↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Яe:birthday  作者: 望月 縁
序歌
1/1

piece1&??? The beginning

初投稿となります。

拙いところも多々あるかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします。


それでは、どうぞごゆっくりお楽しみください!

§



そこは、まさしく業火の渦中であった。


鬱蒼(うっそう)と茂った森の木々は、ほとんどが炎に呑まれ、地面に横たわっている。つい先程まで鬨(とき)や、怒号や、大音声(だいおんじょう)が空気を震わせていたのだが、いまはそのほとんどが無く、森本来の静まりを見せていた。



「ハァ、──ッ、ハァ…………ッ」


肩で息をする少年が一人。背後には数十人の仲間らしき人々が在(あ)った。


「まさかこれほど手こずるとはね……さすがに予想してなかったわ」


その少年に相対するのは、獣の皮を最小限身にまとった少女である。



「でも、これでもう終わり。さようなら、矮小なる人間──!!!!!」


──少女が吼え猛る──音を置き去りにした疾駆──肥大化した両手の爪を大上段より振り下ろす。


「オオオオオオオオオオオオッ!!!!!」


少年も負けじと裂帛を載せた両刀を切り上げる──己の魂たる獄炎を奔らせ──互いの命(ねがい)を賭けた大勝負──。




──双つの獲物が爆音と火花を散らした。




欲望(いのち)を掴むのは、いずれか。




§



走る。日が傾き、霧煙(けむ)る樹海の中を走る。


二つの足音と、ヒュ、ヒュ、という断続的な息がハーモニーを奏でる。


ぬかるんだ地面を踏みしめた影響で、『彼』の頬に泥が跳ねる。後方では木々が嫌な音を立てながら地に伏していた。


ふらつく足。

裂傷、擦過傷。

先ほど受けた打撲、脱臼。

痛みに喘ぐ肺──。



その全てを気に留める間もないまま『彼』は走る。荒い息が悲鳴をあげ、肺が張り裂けそうでもまだ止まれない。


生きたい。ただ、生きるためだけに止まれない。


──死神が迫ってくる。死がすぐそこに横たわっている。ゆるり、ゆらりと。

それでいて『彼』を視界という檻から逃がさず、どこまでも追ってくる。


ソレは、この世に存在するものではない。

異形の死神であるソレは、一見すると水晶でできた骸骨(がいこつ)に見える。美しさと神秘が同居したフォルム。


なのだが。



その両腕に生(・)え(・)た(・)剣(ブレード)が斬撃を生み、十数メートルも離れた標的の肉を抉(えぐ)り取った。


「────っ!!」


声にならない悲鳴をあげ、『彼』は必死の逃亡を中断せざるをえなかった。


斬撃を受けて紅(あか)く染まる背中と腰を眺める余裕も失せ、蹲(うずくま)りたくなる。だがこのままでは死ぬ。それだけは認められない。


大粒の涙を零しながら、前が見えなくなるのも構わず先へ。

汗と涙と鼻水が、顔中をぐちゃぐちゃにして離れない。



骸骨は一定のリズムで、いたぶるように、幽鬼のように迫る。


『彼』は逃げる。


迫る、逃げる。迫る、逃げる。そんな逃避行も一分と持たず終わりを告げる。




そうして辿り着いたのは、


「崖……」


視界は開けており、逃げ場はない。




死ぬ。死ぬ。死ぬ。嫌だ死にたくない。嫌だ、嫌だ、厭、嫌、厭厭厭厭厭嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌──。



もうあの怪物の方を視たくない。

なぜ自分を狙うのか?そんな当然の疑問すら答えてくれない。



この怪物が、怖い。



何より。

少年には『視える』。あの怪物の欲望が。

うっすらと視える黄色の靄(もや)と、黒い蒸気。

喜びながら絶望を追い求める、その在り方が。



「たすけて、たすけて……誰か」


恐怖に喘いで、怯えて、か細い声を出すことしかできない。


一歩一歩、怪物が──骸骨が間合いを詰める。


「SHAAAAAAA《シャァァァァァァァァァ》……」


蛇のように骸骨が鳴く。


わずかな泥すら身体に跳ねることなく、あくまで機械的(メカニカル)に。完全に『彼』を屠れるまで距離を詰めた。


両目に虚空を湛(たた)えた骸骨。

丁寧なのか雑なのか、ソレは『彼』の身体を脚で仰向けにひっくり返す。

それから迷いなく腕の刃を『彼』の心臓に突き刺した。


「ア゛───ッ…………ガァ──」


『彼』の呻きを除けば、手術(オペ)の始まりに似た、静寂と精密に包まれた光景。しかし異様な──グロテスクな雰囲気が、拭いがたくまとわりついている。


過ぎていった時間はあやふやで、数秒なのか数時間なのかも判じられないままだ。




終わったな。

という胸の内を、言語化すらできない。


骸骨の纏(まと)う黄色い靄(もや)が勢いを増すのを、少年は呆(ぼう)、と眺める。


ぐじゅり、ぐじゅり、とすり潰されながら何かが身体から引きずり出される感覚を覚え、思わず顔を歪める。


もはやほとんど機能しない視界に映るのは、赤黒い、ナニカの血を混ぜたような──泥、のようなものだろうか。

どうやらそれが引きずり出されているらしい。もっとも、『彼』がそんなことを悠長に認識する余裕はない。



「■■■■■■■■……」


倒れ伏す少年が発している、掠れた苦悶の声だけが、静かに空気を震わせる。

泥のへばりついた顔をミリ単位で上げることすらままならない。



三度目。膨れ上がる黄色い靄。すなわち歓喜。

SHAAAAAAA……と唸る声。


何度も何度も膨れ上がり、唸り、膨れ上がり、唸り。

『彼』から放出される【何か】を吸い上げて、またしても怪物が唸り、吼(ほ)える。



ただひたすらに搾取を繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して──。




ぶちり、となにかが切れる音がした。




[頭が痛い。]


……そして世界が反転する。否、世界が■■■■■■。



──青黒い球体、否、影が一つ、渦を巻いて現れた。怪物の後ろから現れたその影は、次第に大きさを増し、二メートル程度にまで膨張していく。


この場に引きずりこまれるように、或いは、自らの意思で、影を外套として馳せ参じたか。


その筋骨は隆々としている。

血を隙間なく撒(ま)き散らしたように煌(きら)めく、紅色の巨躯をぶるり、ぶるりと震わせ、一対の牛角を生やした貌(かお)。

虎の皮を腰に掛け、刺々しく禍々しい棍棒を携えた様は、この世のものではない。



「VOOOOOOOOOO!!」


大気を喰らうかのように息を吸い込み、咆哮を轟かせたのは。



鬼、だった。




──To be continued

いかがでしたでしょうか?お気に召せば幸いです。

これからも不定期とはいえ投稿を続けていきますので、興味を持ってくださった方には、ぜひとも続きをご覧いただきたいです!


それでは、また次回お会いしましょう!(´∀`*)ノシ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。