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67わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第二章 第8回


  ************   ************



 「ふうん・・・アニーさん、けっこ、頑張ったじゃん」


 ビュリアが、珍しくアニーを褒めた。


 『ども。』


 まったく、沈黙を守っていたアニーさんが、口を開いた。


 「アニーさんは、すべて見てるわけか?」


 ダレルが念押しのように言った。


 『もちろん。それが、アニーさんの役割ですから。』


 「ほんとに、すべてのすべてか?」


 『まあ、ヘレナさんから、人類の場合には道徳上、見ないようにすべきもの、として、いくつかの例外と解するよう指示されたケースはあります。たとえば、排せつ時、繁殖行為時、など。しかし、アニーさんには、レンズも穴も必要がない。つまり、人間たちにしてみても、『見られている』という意識を惹起する要素は、まったくありません。したがって、見ないようにすると言う事は、報告しない、という原則であって、必要な場合は、すぐに情報提供が可能なのであります。はい。』


 「要するに、見てるということだろ。」


 『まあ、人間が言う、見ていると言う概念とは、違うのです。いわば、大気のようなものですな。あとから思い出せと言われれば、いつでも、大概プレイバック可能です。しかし、例外として。。。』


 「もういいわよ。アニーさん、まあ、よく、頑張ったわね、と、言いたいだけよ。」


 『ども。』


 「肝心なところを、言わせなかったな。」


 「あら。秘密事項は、つねにあるものよ。特に、不感応者にはね。あなたなんか、子どもの頃から、お母様にいっぱい隠し事してたでしょ。」


 「あんた、ヘレナの記憶のどのくらいを引き継いでる?もし全部なら、あんたがへレナだろ。」


 「そこ、ちょと、違うのですわ。そもそも、女王の記憶は、宇宙空間内の、多くの恒星や惑星、衛星に蓄積されているのよ。そのすべてを利用可能なのは、女王だけよ。アニーさんでさえ、全ては利用出来ないの。と、アニーさんは、言いたかったわけよ。ね。」


 『あい、まあ、そうです。』


 「ふ~~~ん。怪しいな。」



 ふたりは、火星の地下に広がる、居住地を見て回っていた。


 ここが地下である、ということを意識しなければ、誰が見ても地中深くだとは思わないだろう。


 よほど、細かく観察可能な人、以外は。


 広く広がる大空も、視覚のトリックだが、実によくできている。


 太陽は、これまた、視覚上の存在だが、火星上にいるのと同じように、体に熱を感じる。


 海はないが、それなりの湖はある。


 それで、十分だ。


 雨も降るが、嵐は来ない。


 地震は、実は起こる。


 火星には、地球のようなプレートはないが、それでも大地が揺れることはある。


 まだ火山活動は活発である。


 それは、巨大な、『オリンパス火山の破滅的噴火』があったばかりだから、極めて身近な事だ。


 アニーさんが、居住地自体を巨大な耐震構造にしていたので、揺れの大部分は吸収されるが、それでも、多少は揺れることもある。


 「こんなとこにいたら、火星人は、地上に出たくなくなるかもね。ここが、地下だと言う事さえ、忘れるかも。」


 『はい、びゅりあさん。だから、展望台を設けたわけです。あの、『仮面岩』に。』


 『仮面岩』は『人面岩』ともいわれ、古くからの観光地だった。


 のちに、地球人が騒ぎ出すことになった、あれである。


 本来、自然の産物だ。


 そう、考えられてきた。


 一部の、火星や金星のオカルト主義者が、実は、『謎の火星第1文明の遺物ではないか?』と、言ってきてもいた。


 科学者たちは、見向きもしなかったのだが。



 その姿は、ある程度高空に上がらなければ、よくは、わからない。


 なので、ふもとからは、観光宇宙艇がたくさん発進していたのである。


 周囲には、一時期、ホテルや、土産物店が乱立していたが、女王が一定の整備を行って以来、高級観光地となった。


 航空機や、宇宙船ではなく、高度エレベーターも、建設された。


 アニーさんは、それを改修したらしい。


 『あれが、地下政庁舎です。ダレルさんの根城。』


 「いいじゃない。おしゃれ。」


 『まあな。恰好だけは。王宮には及ばないがね。』


 「あらま、珍しい事、言うじゃない。だいっきらいの王宮でしょう?」


 「そういうことじゃない。客観的に、言ってだよ。面積、内部の施設、テクノロジー、そうしたもののことだ。」


 「ふう・・・・・・・ん。あたくしが、地球に持って行ったのが、気に入らぬ、というわけかな?」


 「ま、な。」


 「いいわよ。火星が見事再興したら、返してあげるわ。」


 「いつのことやら。」


 「まあ、2億5千万年ほど先ね。」


 「やけに、言い切るじゃないか。」


 「ほほっほほほほほ。ビュリアは、魔術師。予言者。お忘れなく。」


 「化け物だ、やはり。」


 「まあ、ヘレナさんほど、嬉しくはないわ。一応、褒め言葉と、考えましょう。」




 ふたりは、火星の首都と、そう、見た目変わらない街並みを歩いた。


 しかし、この施設において最大の重要施設は、ここではない。



 広大な『冬眠棟』、である。



 大部分の人々は、火星再興の時まで、遥かな眠りにつく。


 その日が来るかどうかは、まあ、五分五分だと、実のところは、そう、ダレルは考えていた。



 眠れる人々を起こすのは、ダレルの役割である。



 そこには、新しい、火星の大地が、太陽に映えながら、青々と浮かび上がらなければならないのだが。





  ************   ************






















 









 

 


 













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