わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第2章 第6回
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『ママ』が火星に撃ち込んだミサイルは、『惑星破壊弾頭』までは行かなかったが、『文明完全破壊弾頭』クラスの、『最終兵器』と言ってかまわないものだった。
しかし、もし、女王が自らおこなうならば、放射性物質を、こんなに下手に振り撒いたりはしないはずだ。
再興がたいへんだからである。
実際、アニーさんが手に負えないというくらい、最悪状態である。
女王は、その先も、地球において、何度も大量絶滅を行った。
方法は、さまざまなやり方だったが。
そこは、まだ、ダレルも知らないことではあるが。
要するに、火星と金星の滅亡は、実は謎だらけである。
ダレルはもちろん、リリカとて、よくわかっているはずだ。
なんで、こんなことしたのか?
ただ、実は、どうなのだろうか?
リリカは、『女王に意識を操られていることは間違いないから、本当には、意識していない可能性もあるな。』
ダレルは、火星の地下にある指令室で、そんなことを、考えていた。
『いったい、どうしろって言うんだ。この状況は、手に負えない。アッと言うまに、環境が激変だ。砂漠だけになっちまった。どうも、『偉大な火山』(=オリンパス山)の破局噴火と、わざわざ合わせたみたいだ。女王にとって、時間は長すぎるくらい、永くある。』
そうして、このように、結論を考えた。
『地球の開発に力を入れる間、火星人と金星人を、意図的に排除したというべきなんじゃないか。いらなくなったから、排除した。だとしたら、ぼくは、長い無駄な時間を待たねばならない。』
そこに、都合よく、ビュリアが現れた。
「あなた、なやんでる?」
いかにも、いじわるそうに、ビュリアが尋ねてきたのである。
「悩んでますよ。ぼくが、いまつぶやいたこと、わかってますか?」
「まあね。でも、偶然に過ぎない。」
「あんたが、女王自体じゃないと言い切る、その根拠もないし、女王だと言い切る根拠もない。あんたは、あやふやな態度を続けて来たし。」
「あら、そうかしら。」
「そうさ。まあ、女王本体の分身であることは、最低限間違いないんだとは思うが。生態ロボットか、アンドロイドか、あるいは、乗り移られてるか。」
「まあ、そうねぇ。女王の力があることは、事実だと、言って来てるでしょう?」
「ふん。あんた自身が、自分がなにものかわかっていないのだ。ということも確からしいけど。まあ、そこらあたりは、じっくりと、解明しよう。時間はある。あんたが、本来、あの『女将さん』の、娘であることは、事実だしな。」
「そうね。そうよね。」
ビュリアは、美しい身体をひねりながら言った。
「ときに、火星の奥に眠る、珍しいものを、アニーさんに見せてもらったよ。」
「まあ、なにかしら?」
「火星の、謎の、『第1次文明』の遺跡さ。学者たちが、見つけたくて、のどから実際、手が出てたくらいのね。ものすごい、大発見さ。ブル先生が、飛びあがるのが見えるね。」
「まあ、それはすばらしいですわね。」
「なんで、かくしてた? ずっとだ。」
「かくしていたわけじゃない。火星人が、ほり出せなかっただけでしょう。」
「無茶言うなよ。次元の壁でばっちり守られていた。金星の『ママ』みたいなもんだ。同じ技術だ。あれは、火星人の力では、まだ破れない。ビューナスなら、可能だったかもしれないが。あれは、あんたの、新しい『宗教』でいうところの、『真の都』と関連するのか? あんたなら、入れるのか?」
「ふうん。いいわ、おしえたげる。あなただけよ。イェス。そうよ。女王様が、『真の都』の、一部に収蔵した場所。『女王様』がね。あたしがやったんじゃない。あたし自身は、自主的には、入る権限がない。自分だけでは、『今は』、入れない。女王は、アニーさんに権限を委ねているわ。あたしが、アニーさんに依頼したら、入れてはもらえる。今回みたいにね。」
「『今は?』・・・ふうん。まあ、よくわからないが、あんたが、アニーさんに、指示したわけなんだ? ぼくに、見せるように。」
ビュリアは、口を大きく開けて、それから、少し楽しそうに答えた。
「ふふふ。まあ、そうね。ダレルちゃんには、これからの長い時間を楽しく生きてゆく材料が必要だ。」
「じゃあ、小出しにしないで、全部見せろよ。全部、教えろよ。」
「『真の都』には、限りがない。あの空間は開いたまま。全部と言うものはない。そうそう『地獄』も、作ったのよ。まだ、工事中だけど。すぐにできる。それに、新しい空間通路も開いた。大きな分岐点を作ったわ。神秘的で、それでいて、懐かしい。でも、一度落ちたら、まあ、まず、元には帰れない。女王の意志がなければね。どれも、女王さまの意図で、開かれたものだからね。空間通路は、革新的な空間で、そこを中心に、どこの空間にも通じるようにしたいの。でも、まだ未完成。もうちょっと、細工が必要だけどな。そのうち、案内したげるわ。そうね。二億年か、三億年か、くらい先かな。慌てる必要もないし。」
「ふん、ばかげてる。結局、女王の意志が、神の意志か?」
「そうじゃない。その、逆じゃ無ければ意味はない。ただ、その意思を、よく聴く者が必要だわ。それが、巫女様よ。あたくしが、初代の巫女様。リリカさんには、後を継いでもらう。」
「見え見えじゃないか。あんたの、独裁だろ。」
「違う。実際に違う。だから、あたくしは、女王そのものじゃない。わかる? 声は、他所からくる。」
「いや。意味深だけどな。・・・ふうん、誰かが、あんたを操ってる、ということかい。」
「そうね。否定はしない。肯定は出来ない。」
「ふん。ふん。不科学的だ。疑似科学と言っていい。」
「そうかなあ。女王は、リリカさんに、謎の解明を依頼した。それは、知ってるんでしょう?」
「らしいが、ぼくは、聞いてない。直にはね。リリカから、聞かされた。自分の正体を、ふるさとを調べ、特定するように、と。女王は、リリカに指示した。」
「そうよ。ただし、指示じゃない。依頼よ。多くの報酬を払うのだも。」
「はあ、どんな報酬?」
「ひ・み・つ。」
「・・・・・あ~~~~~あ。ばかばかしい。あんた、ここの施設見て回ったのかい?」
「いいえ、これから、見て回りましょう。案内してくださる?」
「いいよ。まったく、よく、こんなもの、作ったもんだ。つっこみどころ満載で、矛盾だらけだけど。よくは出来てる。」
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