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わたしの永遠の故郷をさがして 《第三部》 第2章 第3回



   ************   ************



 あの会議は、予定をかなり超えても、終結の見込みがなかなか立たなかった。


 開始当初は、むしろ、思っていた以上に比較的静穏に進んだ。


 それは、女王による火星人の統制がまだ十分効いていたからであり、金星人にとっては、母星の崩壊があまりに劇的で、しかも絶対的な支配者だったビューナスが消滅したという事実が、なかなか受け入れがたかったからでもある。


 しかし、日を追うごとに、自分たちが置かれてしまった状況を作ったのは誰なのか?


 ということが、明らかになってくるにつけ、許しがたい怒りとか、どうにもならないあきらめとか、火星人と金星人の間に長年溜まったわだかまりとか、一方で、過去は過去、これからどうするかが一番だ、という進歩派まで、さまざまな意見が吹きあがって、まとまらなくなってしまったのである。


「この自体を招いた、もともとの元凶は、あきらかに、『宇宙怪物ブリューリ』なのです。そこを見過ごしてはならない。そうして、ブリューリは火星で幽閉された。永遠にですよ。」


 ダレルは、なんとか全体的な説得と、総括的な結論は出したかった。


 すべてを納得させることは不可能だ。


 大多数が、『まあ仕方がない』というところが得られれば、それで十分なのだ。


 実際、会議の一方では、各自が、会議の後どうしたいのか、の希望の提出が、進んでいた。


 太陽系内への移住希望者。


 それも、さまざまな選択肢はあった。


 火星の地下都市に潜る。


 火星の二つの衛星に移住する。


 木星、土星、という巨大ガス惑星のいくつかの衛星を開拓する。


 もちろん、人気だったのは、水が豊富なエウロパだった。


 太陽系の水星よりも大きな、ガニュメデも人気だった。


 海王星のトリトンもそれについで人気があった。


 一方で、最果ての外縁部にある無数の小惑星を望んだのは、リリカだった。


 彼女は、外縁部に人類の一大拠点を作りたいと宣言していたのだ。


 『第9惑星』は、もちろん、人気薄だった。


 それでも、将来性を買う人がいるにはいた。


 その未来は、まあまだ、語るには早いのだろう。



 太陽系の外に新天地を求める人もいた。


 『宇宙クジラ』が、100万人くらいなら、受け入れる用意がある、と、『宇宙警部』を通じて申し出ていたのである。


 地球に関しては、ビュリアが所有権を強く主張していたし、反対意見もあったのだが、どうやら議決の結果、これは認められることになった。


 彼女は、女王へレナの財産と、力を受け継いでいると言う。


 ならば、ビュリアにも責任があるはずだ、という意見もかなりあったのだが、多数派にはならなかった。


 彼女が地球に作る(というより、すでにできていたが)『タルレジャ教集団』の施設に入りたいと思う人は、しだいに増加していたのだ。


 地球が人間にとって、非常に住みやすい環境だと言うことは、みなよくわかったわけだ。


 しかし、ビュリアという『魔法使い』には、警戒心を強く持つ人もあった(ブル博士もそうだ。彼はビュリアへの共感よりも、猜疑心の方から、地球に残りたいと考えたのである。)。


 また、宗教団体というものに、金星人は割合に親しみがあったが、(だいたいビューナス自身が、そうした存在だったのだから。)火星人には、まったく馴染みがなく、警戒もされたのである。



 いずれにせよ、この『太陽系史上最大の災厄』の最大の犯人は、まず『怪物ブリューリである』。


 それは、ほぼ満場の一致で確認された。


 次が、『火星の女王ヘレナ』である。


 やっかいなのは、両方とも、いなくなっていることだ。


 ブリューリは、すでに火星上に永遠に幽閉されたという。


 その場所がどこなのかについては、『今後の安全の為にも、公表はしない。』


 そう、ダレル副首相は述べた。


 リリカ首相も同意した。


 それが、後日地球上で話題になる、自然による『不可思議な彫像』の丁度真下にあったということは、ほとんど追加の話である。


 女王へレナは、遥かな宇宙に去ったという。


 しかし、このあたりの情報は、すでに、錯綜していた。


 ビュリアは、自分が女王の力を受け継ぐものだと主張していたわけだし、本来、『不滅の女王』なのだから、いつどこから再び現れてもおかしくない。


 誰に、憑依したって、誰にも分らない。



 だから、『女王』に対する戒めのような法律が必要だと主張したのがブル博士である。


 再来しても、その権威は認めない。


 再来したら、捕獲する。


 再来したら、重罪に処す。



 宇宙警部は『部外者による意見だが・・・・・・』


 としながら、こう言った。


「無駄ですよ。すべて。きっとね。」


「いいや。そうじゃない、本人に対してよりは、地球人や火星人、金星人に残すための遺訓だよ。」


 教授は主張し、これは大方の支持を得て、採択されたのである。



 『金星のママ』についても、もちろん、問題となった。


「大体、他人の身体を、横領する行為自体が、すでに違法だ。このような『魔術的』な力の作用は、あるべきではない。彼女は処刑されるべきだ、あるいは、ブリューリと同じ環境に置かれるべきである。」


 ブル教授は、そう、要求した。


 しかし、金星人たちは、意外にも同意しなかった。


 『ママ』が金星に果たした功績は大きい。


 そう主張したのだ。


 そこで、『ママ』の乗り移った体の本人自身を呼び出すことになり、その役割は、当然ビュリアが果たしたのだ。


 結局、本人が、『ママ』との同居を受け入れたため(これにはブル博士は当然異論を唱えた。でっちあげに決まっている!と。)、毎月、10日間は、ママは疑似体に移り、本人が自由になることを条件にして、これは承諾されたのである。



 『ママ』に関する正式な議決があったのは、これが、最初で最後だったのだ。


 


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