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煙草を煮る

作者: 千迅

煙草を煮る。


ぐつぐつと煮立つ烏龍茶みたいな煮汁を割箸で掻きまわす。

葉っぱやフィルターがグシャグシャになって割箸に付く。今になって分解して葉っぱだけ入れればよかったと後悔する。でも、いつもそうだから本当に後悔することはあんまりない。


右手に割箸、左手に煙草、目の前でぐつぐつと煮立っている鍋。

自殺するなら親も寝静まった夜中だろ。なんで、夕食が終わって、家族団欒でテレビ見て笑ってる声ん聞きながら、と思ったけど、思い立ったのが夕食を食べたあとだったので仕方ない。

母親の笑ってる声を聞いて悲しくなる。娘が自殺するために煙草をコトコト煮込んでるのに母さんは気付かず笑ってんのか、と責めたくもなる。

とりあえず、なにもかもがシャクに障って腹立だしくて悲しい。これは全部慎吾さんのせいだ。

慎吾さんが好きだから煙草はいけないと注意したのに、関係ないって。関係なくはない。私は、慎吾さんの後輩で、マネージャーで、あと、なんだろう。とりあえず、関係なくはない。

普段、吸おうとも思わない煙草の煙を肺いっぱいに含ませて、吐き出す。咳き込むかと思ったら案外普通で、慎吾さんも吸えるわけだと思った。でも、煙が目に染みて涙が出た。

私と慎吾さんの関係が2つしか思いつけない自分が腹立だしい。ドキドキしながらコンビニで慎吾さんと同じ銘柄の煙草を買って、少し興奮して帰ったのが馬鹿らしく感じる。

慎吾さんと同じ銘柄の煙草で自殺するのがとても素敵だと思い付いた自分の考えも馬鹿らしい。

ついに換気が負け、台所いっぱいに異臭が漂う。鍋の中にも19本のフィルターと茶色く染まった紙が漂っている。

それをコーヒーフィルターで濾過して、ペットボトルに入れた。


烏龍茶よりも濃い茶色。


体に凄く悪い物質が含まれているだろう茶色。



慎吾さんの肺もこんな色なんだろうか。そう思ったら、それが少し愛しくなった。







 20080908

(でも、いつもそうだから本当に後悔することはあんまりない。)

最後まで読んで下さってありがとうございます。

誤字・脱字など、なにかありましたら評価やコメントにて教えて下さると嬉しいです。


検索ワードがネタバレしていますね。あわわ。


20080908 千迅

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