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RALE  作者: たけちる
第一章
4/10

03話 洞窟から脱出しよう

ブックマークと評価ありがとうございます!

励みになります!

 遂にこの日が来た。待ちに待った、洞窟の入り口が地上に現れる日である。

 本当に待ちわびていた。やっと外に出れるのだ。

 まあ名残惜しいって言えば名残惜しいかもしれない。イグニスには仲良くしてもらったしな。ちょっと寂しいかも。

 でもそれより俺は外に出たい。異世界なるものを体験してみたいのだ。洞窟に入る時と同じ、単なる好奇心である。

 イグニスのことはずっと覚えといてやろう。友達、って呼べるほどの仲かわかんないけどさ。1年間も同じ空間で語らい合った仲だ。いつか会いに来ようかな。


「それじゃあイグニス、1年間ありがとな! また会えたら会おうぜ! また1年間も閉じ込められるのは勘弁だけどな!」

『む。行ってしまうのか。ここもまた寂しくなるのう。次は何百年後になるのだ?』

「んーどうだろうな。数年後に会いに来ようかな。絶対洞窟の入り口見つけてやるよ!」

『おお! 頼んだぞ! 我が友よ! 嘘ついたらドラゴンブレス食らわせるからな! いいな? 絶対来るのだぞ! 絶対だぞ!』


 相変わらず寂しがり屋のドラゴンである。それにしてもドラゴンブレスってなんだよ。なんかヤバそうな雰囲気の名前だ。


 ところで実は俺は、もしかしたらコイツにかかっている封印を解くことができるかもしれないと考えている。

 というのも、俺はこの一年の鍛錬の結果、無魔法の〈空間掌握(ザ・ルーム)〉という魔法を習得していた。なんか瞬間移動でもできないかという考えのもと、練習していたらいつの間にかできてしまっていた魔法である。

 この魔法はその名前の通り空間を掌握する魔法で、目的であった空間同士の移動はもちろん、空間を指定して消滅させたりすることができる。

 本来人間が習得できないはずの無魔法を俺が習得できているのは謎だが、現実に習得できているので気にしてたらキリがない。


 現在いる洞窟は、特定の日以外は時空の狭間をさまよっているらしいが、これを俺の空間魔法で上書きできるのではないか、という魂胆だ。

 やり方は、まず俺が外に出て、洞窟を丸ごと他の場所に移動させる。それだけだ。

 空間魔法はある座標を起点としてそれを別の座標に上書きするものであるから、一度空間魔法で移動させてしまったら時空の狭間にさまよわせる空間魔法は意味をなさなくなるのではないか、と考えたのだ。


 ただ成功するかどうかは不明なのでイグニスには伝えないでおく。

 成功したら御の字、失敗したら洞窟の入り口を探しまわればいいだけの話である。

 失敗したらのことを考えて、イグニスに余計な期待を持たせまいとした、俺なりの一応の配慮である。


「さて、そろそろ行きますかね。夜中になって出れなくなったら困るし。じゃあイグニス! またな!」

『どっちかというとワシはそっちの方が嬉しいのだが...。まあ良い! また会おうぞ! フハハ!』


 俺は振り返らず、手だけ振って洞窟を後にした。一回こういう退場の仕方やって見たかったんだよね。ほら日本でやったらただの恥ずかしい人じゃん?



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 洞窟を出た先は竹林だった。やはり一年前のものとは違った。移動しているのだ。

 それにしても久々の日光は眩しかった。それと同時に、心地よかった。


 洞窟を出るとすぐに、俺はさっき自分が出て来た入り口へ〈空間掌握〉を放った。洞窟全体をとりあえずぴったり180度回転させた位置に移動させる。

 とりあえず俺にできることは終わった。これで明日になって洞窟が消滅していなければ俺の試みは成功ということになる。


 それにしても腹が減った。洞窟の外には例の湖の水はないからな。適当に動物でも狩って焼いて食べてしまおうか。

 そう思い辺りを探索する。


 獲物はすぐ見つかった。

 全長1.5mほどのイノシシだ。この世界にも地球と同じような動物はいることに安心した。

 そう思いつつ、俺は魔法を放つ。水魔法〈水刃(ウォーターブレード)〉だ。

 これは限界まで集中力を高め、板状に圧縮させた水を放つ魔法だ。地球にあったウォーターカッターと同じくらいの威力が出る。岩など易々と切断できる。

 俺はこれを何度も反復練習し、何も考えずとも打てるようになっていた。得意魔法の中の一つだ。


 イノシシは頭と胴体が分断され、鈍い音を発しながら地面に崩れ落ちた。

 これで今日の食料は手に入れた。と思いきや、重大なことに気がついた。


(俺、解体とかできない... )


 とりあえず皮を剥いで内臓を取り出せばいいのだろうか。いや、まず一人で食べ切れそうにないから皮だけとって肉の部分だけ取り出してあとは捨てるか。中身とか見たくないしな...。

 ということで、今日食べる分の肉だけをイノシシから取り出し、あとは埋めておいた。


 ここからは調理タイムだ。火魔法で焼き上げるだけでいいかな?と思いきや、再び重大なことに気がついた。

 調味料がない。

 さすがにイノシシの肉は臭みが強い。何もなしってなると少々キツイものがあるな...。だが背に腹は変えられない。

 俺は我慢しつつ、火魔法で焼き上げたイノシシ肉を食べた。

 一年も固形のものを何も食べていなかったのが幸いしてか、想像してたよりも案外美味しかった。ラッキーである。

 とりあえず食糧は確保できたし、あとは夜中になるまで待つだけだ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 夜になった。

 もう1日過ぎたのだろうか。洞窟の入り口はあるのかどうか、確認する。

 俺が〈空間掌握(ザ・ルーム)〉を使い移動させた洞窟は目の前にあった。どうやら成功したようだ。

 大急ぎでイグニスがいたところへ向かう。


 しばらく走っていると、イグニスがいた場所に着いた。

 そこにはイグニスはいなかった。


(え...。まさか! 洞窟自体を移動させても、イグニスは移動しないのか? となると、イグニスはずっと時空の狭間に迷い込んだままに...。ってことはもう一生イグニスに会うことはできないのか?)


 俺は焦った。かなり焦った。そう、後ろから迫る大きな影に気づかないほどに。


『おお! レイルではないか! もう会いに来てくれたのか? そんなにワシに会いたかったか! フハハ! 照れずとも良いぞ! ワシらは友達だからのう! フハハ!』


 涙が出そうになった。もう一生会えないのかもしれないと思っていたのだ。この友人に。驚きと安堵でしばらく声を出すことができなかった。

 しばらくして落ち着いた俺は、イグニスに話しかけた。


「なんだよお前、どこ行ってたんだよ。もう会えないかもしれないと思ったじゃないか! 驚かせやがって...」

『すまんすまん! 少しむしゃくしゃしてな! 歩き回ってただけだ! それにしてもレイルよ。お主なぜここにいるのだ?』


 俺はあったことを全て話した。


『フハハ! なるほどな! まさかワシを閉じ込めていた魔法を解除してくれるとはのう! 驚いたわい! これはお主に感謝してもしきれぬな! それにしても〈空間掌握(ザ・ルーム)〉か! お主、魔法の才能が底知れないのう。無魔法を扱うヤツを見たのはお前で二番目だ! フハハ! さすがはワシのレイルだのう!』

「いやいつ俺がお前のものになったんだよ。というか、俺で二番目なのか。ちなみに一番最初は誰だったんだ?」

『神だ』

「神? そんな奴がいるのか?」

『うむ。この世界を作った創造主だ。正直アレに勝てる気はせんな。いけ好かないヤツだったが...。お主もヤツと事を構えるのはやめておいた方がいいぞ。絶対に勝てないからのう。アレは反則だわい...。ワシはヤツに刃向かったせいでこんな洞窟に封印されていたんだしな。』


 こいつ、神に逆らって封印されたのか。まあイグニスの言う通りなら、神には勝てないだろう。

 被創造者が創造主に刃向かったところで勝てる通りはないからな。

 神には逆らわない。そう心に留めておこう。


 俺らは色々話しながら出口を目指した。


『久々の外界だわい! フハハ! 感謝するぞレイル! さすがは我が友よ!』

「いいっていいって。友達だろ? イグニスも達者でなー」

『む。ついて行ってはダメなのか?』

「え、お前俺について来るつもりだったのか?」

『まあな。一人でいてもつまらんしお主といるなら楽しそうだしな! ダメなのか?』


 イグニスがしゅんとした態度で俺を見つめて来る。

 これについて来られてもなあ。態度は小さいけど体自体はかなり大きいからな。しかもこいつ古竜種とか言うレアな種族なんだろ? 人里の人とかは結構怯えちゃうと思うしどうしたものか...。

 俺はその辺りの懸念をイグニスに話した。すると、


『古竜種は精神体だから、基本的には何にでも姿を変えられるぞ! だから安心だろう!』


 とのことだった。まあ人の姿に変身できるならいいか。


「じゃあ普段は人の姿でいてくれ。そっちの方が都合が良さそうだしな。絶対人の前では竜の姿になるなよ? 絶対だからな?」


 しまった。この念の押し方だと何だかやってもらいたいみたいじゃないか。このネタがこの世界でも通じるかは疑問だが。


『わかっておる! お主について行くからには邪魔になることはしないと約束しよう! このイグニスの名にかけてな!』


 なんかこいつの言うことって信用できないんだよなあ。まあいいか。もし約束を破ったらシメてやればいい話だ。魔力量もコイツより高いらしいしなんとかなるだろう。


 イグニスが変身を始めた。一瞬イグニスの姿がぶれて、すぐ人の形をとった。

 変身が終わると、イグニスは素っ裸だった。ただ性別はないのか隠すものはない。まあそこは安心だ。

 一応体は筋骨隆々としているし男性型っぽいけどな。それにしてもこいつイケメンに変身しやがって。い、いや別に嫉妬とかしてないよ?うん、多分。

 それにしてもさすがに素っ裸はないだろう。服とか考えなきゃだなあ。


 苦難はまだ続きそうである。

誤字などがあれば指摘していただけると嬉しいです。

最低でも2日に1回は更新する予定ですが、早い時は1日に2.3話投稿することもあると思います。

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