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3時のおやつ

作者: 窪宮彩

「3年後の3時にここに集合だ!忘れるなよ」

「わかった!」

そういってぼくたちはそれぞれの好きな場所に向かった。


そして3年後の3時。

時はあっという間に過ぎた。(気がする)

あいつのいない時間は何だか味気なく、あいつ以上に気の合う奴には残念ながら出会えなかった。

ぼくはあいつと別れたあの場所をめざした。

久々に通るこの道。

空き地がいつの間にかコンビニになっていたり、

あの家の吠えていた犬もいなくなり、

あたりまえの景色が少しずつ変わっていてさびしい気持ちになった。

そしてようやく目印のあの角まできた。

あとはひたすらまっすぐいけばあの場所にたどり着く、、、

はずだったけど、あれっおかしいな。

角を曲がってまっすぐ行ったのにそれらしき場所が見あたらなかった。

その場所は、森のようなうっそうとした木々がある廃墟で、

好奇心旺盛のぼくたちにはいつまでも飽きない格好の遊び場だった。

それが今は立派なマンションが建っているではないか。

「3時まであと5分」

今ぼくの目の前を通ったおじさんがつぶやいた。

あいつは、残念ながらまだ来ていない。

はたしてこの場所に来るのだろうか。

ぼくは仕方なくマンションの前の隅っこの階段であいつを待った。


「3時だ。おやつの時間だ」そういいながらどこからともなく子ども達がマンションの中に入って行く。

やっぱり、あいつは来ないのか。

もともとあいつは約束とか苦手だからなぁ。

「やっぱりこないか、あいつめ」ため息まじりでそうつぶやいた時、後ろから声が聞こえた。

「誰が来ないって」

あ、この声は聞き覚えのあるあいつの声だった。

「約束は守ったぜ。ぎりぎりだったけどな」

「もう、本当に来ないかと思ったよ」

「いろいろ忙しくてよ。今日も朝からばたばただった。でも約束はずっと忘れてないぜ」

「ぼくも。おまえ以上の友達は結局現れなかった」

「もともとぼくら、ばらばら同士で気があったようなもんだからさ。まぁ、仕方がないよ」

「そうだな。でもたった3年なのに随分景色が変わったな。特にここはすごいな。あんな廃墟がこんな美しいマンションに変わるなんてびっくりだ」

「おまえは3年の間、何か変わったか?見た目は変わっていないようだけど」

「そうか?実はな、驚かないで聞いてくれよ」

「うん。分かった」

そう言ってあいつはニヤリと笑いながらとんでもない事をあっさりと言うのだった。

「おれ、1年前に死んだんだ。だから今幽霊」

「えっ?何だって!でもちゃんと手も足もしっぽもあるじゃないか!」

「まぁ、そんな事はどうでもいい。とりあえず3時のおやつにしようぜ。美味い土産を持って来たぜ」


「あ、ネコだ。かわいい!2匹いるよ。仲良さそうにおしゃべりしてる」

「え?ママには1匹しか見えないけど、、、みよちゃんには2匹に見えるのね」

「うん。楽しそうに3時のおやつ食べているね。みよも食べたい!」

女の子はネコに手を振ってゆっくりとマンションの中に入って行った。

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