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RALE  作者: たけちる
第一章
3/10

02話 魔法について学ぼう

 1年間も薄暗い洞窟の中にいるなんて、普通なら発狂モノである。

 そんな状況が今俺に降りかかっている。

 なんで好奇心で洞窟なんか入っちまったんだ...。だいぶ後悔してる。まあまたいつかやるんだろうけどね。昔から学習能力ないから。俺。


 とりあえず今後のことについて考えないとな。

 食料はなんとかなる。栄養があるのかどうかよく分からないが、さっきの湖の水を飲んでいればきっと大丈夫だろう。

 問題は精神面だ。この暑っ苦しいヤツと1年間も一緒だと考えると気が遠くなる。何が楽しくてこんなヤツと...。普通に見た目怖いし。

 とか色々考えていると、イグニスが話しかけて来た。


『なんだお主、ワシと遊ぶのは嫌か? 一年なんてすぐだぞ? そんな短い間も遊んでくれないなんて、ワシは嫌われちゃったのかのう。悲しいのう。』


 話し方がキモい。そういえばコイツ千年近く誰とも話してないんだっけか。寂しがり屋なのか。やべ、なんか可愛く見えて来た。俺も末期だな。


「あーわかったわかった。遊んでやるから。その代わり、俺に魔法を教えてくれ!」


 なんか役に立ちそうだしな。ダメ元で頼んでみた。


『む? それくらいだったら良いぞ。もっとすごい要求をされるかと思ったわい! 昔ワシの尻尾を狩ろうとしようとして来た者がおってのう。竜の尻尾は竜にとって一番大事なモノだからな。返り討ちにしてやったわい! フハハ!』


 なんか自慢話をされた。ていうか龍にとって一番大事なのって尻尾なのかよ!ってツッコミもあったが、それは心に留めておこう。

 とりあえず魔法は習うことができるみたいだ。やったぜ。


「じゃあ明日からお願いな。今日は疲れたからもう寝るわ! また明日なー」

『待てい! もう寝るのか? 早いのう。もう少し話してかないか? な?』


 非常にめんどくさい奴である。どんだけ寂しがり屋なんだよ。

 さすがに今日は色々あって疲れたので、寝させてもらおう。


「一年もずっと会えるから別にいいじゃん。それじゃ、明日からよろしく頼むな!」

『む、むう。ならば仕方ないのう。しっかり寝るのだぞ!』


 なんか母親みたいなことを言うドラゴンである。

 ふと気になったことを聞いてみた。


「そういえばイグニスは睡眠をとらないのか?」

『うむ。ワシは基本的には睡眠をとる必要がない体をしてるからな。ただ他の竜族は3日に1回ほどはとらないといけないらしいがのう。』


 とのことだ。コイツには睡眠は必要ないらしい。羨ましくもあるけど、なんか、寂しそうだな。誰も起きてないのに自分だけ起きてる感じ。今度は夜中もコイツに付き合ってやろうかな。


 さてと、そろそろ寝ますか。睡魔が半端ない。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 目が覚めると、鼻息を荒くしたイグニスが俺の顔を覗き込んでいた。


「うおっ! どうしたんだイグニス?!」

『いや、案外お主はよく見てみると可愛いと思ってのう。眺めていただけだ。なに、気にすることはない! 我は決して襲ったりしないからのう! フハハ!』


 マジで引いた。仮にも元男だぞ? それに欲情するとか。ありえないわ。少し距離置こうかな。

 そんな感じで俺が嫌な顔をしていると、


『む、嫌な思いをさせてしまったか? すまないのう。』


 イグニスがしゅんとした態度で謝って来た。素直だなコイツ。

 ていうか今までの俺らの会話本当の男女みたいじゃねえか! 気持ち悪くなって来た。


「あーいいよいいよ。次から気をつけてなー」

『そう言ってもらえると助かるわい。かたじけないのう。』


 コイツにはプライドってものがないのか。

 まあいいそれは置いといて、楽しみにしてた魔法の練習だ。


「いいって。じゃあ早速だけど、魔法教えてくれ!」

『良いぞ。ならばまず初歩中の初歩の〈火球(ファイアボール)〉からだな。 じゃあワシがやってみるから、よく見ておくのだぞ!』


 そう言って、イグニスは手から火の玉を飛ばした。いや、手ってよりは前足なのか?まあそれはどっちでもいい。

 洞窟の壁が削れた。いや、正確には溶かされた。ものすごい威力である。

 俺の感想は正直なところ、「すごい」の一言だった。これを俺も撃てるようになるのか。そう思うとワクワクする。


 イグニスが俺の方を見る。俺もイグニスのことを見る。

 10秒ほど、俺らは見つめあった。

 ......いや、今のから何を学べと?

 イグニスは「ほれやってみろ」とでも言いたげな表情をしている。

 いや無理だから。どうやったらできるんだよ。


「いやあの、俺魔力とかもよくわからないしやってること全く理解できなかったんだけど...」


 俺がそういうと、


『む! そうじゃったな! フハハ! すまぬすまぬ! よしじゃあ今から言うからよく聞いとけよ? こう、フーってやって、ギューっとやる感じだ! どうだ? 分かりやすいだろう?』


 分かった。コイツバカだ。いや元から知ってたか。

 今のでどうやって理解しろってんだよ。


「いやあの、もっと具体的に言ってくれないとわからないんだけど...」

『なに? 今ので分からないのか? ぬう。魔力を収束させて、イメージを加える感じといえばわかるかのう?』

「まあさっきよりは分かりやすいな。ちょっとやってみる!」


 そう言って俺は〈火球(ファイアボール)〉の練習を始めた。

 一時間ほど魔力がどういったものか分からず試行錯誤していたが、自分を纏うエネルギーのようなものに気づき、それに動くよう念じると自分の思い通りに動かせることが分かった。

 ちなみにこの一時間の間にイグニスは色々指示を出してくれていたが、最初のもの以外はどれも分かりにくく結局俺の中では〈イグニス=使えない〉の公式が成り立つことになった。

 それから魔法が使えるようになるまで時間はかからなかった。


(魔力を収束させる感じ...。こうか! よし。」)


 俺は手を前に出しながら叫んだ。


「〈火球(ファイアボール)〉!!」


 俺の手の前で収束していた魔力が、文字どおり火の球となって飛び出した。

 俺の手から射出された火の塊は、洞窟の壁を(えぐ)りとった。その抉れ方はイグニスのそれよりも大きかった。


『おお、できたようだな! ワシの教え方が良かったのだな! フハハ! そう褒めずともよい! ワシはわかっておるわい! あとその掛け声はいらんぞ。なんか見てて恥ずかしいわ。フハハ! それにしても、最初に見たときから思っておったがお主の魔力量は本当に膨大だのう。このワシより多いかもしれん。』

「お、おうそうだなー。うるせえ。一回やって見たかったんだよ! ところで昨日も言ってたけど、その魔力量が多いと何かあるのか? まあすぐ思いつきそうなところだとたくさん魔法が使えたり使える魔法の威力を上げられたりか?」

『そうだな。だいたいお主のいう通りだ。あとは新たな魔法を覚えるのに必要な魔力量とかも決まっていてな。まあそれは、魔力量が低いと使える魔法も限られてくるというだけの話だ。魔力量が少ない者は大魔法を使えない、というようにな。そしてお主の魔力量はこのワシより多い。これは誇るべきことだぞ! このワシより魔力量が多い者など限られてくるからのう。ワシの知っている範囲で4人ほどだな! あ、もちろんお主抜きだぞ。』


 どうやら俺の魔力量は本当に規格外らしい。俺よりも魔力量が多いヤツは、多くても4人しかいないそうだ。イグニスよりも上らしいからな。

 そしてこの時の俺は、この規格外の魔力量の原因が、空腹を紛らわすために飲んでいた例の湖の水が関係しているなど、微塵も思っていなかった。

 後から思ってみると、当たり前のことだった。1000年近くも世界でトップクラスの魔力を持つドラゴンから放出される魔力を浴び続けた水がただの水であるわけがない。約1,000年分の魔力が凝縮されたものを飲み続けるのだ。いやでも魔力量は上がる。俺はこの水を1年間飲み続けることになるが、これにより身体に本当に膨大な魔力を定着させることになったことが判明するのは1年後のことである。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 〈火球(ファイアボール)〉に始まり、俺は1年間で多くの魔法を覚えることになった。それはおいおい紹介しよう。

 イグニスは熱心に教えてくれるのだが、不器用なのか種族のせいなのか知らないが火魔法か炎魔法しか使えないらしく、それ以外には自分で開発するしかなかったが、この世界の魔法はイメージ力がかなり大事らしく、様々なゲームで魔法というものを見てきた俺にとっては、習得するのは容易だった。


 ちなみに火魔法とか炎魔法とか言ったが、魔法には区分があるらしい。これはイグニスが教えてくれた。

 それぞれの属性に上位属性があるらしく、それは

 火魔法の上位属性は炎魔法

 水魔法の上位属性は氷魔法

 風魔法の上位属性は嵐魔法

 土魔法の上位属性は岩魔法

 光魔法の上位属性は白魔法

 闇魔法の上位属性は黒魔法

 無魔法の上位属性は神魔法

 といった感じだ。


 人族だと基本は下位属性の魔法しか使えないらしい。魔力量が高い人間があまりいないからだそうだ。

 そして光魔法、闇魔法、無魔法が使える人間はほとんどいないらしい。一部の神官が光魔法を使えたりするだけだそうだ。闇魔法はたまに使えるようになる人間がいるらしいが、無魔法を使える人間は見たことがないという。

 それと魔法が使える人間は、100人に1人ほどの割合でしかいないらしい。ほとんどの生物が魔力を持っているが、それを魔法にすることができる者は限られてくるそうだ。ちなみに人間以外の動物の中でも魔力を持つものを魔物というらしいが、魔物はみんな魔法が使えるそうだ。


 そしてイグニスはただの寂しがり屋のおっさんかと思いきや、意外とすごい人物(?)だったらしい。

 現在いる世界には古竜種という種族があるらしく、イグニスはその一角だそうだ。

 ちなみに古竜種は世界に10頭しかおらず、その保有する魔力量は他の種族の比にならないらしい。

 まあさすが封印されてるだけはあるってことだ。


 俺がこの1年で得た情報はだいたいこれくらいだ。

 そもそもこのドラゴン、人間についてあまり詳しいわけではないらしく大アスカ王国なる国があるということしか知らなかった。


 そして洞窟生活を始めて1ヶ月ほど経った時であろうか、俺はイグニスに名前をつけてもらった。今の姿で齋藤健吾なんて名前は不自然だし、もっと可愛い名前がいいんじゃないかというイグニスの提案によるものだ。

 そこで俺は、「レイル=スカーレット」という名前をつけてもらった。スカーレットについては、イグニスの得意属性に由来するらしい。まあスカーレットと言えば炎の象徴である赤色を想像できるからな。レイルの由来は教えてくれなかった。ただ、自信満々に名前をつけてくれたので悪い名前ではないのだろう。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 約一年が経過した。今日は一年で一回、洞窟の入口が地上に現れる日である。

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