わたしの永遠の故郷をさがして 《第三部》 第2章 第4回
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ブル博士は、罪人は徹底的に裁くべきだと言う。
もちろん、同意する人たちもいたが、大方の人間たちの意向は、違っていた。
とにかく、はやく落ち着いた生活をしたい。
と、いうことだった。
そこで、ビュリアの王国に希望者が殺到するかとも、思われたのだが、そこは、そうでもなかった。
時は、二億五千万年前の地球である。
石炭紀の後半から、ペルム紀に移って行くあたりだが、優れた文明を誇った、火星や金星の人類にとっては、住みやすい環境とは言えなかった。
しかも、そもそも、ビュリアの『地球所有』が無期限に認められたことも、人びとが、あまり地球の未来に期待を寄せていなかったことがわかるというものだ。
巨大な怪物が闊歩し、しかも、その発達は、自然に任せると言うことから、彼らが生きていられるのは、ビュリアの小さな王国だけである。
未来は、遠く、何も見えない。
そこには、今の時点では、なにもない。
火星の王宮と、付属施設、それに『温泉地球』と火星の『出張所』。
それから『ホテル』と、その分館が威容を誇るが、文明の香りがするのは、それだけだ。
さらにまた、自然の猛威は、凄まじいモノであった。
ただ、『魔女ビュリア』に期待をいだき、それまで、あまり縁のなかった『宗教』というものと、『神』を受け入れることができるのか、できないのか。
そういう問題もあった。
これは、誇り高き火星人や、金星人にとっては、大きな問題である。
永く、ブリューリと女王の支配下にあった火星人にとって、それを超える存在を想定することは、容易なことではない。
金星人も似たようなもので、ビューナスを超える存在が、あるはずがなかった。
ただ、そこは、ビュリアが上手い仕組みを、用意してはいたのだが。
まあ、時間がかかる。気の長い話だ。
何と言って͡も、何もないところから、食用の植物を育て、高たんぱくな食料を調達できるのか?
火星の地下世界は、確かに暗く、どうなるやらわからないが、最先端の文明を、そのまま持ち込んでゆくのだという。
巨大な地下都市は、完成していた。
だから、最初しばらくは、窮屈だが、生活そのものはそれほど無理はないはずだ。
ただし、大気も地質も、汚染され、その大気自体が、大きく変わってしまうことは目に見えていた。
火星の巨大火山が、破滅的噴火を起こしたのは、もう、移住直後である。
火星も、金星のような死の惑星に、いったんは返ることは、明らかだった。
人口も人材も少なくなったし、再び、豊かな火星を取り戻すには、長い時間がかかりそうだった。
それでも、故郷の再興こそが、使命だと言う、ダレルに共感するものも多かった。
一方、土星の衛星、タイタンや、木星の衛星のいくつかについては、すでに基礎的な生活基盤があった。
特に、大きな開拓作業が待ち受けていたわけではない。
アニーさんが、さっさと片付けてしまったのである。
まあ、1000年くらいは、維持できる。
問題は、その先である。
後に地球人が『第9惑星』と呼ぶようになる、暗黒の惑星は、逆に、『開拓』そのものである。
ここには、『光人間』を生み出す、大きな要因がある。
それは、考えようにもよるが、非常に危険だった。
この星の移住者には、すでに、存在していた、その『危険』が、直に見えてはいなかった。
にもかかわらず、ここは、資源の宝庫だということも、分かっていた。
『光人間化』を促す放射線の遮蔽をすることが、実際にできる、ということも、すでに分かってきていたし、その技術は、金星側が所有していた。
だから、ここでは、金星人が主導権を取ることになっている。
しかも、開拓した分が、大方、貰えてしまうんだという。
そういうのは、ある人々にとっては、たいへん魅力的だった。
それから、はるか彼方、といっても、宇宙警部にとっては、ご近所そのものだったが・・・。
『アリファ・ケンタウリ』、などと、後に地球人に呼ばれるあたりは、『宇宙クジラ』の根城である。
最前線、と言っても良い。
ただし、彼らの本拠地がどこなのかは、まったく、秘密のままである。
その、彼らが、『一緒に、このあたりを開拓しよう』、と、申し出ていたのだ。
これには、今のところ、『太陽系』側には、『アブラシオ』と、宇宙警部の『警察署』しか、輸送手段がない。
金星の軍艦の一部なら可能だったが、おおかた、みな、時空の彼方に消えてしまった。
残った、空間移動機能付きの軍艦は、まあ、使えない事はないが、かなり破損してもいた。
肝心のブラックボックスは、地球人には、扱えなかったのだ。
ただし、『第9惑星の宇宙ステーション』ならば、到達できるが、こいつは他に代わりになるものがない。
結果的には『アブラシオ』が、大方の、その役割を担うことになったったのである。
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会議は、紛糾に紛糾を重ねはしたが、予定の3倍以上かけて、なんとか終結した。
そうして、最後の二日間の大パーティーをもって、長い会議は終了し、みな、順次それぞれが選んだ行先に、旅立っていったのである。
その最後の晩のことは、永く伝説となるような、まさに、壮大な宴会となった。
しかし、時間は、無慈悲なものだ。
現在の地球では、そうした痕跡は、まったく発見されていない。
ただし、タルレジャ王国と、『真の都』には、その時の映像などが、残されているという。
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*************** ふろく ***************
2020年の新年会は、凄まじいものとなったのです。
物語の登場人物が、ほぼ全員やって来たのでありますから。
やましんは、すっかり、埋もれてしまいました。
「やれやれ・・・まあ、こうなるよなあ。必然さ。」
どんな宴会でも、やましんは、ひとりぼっちになるのです。
かならず、そうなるのです。
まさに、物理の法則みたいなものであります。
時々、流れ星か、すいせいのように、誰かが、軌道を少しそれて、お茶などを入れに来るが、長くとどまることはない。(やましんは、お酒を、年に一回しか、飲みません。)
やましんが、クラシック音楽の話を始めたら、もう、大変だし、それ以外には、やましんには、話題がない。
サッカーとラグビーの区別も、あまりつかないやつですからね。
まあ、仕方がない事です。
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