表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

67わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第二章 第9回


 ************   ************



 「で、あなたは、ずっと、起きてるんでしょ?」


 当然だろ、という感じでビュリアが言った。


 「まあ、仕方ない、寝てなんかいられない。」


 「女王様にとっては、一億年くらいは、いちいち気にするような長さではない。ほぼ、永遠を経験した身から言えば、ほとんど瞬間のようなものだからよ。でも、人間が経験する時間としては、非常に長い。安定した精神を維持するためには、相当な工夫が必要よ。たとえば、宇宙戦争とか。」


 「冗談じゃない。こっちは、滅亡した立場だ。だれと、いったい戦争するのさ。」


 「そりゃまあ、候補はあるわよ。『第9惑星』が、すぐに力を付ける。彼らには、光人間が寄り添っているから、共同で火星の征服を企てるのは、まあ、時間の問題ね。まず、これが最初の戦争になるわね。それに、あたくしの新しい王国内にも、対立勢力は必ずできる。内紛が、まったく起こらないと言うことには、自然な状態であれば、まずならない。初期の段階で、一回起こる。あとは、国王と、巫女がどうするかによって、大きく変わるわ。」


 「そりゃ、予言かい? 実際、すべて、あんたが、管理すりゃいいんだろう。女王様の身代わりなんだから。たぶんね。」


 「火星のような『まね』は、もうするなと、女王様からも、きつく言われておりますの。まあ、あなたにだけ言っておくけれども、『女王様』は、神ではないけれど、今後当分のあいだは、神の役を行うでしょう。」


 「当分の間ってのは、どんくらいかい?」


 「そうね。まあ、二億年から三億年の間位かな。」


 「おおざっぱだな。」


 「だから、一億年なんて、誤差の範囲よ。」


 「誤差としちゃ、大きいだろ。」


 「あら、まあ、そうかしら。でも、そのくらいの幅は出来る。新しい地球人類の、実力しだいかな。火星人もね。それに、金星人も、その時期には、帰ってくるわ。」


 「あそ。金星人が、帰って来る? ふうん・・・・。でも、ぼくは、戦争はしたくない。冗談じゃない。おとといごめんだ。」


 「じゃあ、勝手に好きにさせる? いまの『第9惑星』の人たちは、地下にあなた方がいることを知っているわけよ。あの、植民地にいる人間は、光人間化はしないけど、新しいタイプの『人類』になるわ。まあ、地球人から見たら、『宇宙人』ね。いずれ、彼らの世代が交代する時期には、火星をほってはおかないわよ。必ず、掘り出しに来る。ね? しかも、背後の『光人間』は、地下であろうが、どこまでも、自由に侵入できる。その力には、図りかねる潜在力があると思うわけよ。」


 「あんたが、いや、女王か、が、つくったんだろ。隠してるけど。ビューナスの仕業にしてるけど、じつは、そうじゃないんだろう。」


 「まあ、ご聡明なこと。」


 ふたりは、地下の巨大なホールに入った。


 一万人近くは、入りそうだが、それでも、全員は無理だ。


 実際のところ、『火星王国』では、このような巨大ホールで演奏するような音楽は、最後まで、なかった。


 金星人も、ごく、小ぶりな室内楽が好みである。


 ビューナスの周囲で、せいぜい、5人くらいが、ハープを弾きながら、歌い踊るような。


 金星人全体が、そうした好みだった。


 大きな『管弦楽』、なんてものを開発するのは、実は、はるか後の、一部の地球人類である。


 火星にある、大きな催し物、とすれば、まずは、『演劇』だろう。


 女王と、偉大な怪物、ブリューリの、愛と冒険の物語が、火星の定番だった。


 いまでは、さすがに、もう、誰も受け入れないだろうが。


 あとは、女王の演説会場か。

 

 ダレルは言う。


 「こんなもん、作って、どうするの。みんな寝て仕舞うんだ。なんかの説明会場なら、もっと小さくていい。」


 「まあ、じゃあ、あなたは、見てるだけ?。演説も無し?」


 「ばかな、ぼくには、巨大な責任がある。火星再興だ。その時に、火星人が絶滅していたらお話にならない。でも、一堂に会しての演説なんて、非合理的だ。」


 「まあ、そうね。女王様がね、ものすごく悔やんでいたのは、もちろん、ブリューリと共に、長年王国民を共食いさせてきたことが一番なんだけれども、正しい情報の発信を、しなかったこと。も、あった。王国民全員に、もっと親しく語り掛けることは、技術的にはなんの問題もなかったのに、しなかった。しなくてよいように、操った。」


 「そこは、まあ、ぼくにだって責任はあるよ。だから内部からも、民主化しようとしたし、ヘレナは母だとしても、妥協ばかりしたわけじゃあない。テロ組織とも協力した。君は、そこにいたわけだ。それでも、ぼくには、やはり責任はある。そんなことは、分かってる。ただし、確かに、支配者側には、出せない情報だってあることは確かだからね。生き延びなければ、意味はない。国民を余計な混乱に陥れることは、避けたいからな。」


 「そこだ。ね、それが、いつも、権力の陥る罠よ。純粋にそれあけなら、ある程度理解も可能だ。でも、その背後で、政治家や、公務員の、ばかなつじつま合わせや、ごまかしが蔓延するのは、間違ってる。分かっているくせに。女王様は、一時期、そうした不正行為をした政治家や公務員を、厳しく摘発した時期があったわ。まあ、『不感応』な、反体制派もいたけど。まずかったのは、その多くを、人体実験に使ったりしたことね。ブリューリが、干渉してきた、まだ、初期の段階だった。残念ながら、権力者は、国民の団結が怖い。100%、自分の側ならいいけど、それでも、手に負えなくなることは、怖い。まして、反体制側への団結は、ものすごく恐ろしい。けれど、幸い、女王様には、全惑星中の人心を、自由に操る能力があった。だから、その愁いを断つために、王国民の意識を、長年うまく操ったけれど、それでも、不可能者や、ミュータントは必ず出現するし、共食い政策も、結局最後は、内部崩壊したでしょ。永遠の支配なんてものは、ない。そもそもね。で、話は違うけど、あたくしは、ほぼ全員と言う規模の『冬眠政策』は、やはり、賛成できないわ。少なくとも、半々で行くべきだ。まあ、あなたは、却下したけど。」


 「二億年以上も、冬眠させるんだとしたら、仕方がないさ。そのままなら、それこそ、別の生き物に進化するだろう。でも、『不死化』させられる規模は、限られてる。そんな『化け物』ばかりの世界にはできないよ。普通の世界であるべきなんだ。生まれては、普通に死ぬ。ぼくは、そこから外されたけどね。そんな怪物は、ろくなものにならない。」


 「それ、皮肉ね。」


 「もちろん。だいたい、あんたは、何なんだ? そこが、まだ、そもそも、よく、分かってない。これは、はっきりさせておくべきなんだ。あんたは、何なんだ?」


 「いいわ。教えたげる。座りなさいな。」


 ふたりは、なんだかんだと言っても、十分、巨大な地下ホールの真ん中のあたりに、向き合って座った。



 

     ************     ***********





























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ