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わたしの永遠の故郷をさがして 《第三部》 第2章 第1回


 ************   ************



 タルレジャ王国創立から10年が経過した。


 パル君は立派な青年となり、『国王』としての職務も着実に果たしていた。


 一方、ビュリアはタルレジャ教団の初代『巫女様』となり、体内に住み着いたままのヘレナに操られながらも、適度に独自性をも発揮して、最初期の『タルレジャ教団』をがっちりと固めていた。


 火星と金星、両文明の滅亡を、直に目の当たりにした人たちが、いまだ信者の大部分を占めており、様々な異なる事情を抱えてはいたが、全体的な士気は非常に高かった。


 それでも、ビュリアが持つ稀有な能力の助けを、借りなければならないこともあった。


 激しく活動する地球が引き起こす大自然災害、いつ直撃するかわからない隕石の攻撃。


 宇宙空間に残っていた、ミュータントや反乱分子たちからの攻撃。


 まあ、危ない事は、この10年間だけでも、ずいぶんたくさん起こったのである。


 ひとつひとつを、とにかくも、みんなで協力しながら乗り越えてきたのだ。


 タルレジャ教団の『教母』様は、金星の『ママ』が乗り移った状態のアバラジュラである。


 この先、はるか2億5千万年を超えて、『ママ』は体を入れ替えながら、『教母』さまを続けてゆくことになる。


 ヘレナは、金星で起こった、『ママ』の認知症の原因を解明して、再びああした事態が起こらないように手を打ってしまった。


 だから、あのような事件は、もう起こらないはずだった。


 王国は、当初から民主制を採用した『南島』と、『教団』独裁体制の『北島』とに分かれていた。


 この形は、遥かな未来にまで、受け継がれて行くことになる。 


 『タルレジャ国王』は、もちろん王国全体の『国王』だが、南島の政府に介入する権限は最初からなく、また北島の教団の権威に対抗することも、通常はしなかった。


 しかし、『北島』に関しては、もしパル君・・・『国王』が、どうしても認められない事故や事件、事例が発生した場合は、『巫女様』に対して異議を申し立て、それでも、まとまらない場合は、最終的には『国王』の意志を通す権限があった。


 こうした権限は、やがて制限されて行くことになる。 


 ただ、このあたりのことは、まだ、相当好い加減で、あいまいなままで、あまりきっちりとは決められていなかったのである。


 ビュリアは、そこまで決めておく必要性を、この時期には感じてはいなかったのだ。

 

 みな、気心が知れた人たちばかりだったことと、火星での自らの行いを、感情のないヘレナが、ビュリアを通じてではあるが、かなり恥じていたためでもある。


 しかし、ビュリアは、未来に関する情報を、すでに持っていたことも忘れてはならない。


 ただ、その内容については、結局は『ヘレナ』が、すべて握っていたわけだ。


 南島の政府は、ニコラニデスが予定通り初代首相として選任され、高齢ながら、金星での豊かな経験があり、狡猾な策士でもある、ガヤ・カタクリニウクが副首相に任命されていた。


 マヤコは、『住民代表者』という、事実上の副首相相当ポストに就いていた。


 本当は、『副首相兼民生大臣』という名称になるはずだったが、マヤコがどうしても『大臣』なんて、やぼなものは絶対にいやだと言って譲らなかったのである。


 だから、マヤコはその後も、自分は『大臣』経験者であるとは、つゆほども考えたことはない。


 政府の『お手伝いはしたよ。昔にね。』、くらいに、後年になってからは言っていた。


 『科学文化大臣』は、ブル博士、『教育大臣』にジュアル博士が就任。


 『安全管理大臣』に、カシャが任命されていた。


 カシャは、その時点では、まだ『青い絆』の代表者でもあった。


 つまり、『青い絆』は、地球に誕生した小さな王国の合同統治者の一端を握ったわけだった。


 しかし、それは、彼らの本来の目的ではないものだとも言えるのだった。


 だから、当然反発する者も出てくる。


 彼らは、実際のところ、地球に不要なちょっかいを出してくる、宇宙に残っている『テロリスト』たちの始末を、期待されていたのだ。


 また、当初、だから専任副首相は1名だったが、途中から1名増員されて、カイ・ガイクンダが充てられた。


 ビュリアの肉体の、『父親』である。


 これは、ニコラニデスが、その、『業務量の膨大さ』を見て、改善を図りたいと言い出したからだった、とされている。


 しかし、そこにはニコラニデスとカタクリニウクとの確執が、すでに絡んでいた。


 ニコラニデスは、徐々にではあったが、老いてますます元気なカタクリニウクの、追い落としを狙っていた。


 まずは、自分の地位が、どうやら危ないと、次第に認識していたからである。


 なお、首相に緊急の事故が生じた場合の、『臨時首相代行』者には、マヤコが指名されていた。


 これには、パル君の意志が背景にあったらしいと言われているが、一番反対者が出ない選択でもあった。


 にもかかわらず、これが、やがて『王国』を危機から救い出す『キー』になったのだ。 


 そうして、間もなく、あの『カタクリニウクの乱』と呼ばれる、大事件が発生することになったのである。



  **********     **********



 『南島』の大臣たちの任期は、王国創立期であることからも、当初15年、と決められていた。


 15年後に、最初の総選挙が行われることと、あの『会議』で決まっていたのだ。


 これについては、国王のパル君に、ただ一度きりの特別な権限が与えられていた。


 もし、15年経って、総選挙を実施することが、王国にとって正しい選択ではない、とパル君が認識した場合、『巫女様』と『教母様』の同意の元、1回だけ延期ができる。


 そう、臨時特例法で決められていた。


 ただし伸ばせるのは、5年間までで、1回だけの権限である。


 また、ここでいう1年は、かつての火星の1年ではもはやなく、地球時間に標準が移されていた。


 まあ、あまり大きな差ではなかったが。


 

 ********   ********   ********



 そこで、この後、しばらくは、あの『会議』の時に、少し話を戻そう。


 我々は、非常に大切な存在の話しを、いくつか落としたままにしている。


 まずは、『光人間』たちである。


 特に、国王パル君の母親である、ウナのことだ。


 また、ウナは一人だけでパル君を、生んだわけではない。


 さらに、光人間の親玉である、アレクシスとレイミのことも、非常に重要な事項だ。


 太陽系内に分散した火星と金星からの移住者たちのこともあるし、アダモスと共に太陽系から脱出した人たちの事もある。


 そこは、『宇宙クジラ』たちの支配地域である。


 さらに、火星の地下に潜った人たちのことが、その数の多さから言っても、さらに未来の地球人にとっても、実に重要なことであることは言うまでもないだろう。


 異宇宙に消えた、金星の『空中都市群』のことを語るのは、まだまだ、はるか先の問題である。


 さらに、警部『2051』の事も加える必要がある。


 警部は、ビュリアが好きだった。


 つまり、『愛していた』、と、言うべきなのだろう。


 彼は、実はその恋の告白を『会議』の終わりになって、ついに実行したのだが、それがどうなったのかも、話しをしなければならないだろう。


 さらに、最大の問題は、火星首相リリカと、副首相ダレルの動向である。


 このふたりは、地球政府に表立っての関係はしなかった。


 ダレルは、長く火星の地下を本拠地として、火星人を統べることとなり、リリカは、大好きな極寒の太陽系の外縁部に居を据えることになる。


 それでも、ふたりは助けあいながらも反発もしあい、なかなか簡単な関係ではなかった。


 また、直接内政に関与はしなかったが、地球との関係は、常に重要事項だったし、ダレルには『火星再興』という絶対的な課題があった。


 リリカは、その点には、それほどのこだわりは持ってはいなかった。


 太陽から一番近い、地球名『水星』から『火星』までの関連事項は、ダレルが管轄し、木星から太陽系の端っこまではリリカが担当することに決めた。


 ただし、この時決めたのは、『所有権』の問題ではなかった。


 『管理』の問題である。


 『所有権』の話は、実は大変込み入った話でもある。


 例えば、地球全体は、火星と金星の法律上では女王ヘレナから『ビュリア』個人にすでに所有権が移されている。


 これは、あくまで、ビュリアに帰するものであり、彼女が生きている限り、その法が有効であると認識される限りにおいて、『地球』はすべて、ビュリア個人の持ち物である。


 ビュリアが命を失うか、誰かに所有権を公式に移せば、話は変わる。


 これは、実は大変な事柄である。


 ビュリアの後継者は、いったい誰なのか。


 という事に、なるわけである。


 つまりは、ビュリアは、その後いったいどうなったのか、という事でもある。


 リリカとダレルは、女王ヘレナの命によって、永遠の命を与えられている。


 この宇宙がある限り、この二人は肉体的に不滅である。


 複写のリリカも、それを受け継いでいる。


 しかし、ビュリアはどうなのだろうか?


 誰も、その事実を、知らないでいるようだ。  


 一方、太陽系全体は、金星の管轄地域と地球の付属物(つまり、地球の衛星『月』である。)を除いて、太陽も含めて、すべて本来、永く『女王ヘレナ』の所有物とされていた。


 金星と火星の文明が、女王ヘレナに支配されて以来、ずっとそうだったのだ。


 しかし、その『ヘレナ』が、公式には行方知れずになってしまった。


 それでも、法律上、この規定には、なんと、期限がなかったのだ。


 だから、2憶五千万年後になっても、火星と金星の法律上は、女王ヘレナの所有権は、まったく変わらない事だったのだ。(もっとも、金星の空中都市がどうなっているかなんて、ヘレナ以外は誰も知らなかったわけだ。)


 また、『ヘレナ自身』も、当然、そう認識していた。


 なにしろ、『ヘレナ』が作った法なのだから。


 地球人が台頭して来たあとも、『ヘレナ自身』の、基本的な認識は変わった訳ではないのだった。


 ただ、地球人に関しては、彼らがそこまで認識できる能力が備わるまでは、無条件に『貸しておく』状態になっただけ、の事なのであり、遥かな未来に地球人はその事実を『認識』させられる時が来ることになるはず、だったのだ。


 しかし、大体『ヘレナ』の『実体』というものは、いったい、本当にあるのか、また、それはどこにいるのか、ということ自体が、その時もまだまったく謎のままで、それは遥かな先までずっと、残されてもいたのである。


 ついでに、あえて付け加えれば、ヘレナ自身が、自分の正体については、まったく分かっていなかったということが、重要な事実である。


 リリカは、その真実を見つけるように、ヘレナから命じられていたのだから。 


 また、アニーさんが言うように『ヘレナはひとりではない・・・』のだとしたら、(実際そうだったわけだが)どこに真実があるのか。


 その、『宇宙生態コンピューター』と呼ばれる、ヘレナの相棒アニーさんは、『会議』終了時には、まだ半分以上機能を破壊されて、回復していない状態のままだった。


 また、月の裏側に研究所を設けた、『複写のリリカ』は、その後どうなったのか?


 『青い絆』のアンナは、カシャの妻となったが、どのような活躍をしたのか?


 『ド・カイヤ集団』の事実上ボスであるポプリスと、その夫、キラール公は、どうなったのか?


 『宇宙海賊』たちの行く末はどうだったのか?


 ほかにも、ババヌッキ社長という、きわめて重要な人物がいる。



 そういうことなので、なかなかこの先に進むのは大変なのではあるが、いったん時間を戻した後、さらに『カタクリニウクの乱』まで、ともかく話しを進めなければならない。



 ************   ************

















 


 












 ************  余談コーナー  ************



「ねえ、ねえ、やましんさん、ちゃんとわかって書いてる?」


 お饅頭をお口にくわえて、お酒ぱっくをすすりながら、また、幸子さんが言いました。


「そりゃあ、もちろん、そうですよ。」


「ほんとかなあ? あやしいなあ。」


 崖っぷちです、なんて、言える訳がないでしょ。


「崖っぷちなんじゃないんですかあ?」


「うわ。なんで、また。」


「だって、そんな感じだもん。女王様から言われたんです。やましんさんが、こう・・・したお顔をしたら、悩んでるって。」


 幸子さんのお口が、ぷ~~~~っと膨れました。


「むむむ。それは、真剣な顔ですよお。」


「ふう~~~~~~む。真剣ですかあ。」


「そう、真剣。」


「やましんさんが、真剣になることもあるのかあ。いつも冗談で生きてる感じだからな。」


「あのね、幸子さん。冗談だって、真剣に言うものなのです!」


「ふうん・・・女王様に聞いてみます。」


「いえ、聞かなくて、いいです。冗談です。」




 ************   ************


























 








 















 










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