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国宝級? 神話級?

早起きしてしまったので早朝に更新します。


 カートリッジを取り付けた精霊車の、実装試験が開始された。

 といっても、カートリッジ内の魔力の減り方を計測したり、精霊獣が嫌がらないのは、主の魔力とどのくらいまでの違いなら大丈夫かを確認しながら、もう実際に運用している。

 チョコレートも品質がどんどん良くなってきて、いろんな種類が作れるようになってきた。

 今はすべて手作りで、一個一個お客様に選んでもらうショコラトリー方式だけど、もっと安く手軽に食べられるチョコレートも作りたい。

 まだまだ夢が広がるわよ。


 初夏になり、クリスお兄様は皇太子と一緒に戴冠式に出席するためにルフタネンに向かった。

 あの王太子が国王になり、タチアナ様が王妃になって、ルフタネンはようやく長い混乱の時代に終止符を打つことが出来るんだろう。

 帝国だって、皇太子と第二皇子の仲が修復されてから、どんどんいい方向に進んでいるのよ。

 次のデビュタントでスザンナとイレーネは成人するから、正式に婚約して結婚の準備が進められる。

 そして来年はもう、クリスお兄様と皇太子は学園卒業。その半年後には皇太子の戴冠式が行われるのよ。お祝い事が盛りだくさん!


「そういえば、殿下はどうなんですか?」


 モニカのお妃教育は、皇太子がいなくても当然お休みにはならないので、今日はパティと一緒に皇宮に会いに来ているの。

 アランお兄様も近衛騎士団に顔を出していたので誘ったら、なぜか第二皇子まで連れて来ちゃったのさ。別にいいんだけどね。


「どうって何がだ?」

「縁談」

「ちょっとディア」

「殿方は、女性よりゆっくり決めるものなのよ」


 モニカとパティが慌ててフォローするけど、この元俺様殿下、現在大型犬殿下はそんな慎重に扱うような性格じゃないだろう。


「さっさと決めている男もいるよな」

「ですよねー」


 殿下と私、ふたりの注目を浴びても、アランお兄様は知らん顔してお茶を飲んでいる。でも、その隣で赤くなっているパティがちょっと気の毒なので、この話題を続けるのはやめよう。


「縁談の話ならあるぞ。成人していないから表立って正式に決定は出来ないが、たぶん、パウエルかコルケットの孫と結婚することになるんじゃないか?」


 パウエル公爵の孫もコルケット辺境伯の孫も、私より二歳年下で今年十歳。

 この冬から学園に入学よ。

 やっぱり皇族は政略結婚になっちゃうんだな。

 特に今は、エーフェニア様の恋愛結婚がよくない結果になったせいで、皇族が恋愛結婚したいなんて言い出せない雰囲気になっている。


「意外ですね。近隣諸国と縁組するのかと思ってました」

「そういう話も出ている。秋に兄上と合同の誕生日祝いを、今年は近隣諸国も招いて行うだろう? 学園に留学する予定の者達も招待しているので、その中に縁組の話が出ている令嬢や姫も来るはずだ」


 皇太子と殿下の誕生日って近いのよ。ふたりとも秋生まれなの。

 殿下は自分の誕生日会に大事件が起こったのがトラウマで、あれ以来、あまり大きな祝い事をしてこなかった。

 今年は皇太子と合同だっていうんで、殿下もようやく承知したから、諸外国も招待して派手にお祝いすることになったんだって。


 今までは、あの大事件があったことと皇太子が幼いこと、皇位継承で国内が荒れないようにするためという理由で、外交より内政に力を入れてきた帝国だけど、ここ何年かで少しずつ外交政策に振り分ける余力が出来ていたから、例の教本を各国に送るのをきっかけにして、貿易や外交に本格的に力を入れている。


「外国のやつらの本当の目的は、妖精姫をどう取り込むかだと思うけどな」

「まあ、私を取り込もうなんて勇気ある方達ですよね」

「本当にな」


 そこは笑い飛ばしてよ。納得しないでよ。

 でも外国からは、帝国内の様子が気になってしょうがないだろうね。


「ここ何年も、公式行事に一部の外交官しか招待していなかったからな、今回は王族や大貴族の関係者がぞろぞろやってくるぞ」

「大変ですね」

「他人事のように言うな」


 殿下に叱られる時が来るとは。

 成長したねえ。お姉ちゃんは嬉しいよ。

 いや、おばちゃんか。

 最近、元の年齢の雰囲気がよくわからなくなってきた。


 前世の年齢プラス今回の年齢ではなくて、前世の年齢と並行して今回の年齢がある感じなのよ。

 十歳くらいまでは、もう少し子供らしくしないと周囲に気持ち悪がられるかなって、少しは演技していたつもりなのよ。あまり子供らしくなかったけど。

 でも今はもう、子供らしくなんて意識しないで話したり行動しても誰も気にしなくなって、むしろ行動の一部分を取って、そういうところはやっぱり子供だねってお子様扱いされることが増えて来たの。家族も過保護だし。

 十代の子供の変化って、ものすごいじゃない?

 スザンナやイレーネ、ブリたん達はもうすっかり女性らしい体つきになっちゃって、どんどん綺麗になっている。

 男の子達だってすごいよ。囲まれたら壁だよ。

 声が低くなって、体がごつくなって、背が伸びて。

 変化していく年上の子達と自分を比べて、うわ、私ってば子供だって思ってしまう感覚。たぶん普通の十二歳と変わらないよね。


「夜会や舞踏会には出られませんから、一回顔を見せれば大丈夫じゃないですか?」

「ディア目当ての人がたくさん来るのに? 気を付けないとベリサリオまで押しかけてくるわよ」


 モニカとはひとつしか変わらないのに、元々体が大きかったからか、最近けしからんプロポーションになっている。皇太子と並ぶとド派手なカップルよ。

 パティだけが心の支えよ。同じ年の友達は重要よ。

 カーラはね、夏のこの時期は領地にたくさんお客様が来るから、誘ったけど忙しくて来られなかった。

 うちも避暑地だったはずなんだけど、最近他での稼ぎが多くなってどうでもよくなっているからね。

 呼ばなくても客が来るし。

 両親が領地にいるから大丈夫よ。


「失礼します。お客様がおいでだそうです」

「客?」


 扉が開いて顔を出した護衛の人と会話をした侍女が、遠慮がちに声をかけてきた。


「誰だ?」

「それが……」

「時間がないって言っているだろう」


 バンっと扉を開けて部屋に押し入ってきたのはクリスお兄様だ。

 ルフタネンに行って外交している途中で抜け出てきたのかな。正装できっちり決めている。


「すぐに戻らないといけないんだ。邪魔するよ」


 皇族がいるっていうのに、なんの遠慮もないな。


「カミル。さっさと来い」

「いいのか、本当に」

「カミル?!」


 お兄様がカミルを連れてくるなんて、どういう風の吹き回し?

 それにここ、皇宮だよ?

 外国の公爵を、突然連れて来ちゃっていいの?

 いつもの民族衣装に黒髪黒目だから、誰もが外国人だってわかるのに、堂々の不法侵入なんじゃないの?


「ディア。またやったな」

「ええ?! 何をですか?」

「ディア……これ、すごく嬉しいんだけど」


 カミルの左手には、私のプレゼントしたバングルがしっかりとつけられていた。

 恥ずかしいから、みんながいる前でお披露目するのはやめてもらえませんかね。


「え? あれがディアのプレゼント?」

「まあ、素敵」


 ううう……お友達の瞳が輝いているじゃないか。

 あとで絶対にからかわれる。


「こんな神話級の物をもらっていいのかな」


 神話級?

 なんだそのワードは。


「クリスお兄様に国宝級とは言われたけど、家族みんなに似たような物を作ったし、私も愛用しているし、問題ないのでは?」

「そのブレスレットは確か、空間魔法が使われているんだったな」


 殿下に言われて頷いた。

 皇太子にも羨ましがられたのよね。

 でも皇族兄弟は魔力が足りないの。精霊獣も二属性しか育てられていないでしょ?

 彼らでも、空間魔法を使ってたくさん物を入れられるようにしたバッグや袋なら使えるんだけど、取り出し口より大きい物は出し入れ出来ないの。そういう無茶なことは転移魔法を併用しないと出来なくて、使用するたびに多くの魔力がいるのよ。


「問題はそこじゃない。瑠璃様のところに持って行った時に何かしただろう」


 すぐ横まで近づいてきたクリスお兄様の顔が怖い。カミルも真剣な表情だ。

 これは笑いごとじゃなさそうね。


「瑠璃が妖精姫の贈り物が、ただのアクセサリーなのはどうなんだって言い出して」

「どこがただのアクセサリーなんだよ」


 すごいな。殿下が突っ込み役になっているよ。

 アランお兄様は興味津々で、テーブルに乗り上げそうな体勢でバングルを見ている。

 私もそう思うけども、相手は精霊王だから。空間魔法なんて珍しくもなんともないわけで。


「それで瑠璃が祝福してくれるって」

「そんな甘い物じゃないんだ。全属性精霊王の魔力が少しずつ注がれているんだ」

「え?」

「どんな機能がついているのかまだよくわからないけど、やばいのは間違いない」

「全属性? 瑠璃達全員が祝福したってこと?!」

「それもかなり本気で」


 うへ、なんでそんなことしたんだろう。対抗意識を出したとか?

 私の後ろ盾は自分達だぞって。


「これ、もらって平気なのか? すごい魔力を感じるんだけど」

「むしろもらわないと、瑠璃達の祝福を拒否したことになるんじゃないかな?」


 カミルが頭を抱えてしまった。

 クリスお兄様も疲れた顔で遠くを見つめている。

 帰ってこーい。明日には戴冠式があるんだぞー。


「どうすんだ、これ」

「どんな機能があるのかわからないのは困るわね。あ、そうだ。魔力をちょっと注いでみたら?」


 魔道具なら、それで動くもんね。


「……なるほど」


 カミルが左手を持ち上げてバングルに右手を添え、少しだけ魔力を流すと虹色の光がふわりと浮かび上がった。


「うわ、瑠璃が祝福するとそんなふうになるの?」


 光は徐々に大きくなり、突然ふっと消えた。

 同時にバングルも消え、代わりに頭にバングルとそっくりな額冠を付けた白いモフモフが現れた。


いつもすごい速さで誤字報告してくださる方がいて、おかげでとんでもない間違いをすぐ修正出来ています。甘えてしまってはいけないと思いつつ、本当に毎回助かっています。

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本作の書籍版1巻~6巻絶賛発売中。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 祝福を与えたのは果たして帝国の精霊王たちだけなのか!? ルフタネンの精霊王たちの嫉妬とか、面白がりとか…… [一言] カミルが白いモフモフに変怪したのかと思ってしまった(汗) 消え…
[気になる点] あれ? まさかの新モフモフ要因誕生? [一言] >私を取り込もうなんて勇気ある方達ですよね 皮肉も込めた自虐ネタしたのに誰も否定しないって(笑)
[良い点] また(精霊王たちが)やらかした! [気になる点] 外交より内攻に力を入れてきた帝国だけど ここ内攻って合っているでしょうか。 内政の方が合うと思います。
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