ」
「……」
「なんで無言になる? 俺の事嫌いか?」
「好きって言って欲しいのかよ」
「言って欲しい!」
「好きだよ……ばーか」
『ワンワン!』
お読み頂きありがとうございます。
ただのとあるバカップルのお話でした。
エイプリルフールなので適当やっても許されるかなと。……許して。
普段は、ぼっち姫は目立ちたくない!という長編TSファンタジー(100万PVこえたよ!)を始め、3作ほど毎日更新しておりますのでよろしければ覗いてやって下さい。
ついでに新作のおさころというカオスラブコメを是非!
余談ですが、
先日別の短編にてネット小説大賞短篇 準グランプリを受賞いたしましたやったね!
その短篇もタイトル上の作品まとめに入ってますので読んでみて下さいませ☆彡
では他の作品でお会い出来ることを祈って。