わたしの永遠の故郷をさがして 第3部 第2章 第14回
ダレルは、火星の衛星にぽつんとある、古い別荘に入った。
侵入というわけではない。
アニーさんは、きっちり管理を続けているわけだから。
しかし、ヘレナの姿が見えなくなっているいま、アニーさんは、誰の指示を受けているのだろうか? と、当たり前のことを、考えた。
「いやいや、ヘレナは人ではないからな。単なる意志だが、なにが意思を形成するのかいまだに分からない。もっとも神様ではない。本人がそう言うのだからな。自分は神様ではない、という神様があるとはおもえない。ここで何を探すのかも分からないが。つまり、分からないものだ。さて?」
ダレルは、はるかな昔には、ここに来たことがある。
母と息子、という関係があったのは、ほんの短期間に過ぎない。
本当の父親は分からない。女王ヘレナにとって、それはまったくの問題外だった。
けれど、アニーさんは、知っているはずだ。
「アニーさん、ぼくの真の父親は誰なのかな?」
ダレルは、とぼけたように尋ねた。
すると、アニーさんは、さらに輪をかけて、とぼけたように答えた。
「管轄外です。」
「管轄外? アニーさんは、オールマイティーだろ。知らぬはずはなし。」
「知らないことは、いくらでも作れます。あなたもそうでしょう?」
「知らなくてよいことと、よくないことがある。」
「回答不能。」
「ちぇ。やなやつだ。いいさ、探しだしてやるさ。ここには、アニーさんが知り得ない場所があるはずだ。」
「・・・・・・・・・・」
アニーさんは、無視をした。
ダレルには、あいまいな記憶しかない。
しかし、ヘレナとふたりで、確かに、秘密の部屋を作った覚えがある。
「アニーさんも見つけられない秘密の部屋。」
ヘレナが上機嫌で幼いダレルに言った。
「そんなこと、できるの?」
「わたしにできないことは、ほぼ、ないわ。」
「すごいねー。」
「この世の因果関係から無縁な場所。あなたとわたし以外は誰も入れない場所。アニーさんも、分からない場所。」
「すごいけど、なにをする場所?」
「隠し事をする場所よ。」
「なにを、かくすの?」
「しられたくないこと。かな。」
「ふーん。」
たしかに、その部屋は、作ったが、ヘレナが何を隠したか、自分が何を隠したかは、今となっては分からないのだ。
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