プロローグ
昔々、あるところに、栄華を極めた王国がありました。
その王国の名はルドリア。
王族、貴族をはじめ、国民たちはみな平和に優雅に暮らしていました。
ある年、金持ちと優秀な人物のみ入国・永住を許可する法令を発行し、ルドリアはますます栄えていきました。
特に優秀な人物を集めたルドリア騎士団は、『最強軍団』とよばれ、戦争になると猛威を振るいました。この騎士団に勝てた国はいまだかつてありません。
そして、ついには『すべての富はルドリアにあり』といわれるまでになりました。
ルドリアでは、毎日のように宴会が開かれ、街の灯と笑いが絶えることはありませんでした。
その一方、富を吸われ尽くした周囲の国は、貧困と飢餓にあえぎながら、ルドリアがなお栄えていく様子を恨むほかありませんでした。
ルドリアはそんな国々には目もくれず、さらに繁栄していきました。
しかし、ルドリア王国はあまりにも栄えすぎました。
ある日、長年積もり積もった人々のルドリア繁栄への恨みが、ルドリアに恐ろしい呪いとなって降りかかりました。
それは、「この国に女はいてはならぬ」という呪いでした。
その日の夜、ルドリア王国内から、老婆から幼児に至るまですべての女がどこかに消えてしまいました。
ルドリア国内に女が入ることもできなくなりました。
ルドリアはその繁栄に終止符を打たれたのです。
男しかいなくなったルドリアは、しばらくして滅亡してしまいました。
周囲を顧みず、私利私欲に走るのは、自らの破滅をも引き寄せかねないのです。
めでたしめでたし
―――「こども読み聞かせ昔話 <教訓編> ルドリアのはなし」より―――
現在でも語り継がれるこのお話、実はまだまだ続きがあるのです。
それでは、はじまりはじまり……。
恐ろしい呪いをかけられてしまったルドリアはなんとか対策を考えようとしました。
しかし、男だけで国家を維持していくなどそう簡単なことではありません。
当然ながら、女がいないと子孫を残すことができないからです。
移住者も減ってきて、徐々にルドリアは衰退していきました。
それからしばらく経ったある年、とある科学者がその問題を解決する方法を開発しました。
それは、子供の時から服用し続けることで、男でありながら、子孫を残せるようになる薬。
彼の名前から『シャリオ』と名付けられたこの薬は、ルドリアの栄華を取り戻すには十分な効果があったはずでした。
しかし、王国が世界の派遣を握ることはありませんでした。
再び世界を手中に収めるその時まで、密かに人口を増やしつつ、最強の騎士団をさらに鍛え上げ、待ち続けているのです。
そして、時は今に至ります。これからこの国でどのような物語が紡がれるのか。
それはあなたが自身の目でご覧になってください。
それでは……。