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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第2章 第5回


  ************   ************



 火星の未来は、事実上ダレルに任せられた。


 もう少し、立ち入ったことを言ってしまえば、リリカは身を引いたのだ。


 リリカもダレルも、不死化の処置を受けている。


 自然な状態ならば、宇宙が存在する限りは死なないはずである。


 少々の、いや、かなり大きな外傷を受けても、体自体が完治させてしまう。


 どこまでやったら、もう再生できないのか、については、実は分かっていない。


 それを知るためには、人体実験が不可欠だが、リリカは行わなかった。


 ブリューリも、食料に関すること以外は、さほど興味はなかった。


 ブリューリに支配されていた火星の女王も、さほど気にはしなかった。


 それは、内部に事実上幽閉された本体が、気にしなくなっていたからだ。


 ここらあたりは、非常に重要な問題だったのだが、結局のところ、火星人も金星人も突き詰めなかった。


 それを、徹底的に追及したのは、はるか後の時代の、デラベラリ先生直系の子孫なのである。





 ダレルは、火星の地下に未来を託すことにした火星人を、二つのグループに分ける必要があった。


 廃墟となり、あまりに放射線がきつすぎて、当面は住めない火星の表面を《冷やす》ために、また。一定の子孫を残すために、活動し続ける火星人。


 訪れるかどうかわからない、復興後まで、長い長い寝むりを続けることを仕事とする火星人。


 もちろん、希望は聞いたうえで、最終的には、ダレルと、側近のソーが振り分けた。


 火星上での活動は、その範囲が限られるが、次第にそのレベルは高められるはずだ。


 しかし、火星上のさまざまな施設は、壊滅状態だった。


 もちろん、金星のママの仕業も大きかったが、もともと、巨大火山の破局噴火で、いったん文明の崩壊は避けられない状況だった。


 多くの市民に説明する前に、ママが、すべてを壊してしまったわけだ。


 火星の完全な再興には、これから登場するはずの『地球人』が、最後の腕を振るうことになるであろう。


 ダレルは、その期間を、おおよそ、2億年から3億年と踏んだ。

 


 ときに、ダレルは、いまでも、ずっと疑問を抱いている。


『ほんとうに、ママの老化が原因なのか?』


 たしかに、ママの機能の麻痺が原因だったには違いない。


 問題は、『金星のママ』は、誰かに壊されたのではないか?


 という、疑問である。


 犯人は、女王か、あるいは、ビューナス以外には考えられない。


 もちろん、ビュリアには尋ねたが、彼女はこう言った。


『あたくしが、女王本体だということは、まったく言えません。しかし、その一部ではあります。ただ、その真実は、知りません。』



   ************   ************



 リリカは、自分が女王に、たびたび、洗脳されていることは、分かっているが、どこをどう、いじくられているかということは、知る由もない。


 だから、火星をダレルに任せて、自分は、太陽系の最果てに移動するということに決めたのが、女王の指示なのか、単に、自分が疲れただけなのかは、はっきりとは言い切れなかった。


 はっきりしているのは、自分は、女王様には、最終的には、必ず従うべきだということである。


 そこは、アリーシャも同じだ。


 不感応者で、常に女王やブリューリとぶつかってきたダレルとソー。


 一方で、女王の忠実な部下だった、リリカとアリーシャが、なんで、あの二人と、こんなにもうまく共同作業が出来て来たのかは、まあ、はた目にもそうだが、奇跡みたいなものだ。


 リリカは、女王自身が、地球の直接支配は、止めようとしているのを見て、自分もそうであるべきだと、考えた。


 そう思うのが、もっとも、適当な解釈のように思われたのだ。


 だから、リリカは、『第9惑星』にも関わるつもりはなかった。


 同じ太陽系の最果てとはいえ、それはまったく交わらない軌道上同士であり、直接的には繋がりを持たなかったのだ。


 とはいえ、リリカが、まったく、火星人や金星人の植民地に興味がない訳ではなく、データの収集は怠らなかったが。



    ************   ************



 もうひとりのリリカは、約束どおり、月の向こう側に居を構え、研究生活に明け暮れていた。


 しかし、彼女の特殊性は、はっきりしている。


 それは、ビュリアとは、緊密に連携していたと言う事だ。


 月の研究所は、王国の飛び地、みたいな感じになった。


 それぞれの道に分かれるにあたって、ビュリアは、こうした、幹部みなに『タルレジャ教』の教徒であってほしいと要望した。


 それは、どこに行ったかわからない、『女王本体の意志』で、あったから、と。



 ダレルは、気に入らなかった。


 神の存在を前提とする『宗教』というありかたには、あまり賛同できなかった。


 しかし、ソ-は、そのほうが、今後、火星の民の統合にあたっても、やがて訪れるであろう、地球の統合にも、なにかと都合が良いかもしれない、と進言してきた。


 最終的に、ダレルは受け入れた。


 もっとも、まったく、よい信者ではなかったが。


 ただ、それなりに、権力を握っている以上、ダレルは重要な立場になることは、間違いなかった。


 リリカには、そもそも、断わる理由はなかった。



 しかし、この『宗教的問題』は、地球最初の王国だった『タルレジャ王国』に、はじめての、重大な危機をもたらすものとなったのである。



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