表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

67わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第2章 第7回


************   ************



 「パル君は、もう、ひとりで生きて行けるよね。」


 ウナが言った。


 パル君は、もちろん、ひとりでやって行ける力はあるのだろう。


 しかし、ここしばらくの間、彼はウナと一緒に生活することが出来た。


 あの、旅行に出てから、びっくりするようなことばかりが、やまほど起こった。


 一旦は、すっかり、諦めていた、母との平和な生活である。



 それが、『国王』さまに、なれだって!



 やっと来た平穏が、また、まもなく崩壊するかもしれないという、どうしようもない不安は、口には出さなかったけれども、当然パル君には、あったのだ。



 実際、パル君を巡る状況は、すっかり変わってしまった。


 あの、嵐のような集会では、パル君の出番はまだなかった。


 今から思い出せば、あれはやはり、最後のお祭りだったのだろう。


 『最初の』かもしれないが。


 人々には、爆発できる場所が必要だった。


 火星も金星も、もう、おしまいになってしまったことだけは、誰の目にも明らかだった。



 それまでならば、女王様や、ビューナス様の魔力が効いたかもしれないが、どっちもいなくなったら、お仕舞いなのは、どうにもならないものだと、みんな納得せざるを得ない。


 そのはずである。


 もっとも、ビュリアが、女王様の力と財産を引き継いだと言うことを、多くの人々が、素直に納得できるかどうかは、いささか、賭けな部分だったのだ。


 多くの人々は、すべてを失った。


 ビュリアだけが、その取り巻きだけが、特をするのは、どう考えたっておかしいだろう?


 そこは、火星の女王の『心理支配』が、最後まで持つかどうかが、実際、勝負の分かれ目だったが、結局のところ、女王様の支配力は、想像以上であったと、言わざるを得ない。


 結果が、そこんところを、証明してしまったわけだ。


 もしかしたら、ビュリアが、そこまでの力を、女王から預かっているのかもしれない。


 ブル博士などは、なんとか、もっと違う結果に行き着きたかったのだが、なかなか、そこまでは困難だったわけなのだ。


 だから、ブル博士とその数少ない同志たちなどには、ビュリアに反発する動機は、ありありだった。


 ただ、大物の一人、あの議長さん・・・つまり、金星のもとナンバー2。


 金星の、『元』、情報局長さん。


 カタクリニウク氏。


 老いてまだかくしゃくとした、彼の心中は、謎だったけれど。

  



 火星人も、金星人も、あまりにも長い時間、女王やビューナスに頼ってきたし、実際、いざというときには、頼りになったのだ。


 不可思議な力を発揮し、数多くの危機を救ってきた。


 その、かなりの部分は、『伝説化』しているが。



 女王と、怪物の食料にされながら、また一方では、かなりの搾取をされながらも、そうした『奇跡』をたくさん見せられ、あるいは、大部分は、教え込まれてきたわけなのだ。


 倒錯した倫理観ではあっても、長年続けば、当たり前になる。

 


 最後の時以外は・・・・・。



 結局のところ、誰が、最後の引き金を引いたのか、はっきりわからずじまいだった。


 ブル先生と、その同僚は、なんとかそこんところをいぶり出し、相応の断罪をしようとした。


 まあ、怪物ブリューリは、幸運にもというか、皮肉にもというか、やっかなことに、と言うか、最後は女王の力によって封印されたらしい。



 女王は、『宇宙怪物ブリューリ』によって、操られた結果、おそろしい人喰い怪物にされてしまったんである。



 ブル先生たちは、この解釈を、なんとかして、ひっくり返そうとしたのだが、どうにもならなかったのだ。


 一つは、明確な『証拠』が、なかったことがある。


 そこらあたりの真実は、あまりに古いことがらであり、しかも、意図的に消去された歴史の記憶にまみれてしまって、この世からは、無くなってしまったらしい。 


 『火星の第一文明』は、未だにまっ暗闇の中だ。


 そうしたものが、あった、ということさえ、科学とオカルトの中間地点くらいだ。


 おかげさまで、ブル博士は、まっとうな大科学者としての地位を手にすることが難しかった。


 しかし、博士は諦めては、いない。


 その、確固たる証拠は、必ず、火星の内部に。まだ、埋まっているはずだ。


 もしかしたら、金星に隠されているかもしれない。


 金星の『ママ』は、刺抜きされたような状態で、この先、うっかり近づけないことになりそうだが、ここが、狙い目なんじゃないか?


 ブル先生は、そうも考えていた。


 『ママ』は、きっと、多くの事実を知っているに違いない。


 

 まあ、様々に、矛盾したことがらが、いっぱいあったわけだったが、いまさらあせっても、どうにもならない。


 結局、火星も、金星も、そのまま、終わってしまった。


 

 もっとも、だから、ブル先生たちが諦めるわけがない。


 彼らは、あえて、ビュリアの王国に入り込む決断をした。



 マヤコも、仲良しを光人間に変えられてしまったことに対する、消しようのない、疑惑を抱えていた。


 勘の鋭いマヤコは、どうも、ビューナスだけの意図で始まったことだとは思えなかった。


 太陽系の裏側には、『火星の女王』が、もともと、とっぷりと、関わっている。


 マヤコは、そう確信していたのである。


 だから、いやではあったが、中枢に入り込むことに、同意した。


 せっかく、誘ってもらったんだから。


 

 

 そうは言っても、結局のところは、リリカと、ダレルが中心の体制が固まり、ビュリアは、予定した通りに、引き続き、地球を手に入れ、そこは『聖域』として、周囲からは隔離して、やがて、現れるはずの、地球人類の成長を、暖かく見守ることになったわけだ。


 『王国』は、その『見張り番』でもあったわけだ。


 ただ、ビュリア自身は、まあ、多少は、どうしても、手出しをすることにはなるのだが、基本的に、自分は政治には一切かかわらない事にしたし、やむを得ない事も、その大部分は、パル君にお任せとし、その後見人として、生きたコンピューター、『アニーさん』に、そのお世話を任せて、しまったわけなのである。



 問題は、『ウナ』、だったのだ。




          ・・・・・・・・・・・・・・・・




 そのビュリアは、間もなく、ウナを『教会』に呼び入れて、会談を持った。


 それは、新しい『王国』の将来を決定付ける、たいへん、重要な会談となったのである。


 いや、それどころか、はるか彼方の未来の地球の、いや、太陽系の未来に至るまでの、と、言った方が良いかもしれない。


 当面のところは、『タルレジャ王国』の脊椎を固めるという、重要な意味合いがあった。













































    *************  ふろく  ************





 「なんかもう、やましんさん、これだけ書くのに、一か月かかってません? もう、青息吐息?」


 幸子さんの手から、お饅頭が無くなることはありません。


 これで、病気にならないのは、彼女が幽霊で、女神様だからです。


 「一か月は、オーバーですよ。まあ、遠からず、だけどな。」


 「ふうん。人間は老化するしなあ。日一日と、衰えて行く。あわれなことね。」


 「まったく。じゃあ、お饅頭いっこ、下さい。」


 「あらあ。珍しい。お医者様に、叱られるんでしょう?」


 「いっこくらい、まあ、いいじゃないですか。どかどか~~は、いやですよお。いっこ、でいいです。」


 「よしよし。じゃあ、お饅頭あらし、いっこ。行きます!」


 「まったまった、それじゃなくて。そこの、一個でいいです。」


 「あらま。もうすぐ春だと言いますのに。人生短い。ドンと行きましょう。ドンと。」


 「あい。そうしたい。」


 「あ、ドンと寝っ転がったか。」




   ***************   +++++++++++++++




 




 


 









 


 


 


 


 






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ