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RALE  作者: たけちる
第一章
6/10

05話 身体能力

更新遅くなりました、申し訳ありません。


 俺は部屋の隅に座りぼっちを堪能していた。べ、別に寂しくなんかねーし。

 他の生徒達は皆既にそれぞれ友達がいるようで、各々話し込んでいた。

 やることがなくて暇だった(寂しいわけじゃないんだからね?)ので、聞き耳を立ててみる。

 すると、俺のことを非難している者が大半だった。よそ者だとか、格好が汚いだとか、シノビの風格がないだとか、弱そうだとか。あれほとんどディスってるだけだよね?これ。

 別に動揺なんてしていない。なんたって俺はこいつらより年上だからな。はっはっは。

 ああ悲しくなってきた。俺はこんな場所でやっていけるのだろうか。まあいざとなったら抜け出すか...。スイシンには悪いけどな。


 しばらくすると、黒い装束を身に纏い左目に眼帯をつけた細身の男性が部屋に入ってきた。


(忍者+眼帯とか、こいつまさか写○眼とか持ってたりするのか?)


 とか思ってたら、その男が口を開いた。


「俺の名はサワだ。まあみんな知ってると思うが今日は新しい顔がいるからもう一度名乗らせてもらった。まあ仮名だがな。皆は既に知ってるとは思うが、一人前のシノビになると真名(まな)が与えられる。そしてそれは家族と里長様にしか知られることはない。基本的には仮名(かな)で過ごすことになる。まあそんなとこで、誰か質問はあるか?」


 わざわざ何も知らない俺のために説明してくれた。すごく丁寧なヤツである。


「特にないようだな。それじゃそこの新人。お前の名前は?」


 急に話を振られて驚いたが、すぐとりなおして答えた。


「えっと、レイル...です」

「レイルか分かった。お前の仮名はレイルとする。お前にとっては自分の名を仮名と呼ばれるのは不本意かもしれないが、これは里の伝統だ、我慢してくれ。もちろん一人前になるなら真名を里長様から授かることだろう。」

「わかりました。ありがとうございます。」


 俺は控えめに返事をしておいた。


「ところでシノビには2種類いてな。剣術特化型か魔法特化型だ。お前はまだ入りたてだからどちらにでもなれる。好きな方を選ぶといい。」


 そう言われたが、俺は悩む必要はなかった。俺は魔法に関しては結構できていると自覚しているし、剣術というものに興味があったのだ。ほら日本刀とかってかっこいいじゃん。

 俺は答えた。


「剣術特化型でお願いします!」


 そう言うと周りの空気が落ち着いた気がしたが、まあ気のせいだろう。

 こうして鍛錬が始まることとなった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 サワによる一通りの説明の後、すぐ鍛錬の時間となった。

 俺は剣術特化型の鍛錬なので、魔法特化型の人たちとは別の場所で鍛錬を行うことになる。

 てっきりサワが指導してくれるものかと思ったが、サワは魔術特化型のシノビだそうで、剣術はからっきしなのだそうだ。


 そして現在シノビの間では魔法特化型が流行りらしい。剣術特化型のシノビは時代遅れと呼ばれがちな風潮にあるという。どうりで剣術特化型の鍛錬に参加する人数が少ないわけだ。俺を含めて2人しかいない。30人いた生徒達のほとんどは魔法特化型のシノビを目指しているそうだ。俺が剣術特化型の鍛錬を志望した際に周りの空気が落ち着いたのは気のせいではなかったようだ。厄介者が別のところに行くことで、関わらずに済むと感じたのだろう。

 その辺りのことは、今俺のことを鍛錬場へ案内してくれている、同じ剣術特化型の鍛錬に臨むテツが話してくれた。彼は少々小柄な男の子だった。なんというか、カワイイ系の? 俺は男の子を「かわいい」という言葉で評価することについてはよく分かんないけど、まあそんな感じだ。一人称は「ぼく」だったしな。


 テツは俺が質問すると、頬を少し紅潮させながらなんでも話してくれた。

 よそ者の俺が仲良くできるかは不安であったが、テツは気兼ねなく会話に乗ってくれた。むしろ積極的とも言えるくらいに。まあもともと蔑視されて来た剣術特化型のシノビだし、よそ者に対する抵抗とかは少ないのだろう。自分がほとんど同じ立場なようなもんだしな。


 そこでふと疑問に思い、剣術特化型のシノビはなぜ時代遅れと言われがちなのであるかを聞いてみた。すると、


「魔法の方が応用力があって射程も長いからだよ。本当に動きが速い人なら違うんだろうけど、普通は剣で近づく前にやられちゃうからね。ぼくも本当は魔法特化型が良かったんだけど、お父さんがね...。伝統を大切にする人で、『昔ながらの剣術しか認めん!』とか言うから仕方なく剣術の指導を受けてるんだ。」


 と苦笑いをしながら言っていた。テツは剣術特化型の鍛錬は嫌々やってやっているらしい。本当に剣術特化型のシノビは人気がないんだな。

 そうしてテツが愚痴をこぼしていると、急に上から声が聞こえた。


「テツ、お前はまたそれか!」

「げっ」


 聞こえた声に対してテツが反応すると、いきなり目の前に黒装束を着た男が現れた。

 その男はテツに話しかけた。


「いいか、剣術ってのはなあ、魔法なんてものよりいいところがたくさんあるんだ。お前の父さんは間違っていない。剣だって魔法に勝てる。剣で魔法に勝てないと思ってるのは鍛錬が足りてないからだ。今日は愚痴の罰として鍛錬のメニューをきつくする! 女の子の前でいいとこ見せたいだろう?」


 なんかコイツ途中まではカッコいいことを言ってたが、最後ので台無しだ。下心丸見えじゃんか。あと、俺中身男です。

 対してテツは途中までは気怠そうに話を聞いていた。特に鍛錬のメニューのくだりの時には本当に嫌そうな顔をしていた。すると最後の言葉でいきなりやる気を見せた。


(テツ...現金なやつだなあ...)


 俺は呆れながらそう思った。


 そして俺はこのいきなり現れた男を警戒していた。無魔法〈感知〉にて辺りを警戒していたのに、コイツの気配は全く感じられなかったからだ。自分の理解できない範疇にいる存在を警戒するのは当たり前だろ?

 なにせ俺の他には神と呼ばれる存在しか扱えないはずの魔法の〈空間掌握〉の網をくぐり抜けてきているのだ。この魔法は俺の扱える魔法の中では一番練度が高い魔法なので、実質俺はこの男に負けたも同然だった。

 ただ俺は、警戒と同時にその男の見せた技術に興味を惹かれていた。

 その男に声をかけられた。


「話は聞いてるよ、レイルってんだっけな。俺はショウアンだ。君はかわ...才能がありそうだから、俺がちゃんと指導して一流のシノビに育てあげるからな。まあ安心してくれ、さすがにテツと同じようなメニューは課さないさ。あいつは剣術の腕はからっきしだが体力馬鹿だからな。あいつと同じメニューでやってたら同年代の男子でもついてこれないさ。女の子なら尚更! 丁寧に指導するからこれからよろしくな!」


 こいつは相変わらず下心が丸見えである。世の女子達は、男子からこういう目を向けられる度、背筋が凍るような思いをしたんだろうか。元男の俺だが、正直言って気持ち悪い。

 てかテツ、あんなナリして体力馬鹿なのか。見た目体力全然なさそうなんだけどな。

 まあそれはいいとして、このショウアンって先生には教えてもらうことはたくさんありそうだから何も言わないでおく。好感度も上げておきたいしな。敵の多すぎる世界ってのは住みづらいからな。


「はい、ありがとうございます! よろしくお願いします!」


 そうして俺は満面の笑顔で返事をした。どんな人に対しても笑顔で明るく、こういう女子はモテやすいのである。まああんまり入り込まれすぎても困るけどね。なんたって元男だし。


 テツもショウアンも満更でもなさそうな顔をしていた。ウケはよかったようである。

 そのまま俺達は鍛錬場へ向かう。ショウアンが引率してくれた。

 そうして俺は、剣術特化型の試練に臨むことになった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 鍛錬場に着くと俺とテツの前を歩いていたショウアンが振り返り俺とテツに声をかけた。


「それでは鍛錬を開始する! まずは基礎体力訓練だ! テツはいつものメニューの二倍だ! さっき言った通りレイルにいいとこ見せろよ? んでレイル、お前は初めてだから特別メニューだ、俺が言った通り動いてもらう。いいな?」


 なんかさっきまでとは人が変わったようであった。仕事とプライベートはしっかり区切るタイプなのだろうか。俺はその辺りの区切りが上手くできなかったから勉強には結構苦労したもんだ。


「はい!」


 俺は返事をした。

 するとショウアンは「デヘヘ」とでも表現できるような表情をしている。前言撤回だ。所詮変態は変態だった。


 ショウアンによる俺への鍛錬が始まった。テツは遠くの方で一人で体力トレーニングをしている。


「よし、とりあえずこれを抜いてみろ。」


 そうして示されたのは鍛錬場の隅の土に差さった何の変哲も無い木刀であった。俺はそれを抜きショウアンに指示を求める。


「はい、抜きました! これをどうするんですかー?」


 そう問いかけてみても返事は返ってこなかった。俺は木刀へ向けていた目をショウアンに向けた。そうするとショウアンは何かありえないようなものを見る目でこちらを見ている。腕立て伏せをしながら遠くで俺の鍛錬の様子をチラチラ見ていたらしい(〈感知〉でその動きは把握していた)テツも何やら固まっている。腕立て伏せの途中の肘を曲げた態勢で。きつくないのかなあれ。


 30秒ほど経った後、ショウアンの驚きで開けっ放しだった口が動いた。声は出てないので何と言っているのかは正確には分からないが、推測しながら唇の動きを読み取ってみると、「あれを...抜いた...だと......」と言っていることが分かった。

 普通に木刀を持ち上げただけなんだけどな。何に驚いているのだろうか。


「あの...どうしたんですか? 普通に木刀を抜いただけなんですけど...。私の顔に何か付いてます?」


 俺がそう言うと、ショウアンはやっと正気に戻ったのか話し始めた。


「お前、これはただの木刀じゃないんだぞ? ミツバチの里の御神体である神樹の枝から削り出されたものなんだ。歴代の里長様でも誰一人として抜くことはできなかったんだぞ? それをお前は軽々と...。」


 ショウアンは呆れ半分、怯え半分といった目で俺を見てきた。

 どうやら俺はかなりの怪力だったらしい。今まで魔法しか使ってこなかったので知らなかったが。


 ちなみにテツはまだ例の姿勢で固まっていた。本当に体力馬鹿だった。

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