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今日から学校と仕事、始まります。①莞

ダーリヤさんは、暴走して戦ってやる奴がお嫌い

作者: 孤独

最強とは、己が語ることではなく。他者から語られて至るもの。

強き者が強い者と戦う。同じ場所で渡り合うのは、強さの道理。



まだ若き日の事。後に最強と呼ばれる一人の男にも、そうでなかった時代はあった。


「俺と拳を持って語るか」

「ふ、ふふふっ、あははははは」


冷静に、平静に、心を落ち着かせた若い軍服の男。対するは熱く、暗く、心を奮わせる中年の大柄の男。

勝敗というのは決してはいた。そして、強さの査定も決まっていた。


「数、強さ、勝利、…………貴様等にそれらがあったとしても」


若い軍服の男。名をダーリヤ・レジリフト=アッガイマン。彼には、戦う相手に対して以下の言葉を告げる。ジンクスや礼儀のようなものだった。


「この俺を超えることはできんぞ」


ダーリヤは構える。相手の出方を伺う。若さというものでもあるし、1人の武術家、”超人”同士において、戦いというのは互いが今の全力を出し切って、戦うべき美学があるものだ。

命のやり取りの中、ただ命を狩るだけが全てではない。それを楽しいものだと、ダーリヤは思っている。


「ふふふふふ、楽しみだぁ。やはり、暗殺などではなく、殺し合いが楽しいねぇ」

「……」


相手の名は、ホーキンス・ベルモンド。暗殺を専門としている男。殺す技量はもちろん、戦う技量も優れている。彼もどこか、命をただ獲るだけの仕事や行動では満足できないでいた。やはり、戦いは激しくぶちかましてだ。


”超人” VS ”超人”


己の肉体で相手を殺す。


「ミンチ確定ぃぃっ!!」

「!」


先に仕掛けたのは、ホーキンスの方。突如、両の瞳が黒ずんだ。その進行と共に殺気、威圧、肉体の強化が起こる。脳が考え、肉体に伝えているのは、『殺せ』だけ。


「”暴虐ぼおぅぎゃぁぁく”!!」


不吉な殺意が混じった叫び。

ホーキンスの能力、”暴虐”は、自らの理性をふっ飛ばして得られる絶対の身体能力から、敵の抹殺を成す。如何なる手段であっても、抹殺する。それは心臓を潰したり、脳を潰したり、そーいう確定的な死に相手を追いやるまで戦うこと。

相手が死に至る過程までに、どう喚こうが、四肢が捥がれていようが、聞き入れずに暴虐する。



ダァァンッ



ダーリヤを相手に真正面から突撃するホーキンス。

並の相手であれば、ホーキンスの狂気と殺意によって心が竦み、絶対の身体能力の差で殺されていたであろう。しかし、ダーリヤは違う。


「なんだ貴様……」


普段の戦い。もし、戦いとなるだけの存在と相対した場合。ダーリヤは冷静になっていく。戦うことは己の強さだけでなく、観察力も重要であるからだ。時にその観察は悠長というリスクを生むのだが、ダーリヤにはキチンとした判断力も持ち合わせている。すぐに観察を止めて、戦うという判断がとれる。

それに怒りが混じっていたのは事実。怒りなど、余計な隙を作ってしまう己の敵。


思考を柔軟に切り替えられるほど、短い時間で距離を詰め合った両者。

ホーキンスの、身体能力にものを言わせた拳は確かに早い。それは事実であるのだが、ダーリヤは


「我を忘れて戦うというのか!?」


説教の一つを添えながら、ホーキンスがこれから狙う、ダーリヤの両目を抉ろうとする右手を遮るため、右肩にカウンターを叩きこんだ。


「ごほっ!」

「人と戦う以前に!」


相手の攻撃を止める、冷静にして的確なカウンター。

ホーキンスは一度、止められた攻撃に対し、すぐに返すよう体を切り返したが、


「己に勝てず、戦うなど言語道断!!」


それよりも明らかに早く、そして、冷静に。ダーリヤは暴走しているホーキンスの左足に強烈な蹴りを叩き込む。我を忘れている者にとって、行動不能となるダメージは足のダメージだ。

我を忘れているホーキンスは一歩進もうとしただろうが、足のダメージが残れば、歩幅は間違いなくズレる。よって、攻撃のポイントがズレる。それを分からせるためか、はたまた、別の何かか。ダーリヤは余裕を持って、一つ下がって拳を避ける。


「己を知らず!」



不安定な状態で繰り出した攻撃とは、防御も不安定だ。回避や防衛など考えられない、忘我の精神では致命的なミス。ダーリヤが逃さないわけがない。


「相手に勝てるものか!!」



グシャアァァッ


ホーキンスの頭を完全に踏み潰し砕いた、かかと落としが炸裂した。この一手で殺した。

いかに忘我し、狂気を持とうと、怒気を持とうと、例外を除いて頭が潰れれば死ぬ。

残忍なのは間違いなく、ダーリヤの方だろう。


「防御が疎かである。目や耳を抉られたら、勝敗は決するぞ」


死体となった相手に、ダーリヤは説教をする。相手の方が年上ではあるが、戦闘経験に違いがあるとこの時点で分かっていた。忘我とは己が戦っていないことでもある。


「殺す意識が強く、貴様は人体の急所を狙っている。それは相手に攻撃を悟られる事!今のように対処されるぞ!身体能力が優れようと、手の内がバレては意味がなかろう!命のやり取りは、己を知らなければ超えられん!!さらには……」



そこから死体となったホーキンスを相手に、10分少々。ダーリヤは戦闘に対する自論を語ったという。




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