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六歳の誕生日

今回と次回は補足回のようなものなので、二話同時に投降します。

こちらが先です。

 学園が終わるまでクリスお兄様は帰宅出来なかったので、ゆっくりお話し出来たのは年が明けてからだった。


「なんであんな話をはぐらかしてますって感じで話したんだい?」


 皇族の自分を敬うどころかまともに返事を返さない幼女の、機嫌を損ねることなく会話するなんて無謀なことに挑むことになった皇太子と、ロイヤルで美形な子供とどう話をすればいいかわからない三十過ぎの乙女。まともな会話になるわけがないでしょう。


「兄上、ディアは友達いないんだから、話を任せたら駄目だったんだよ」

「ええ?! 他領にだって精霊について説明しに行ってたじゃないか」

「あれは仕事です。毎回同じことを話せばいいんだから簡単だし、質問に答えていれば時間が終わるんです」

「商会で普通に話せるのも?」

「お仕事ですし、欲しい物の説明は出来ます」


 あ、いちおう何人かお友達は出来たんだよ。年の近い女の子。

 だからそんな心配そうな顔をしないでほしいんだけどなあ。


「大丈夫、ディアが変な子だっていうのはわかってくれた。走り回っている事も、発想力や着眼点はすごいのに、あとはずぼらで人任せなことも話してある」


 やめてください。適材適所って言ってください。

 馬車を改造する時のネジの形状や大きさとか、強度はどうするとかわかるわけないじゃない。絵に描いて説明するまではまかせろ。伊達に薄い本は出してない。でもそこからはプロのお仕事よ。






 月日は流れ、とうとう私も六歳。現代でいえば、ピカピカの一年生だよ。

 私の誕生日会は三年続けて、城内の湖で行われている。兄達のパーティーに比べれば小規模なのは立場的に当たり前。領地内の貴族を中心に、今回はコルケットとノーランドの辺境伯家族も招待している。彼らも精霊獣を顕現出来るようになったので、精霊王の元を訪れる時期を確認するためだ。


 初めて精霊王に会った年は精霊を持たない貴族もたくさんいて、人間が湖の存在を忘れていなかったと瑠璃(るり)が喜んでいたっけ。それが今ではほとんどの人が複数の精霊持ちで、親の精霊獣の背の上で赤ちゃんが寝ていたりするんだよ。

 魔力は人により上限に差があるみたいで、貴族でもほとんどの人は三種類の精霊獣までしか育てられないみたいだとわかってきている。

 でもみんなが三種類育てたら、貴族の人口より精霊獣の数が多いって事だからね。

 私の周囲だけなら、あと一年もしたら、間違いなく人間より精霊獣が多くなるよ。


『こっちはいつでもいいぞ。翡翠(ひすい)の方は山頂だから夏がいいだろう』

『うん、そうだね。ああ、私も平地に住めばよかった。いいなあ。人間と精霊が仲良さそうで』


 湖の上の特別席に、今回は四人の精霊王が集合して誕生日を祝ってくれた。

 特別席に招待されたのはうちの家族だけで、辺境伯達は湖近くまでしか近づけなかったけど、蘇芳(すおう)翡翠(ひすい)も誰が自分の住む場所の住人かはわかっていて、彼らが跪いたら手を振っていた。

 初めて会えた精霊王の姿に辺境伯達は感動しているみたいで、興奮気味に会話している様子が見える。


『やはりノーランドの人間は体格がいい者が多いな。冒険者も精霊を育てる者が増えていてな、回復したり守ってくれる相棒だと熱心に育てているんだ』

『コルケットだって、牧場で精霊と遊ぶ子供が増えてるんだよ』

 

 突然のお国自慢?

 それを余裕な顔で聞いている瑠璃と、むすっとしている琥珀(こはく)

 琥珀先生は複雑な心境なのかな。

 

 学園とアーロンの滝までの植林はもう終わっている。

 まだひょろひょろの細い木ばかりだけど、他に比べれば異常な成育速度なんだって。

 魔法の練習や魔力量をあげるために魔力を放出するだけでも、森を育てる手伝いになると聞いて、毎日誰かが来て魔法の練習をしているし、学園がある時期は全生徒で魔力を放出して森を育てる手伝いをしているらしい。


「あの、琥珀。森が繋がるって、どのくらいの状況になればいいんでしょう? 来年で三年になるから」

『三年なんて言っていないわよ』


 そうでした。私が最低でも三年はかかると言ったんでした。

 植林してちゃんと森にするには、本当は十年以上かかるよね。開拓された森は何百年何千年とこの地にあった森のはず。その代わりなんだから、ちょっと木が育ったからっていい気になっちゃ……。


『秋にアーロンに来て』

「は? 三年すら経ってない?!」

『甘いなあ』

『我らが羨ましくて我慢出来ないんだろう』

『ち、違うわよ。このままだと私の地域だけ遅れるでしょ。精霊の数にあまりに違いがあると、魔力の流れに影響が出て、天候にだって悪影響じゃない』

『まあな』


 琥珀先生が説明しているのに、他の三人はにやにやしてあまり聞いていない。

 どんどん先生の顔が赤くなっているので、やめて差し上げてくれませんか。


『今回だけよ! 次に同じようなことをしたら、私はこの国から出て行きますから!』


 砂漠化待ったなしじゃないですか、やだー。


「茶会の土産話が出来たな」

「そうですね。琥珀様がお優しい方でよかったわ」


 これで陛下たちも一安心だね。

 そしたら私の事は放っておいてくれるかな

 ……無理だろうな。


いつも感想、評価、誤字脱字報告ありがとうございます。

いろんな視点の感想は参考になりますし、知らなかったことを教えてもらったりもしています。

ただ返信でネタバレを書きそうなのが怖い。

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― 新着の感想 ―
[一言] コミックスを読んで原作に来たが、この20回目までとてもおもしろかった。続きも楽しみだ。
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