表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/295

琥珀先生の面接 前編

 季節が過ぎ、木々の葉が色づく季節になりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。私、少しだけ傷心気味なディアドラです。


 だってひどいのよ。聞いてよ。

 二年間ヒッキーやっていて友達が少ないから、精霊の育て方講座で知り合った方やノーランドでガールズトークして仲良くなった方とそのお友達を招待して、ベリサリオでお食事会して、希望者はそのままお泊り会もしようぜって計画立てたのよ。


 年上のお友達もいると学園に行くようになった時に、いろいろ教えてもらえるかなって思って、三歳くらい年上の方もお誘いしたの。

……まあ少し、お兄様達の将来も考えたりもしたけどね。

だって結婚がゴールじゃないよ。その後の生活の方が長いんだよ。だったら子供の頃から顔見知りで、相手の家族とも仲がいい家に嫁入り出来たらラッキーじゃない?

 お兄様達モテすぎて、学園でも茶会でも女の子が群がるから、誰が誰だか区別がついていないって言うしさ。それでは相手の方も可哀そうよ。


 当初は十一名が集まる予定だったのに、七日前になって四名の方から来られないって連絡が来た。全員同じ日によ。

 その四名は仲がいいそうだから、示し合わせたのかもしれないんだよね。


 私、少し調子に乗っていたかもしれない。

 この世界に転生して、今までうまくいきすぎていて、家族にも守られて、敵意を向けられたこともなくちやほやされてたでしょ。それで心のどこかで、私が誘えば相手は喜んでくれるってうぬぼれがあった。

 私の魅力がどうこうとは思ってないよ。でも私と親しくすれば、お兄様ふたりや皇子とも親しくなれるかもしれないから、だから断られると思ってなかった。

 

 でもさ一回オーケーしておいて、一週間前に断らなくたっていいじゃんね。

 何かされると思われたりしていたら嫌だな。妖精姫なんて言われているから、人間離れしている女の子なんじゃないかと怖がられていたり?

 普通の少女なんだけどなあ。


 あ、すみません。今ちょっと嘘つきました。

 でもだいたいにおいて普通の少女だよ、うん。


 はあ。あまりがっかりすると精霊が心配するし、怒って何かしでかしそうだし、ここは反省して心を入れ替えて前向きに行こう。東側お隣のブリス伯爵の娘さんのエルダ様を、ダメ元で誘ったら来てくださるそうだし、八名で楽しみましょう。


 因みに、側近になってもらったミーアの実家のエドキンズ伯爵領も東側隣で、ブリス伯爵も東隣なのは、領地の大きさに差があるからだよ。海側がブリス伯爵領で、その北側にエドキンズ伯爵領があって、ふたつを足してもうちの方が領地の東側の境界線が長いのだ。


 ともかく今日は、琥珀先生と皇帝一家の面接試験日なんだから、三日後の食事会より今日の面接と祝賀会よ。我が国にとって大事な日なのよ今日は。


 今回は午前中に琥珀先生との面談があるので、朝食後、家族揃って転送陣で学園に飛んだ。

 近衛がここから先は護衛するからと、各家の側近や護衛はついて行けない。

 この後の祝賀会があるから少数が学園寮で待機して、他は皇都のタウンハウスと皇宮のベリサリオの控室で待っていてもらう事になっている。


 ベリサリオは皇宮内に控室を持っているんですよ。さすが皇族に次ぐ家柄でしょ。控室って言ったって応接室と居室の他に執事達の使う部屋がついてるのよ。

 お父様はそれ以外に大臣の執務室もあるんだから、いらんだろそんなに。

 執事達の部屋だけで、前世の私の住んでいた家より広いよ。


 入学前に二回も学園に来ちゃって、新入学の新鮮さがだいぶなくなってしまいそうだけどしょうがない。

 寮の外の公園は、木々が色づき始めていて秋の気配に満ちていた。青い空は高く風が心地いい。


 すでにたくさんの人が公園に集まり、身分や今後の予定に応じて待機している。指示を出しているのが精霊省の人で、警護は近衛騎士団の仕事だ。辺境での精霊王との面接とは違って、ものすごい大掛かりな一大イベントになっちゃってる。

 アーロンの滝まで行けるのは、ここにいる人の中のほんの一部で、他の人達はここで森に精霊が戻る時を待つことになるんだけど、それでも参加することに意義があるのかもしれない。


 コルケットとノーランドの辺境伯一家も今日は参加している。ただし大人だけだ。

 彼らに簡単な挨拶を済ませ、指定された場所に立つとすぐ、お父様の元に精霊省の人達がやってきた。

 今日は彼らの精霊車が先導をし、次にうちの精霊車、その後に陛下に献上した二台の精霊車が続く。コルケットとノーランドの両辺境伯家も自分達の精霊車を持ってきているそうなので、この場だけでフェアリー商会の精霊車が六台よ。皇族の精霊車は魔道士長と副魔道士長の精霊が動かすんだって。


「あの、ちょっといいかな」


 声をかけて来たのは、アンドリュー皇子の側近のエルトンだ。この方はお隣さんのブリス伯爵の次男でエルダのお兄様だ。

 仕事の用事や側近としての伝言などは、身分の上下に関係なく声をかけられる。そうじゃないと仕事にならないもんね。


「どうしたの?」


 お父様が精霊省の人と話し中なので、クリスお兄様が返事をした。


「ディアが食事会にエルダを招待してくれたと聞いたんだが」

「三日後のお食事会ね。……何か問題でも?」


 え? もしかしてエルダもドタキャン?!


「いやいや、すごく嬉しそうで楽しみにしていたよ」

「よかった。ではなにか?」

「あの、三日後は……」

「皇帝陛下、将軍閣下、皇太子殿下、第二皇子殿下、ご到着!!」


 大きな声で皇族の到着が知らされ、慌ててみんな、自分のいるべき場所に移動している。


「あとでまた」


 エルトンも話の途中で駆け出して行った。


「三日後……エルダがどうかしたんでしょうか」

「なんだろうな」


 お母様もお兄様方も、エルトンが何を言いかけたのかわからないようだ。

 公爵家や侯爵家のご令嬢がいるから緊張しているのかな。


 正装で登場した皇族の方々は、特殊効果付きのように輝いてた。うん、やっぱりちょっと離れたところから見物しているのが私にはちょうどいいね。あそこに一緒に立つのはやっぱり遠慮したい。放つオーラが違いすぎる。


 皇族が通る道にはバーガンディー色のカーペットが敷かれている。私達は精霊車に一番近い場所にカーペットに沿って家族で並び、公式の行事なので、片手を胸に当てもう片方の手でスカートを摘まんで頭を下げた。


「今日はよろしく頼むぞ、ベリサリオ辺境伯」

「はっ。おまかせください」


 視線は感じるけど頭はあげず、皇族が全員精霊車に乗り込むのを待って、私達も自分達の精霊車に乗り込んだ。

 今回精霊車を動かすのはお父様の精霊獣だ。天馬なら馬車を動かす馬のように見慣れているし見た目が怖くないしね。


 精霊車の後ろに十台以上の馬車が続くので、出発するのにも精霊車の中で待機になってしまう。ようやく先頭が動き出し、公園横のロータリーになっている広場を出て一般の大通りに出て行く。

 学園内もアーロンの滝周辺も平民は入れないけど、彼らもなぜ中央の自分達のところだけ一部砂漠化したり、農作物の不作が続いているのかは知っていて、それが今日、皇帝一家がアーロンの滝に行く事で解決するという事も知らされているから、学園の敷地を出たすぐの大通りには、たくさんの人々が押しかけて、精霊車が出てくるのを道の両側に並んで待っているらしい。

 パレードですか?


 街の中に急に植林が始まれば、そりゃ何かあると思うわな。

 学園からアーロンの滝まで続く、端から端まで徒歩二十分の森の道だよ。ファンタジーってすごいよ。魔力で木々が育って、まだ三年すら経ってないのにちゃんと大きな木が育ってるよ。


 さすがにそんなに長距離で街を分断してしまうと、流通の問題が出てきてしまうでしょ。森を避けてぐるっと遠回りしてたら大変だよ。それで三カ所に馬車が通れるくらいの広さの道が通っている。

 でもそこで森を分断したら、精霊の通り道にならないって事で、上に屋根をつけて空中庭園のように土を盛って花や低木を植えたのよ。

 そしたらいつの間にか、そこに植えた木と両側の木の枝が交差して、ちゃんと森が繋がってしまった。しかもにょきにょきと上にも伸びて、三階建ての建物みたいな高さがあるんだよ。四季折々の花まで咲くんだから。

 もう一度言うよ。ファンタジーってすごいよ。


「馬車に馬がいないぞ!!」

「これが精霊車だって」

「おおお、精霊獣がたくさんいる」

「さすが貴族はすごいな」


 道の両側から飛んでくる声は、喋る人数が多すぎて全部は聞き分けられないけど、お祭り気分の明るい雰囲気なのはわかる。


「あれはベリサリオの馬車だろ」

「妖精姫は見えるか?!」

「妖精姫は透明で見えないらしいよ」

「いやいや光っているって聞いたぞ」


 え? 私はどんな生き物になっているの?

 透明で光っている……クラゲ?


 うちの馬車はレースのカーテンを閉じて、中が見えないようになっている。

 駄目よ、うちの両親とかお兄様方が姿を現しちゃ。ストーカー付いたら困るでしょ。それに私が普通の子だってわかったら、みんながっかりするわ。


「光っている……」


 家族揃って馬鹿ウケしているんですが。

 外に笑い声が漏れるんでやめてくれませんかね。


「キャーーー!! アンドリューー様!!」

「エルドレッド様、こっち向いてーー!!」

「陛下!!」

「皇帝陛下! 将軍閣下! 万歳!!」


 皇族の姿が見えたら今度は黄色い声まで聞こえてきた。アイドルか!

 いやもうすごい人気だね。この人気なのに陛下をジーン様に代えようとするって、あの宰相も無茶を考えたもんだ。


 歩いて二十分。精霊車だと五分よ。乗ったらすぐに到着よ。

 たぶんまだ、列の最後は学園を出発してないよ。


 でも最初は皇帝一家とベリサリオだけで琥珀と面会するので、私達は後続は待たずに精霊車を降り、皇帝直轄区域に足を踏み入れた。

 直轄区域って言うのは、皇族の持ち物だから許可のない者は立ち入り禁止の区域ね。皇都は当然皇族の領地なんだけど、国のための施設が多いし、皇宮だって半分以上が国を運営するための施設だもんね。


 その中で直轄区域だけは皇族のためだけの施設だったり、土地だったりするわけだ。

 ここはアーロンの滝を中心に広がる開発禁止地域で、建国当初から一切の手が加えられていない場所なの。徒歩だと端から端まで一時間以上かかるくらいに広いらしいよ。

 

 馬車を停めたのは通りから入った広場で、そこから奥に細い砂利道が続いている。

 馬車を停めるスペースがあったり待機所があったり、このまま観光に使えそうだ。


 精霊車を降りて、精霊獣を小型化して顕現させる。うじゃうじゃと精霊に囲まれて待っていると、陛下達の精霊車が到着した。

 ジーン様はすでに公爵なのでここにはいない。だから皇族の精霊獣は将軍の火の精霊獣だけなのに、こっちは家族全員分並べると嫌がらせかっていう感じもするけど、精霊王と面接するんだからしょうがない。

 無表情を貫く近衛騎士団の騎士に先導されて、私達は滝に向かった。


いつも感想、評価、誤字脱字報告ありがとうございます。


琥珀先生が出てくるところまで行きませんでした。

次は出てきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作の書籍版1巻~6巻絶賛発売中。

i449317

― 新着の感想 ―
ディアドラは、実はクラゲだった? いや、そう思われている? 笑えるwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ