表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6月のピアノ  作者: naomitiara-tica
8/15

息子達の大学受験と夫の再々就職

この物語は創作です。モデルはありません。

ここ最近、普段から不定期に襲ってくる難聴が珍しく来なかった。夫の再度の失業で、智子も緊張して難聴の事すら忘れていた。



長男は進学校に行ってからも成績もまあまあ良く、次男も控えて浪人させる気も無かったので一発合格した有名私立大学の法学部に行く事になった。



積み立てもしておいたし、奨学金ももらえる事になったし、実家も協力してくれると言う。智子のダブルワークも金銭的には安定だし、しばらくは大丈夫だろうが、1日も早く夫に次の職場を探して貰わないといけない。



しかし、次の仕事探しでも、夫の気の弱さと気難しさ、あと妙な腐れプライドの高さが邪魔をし、あっさりと決まったわけでは無かった。



建築士の資格を持ち、リストラによる転職してるとは言え夫のキャリアで、決して悪くない条件の会社はいくつもあった。



しかし流石に夫のみならず、智子も智子の実家の父親も、智子の夫の再々就職先に様々な意見を述べざるを得なかった。



最初は給料の高さだけで会社を決めて通い出したが、仕事の内容が納得行かずに1ヶ月で、辞めてしまった。



次は会社の大きさと給料面、両方で決めたが、直接の上司が年下の生意気な若者はまだ我慢出来た、が運の悪い事に設計部をとりまとめている部長が奇しくも高校の同級生の顔見知りだった。しかも、ちょうど夫が転職した時期に天下り的に親会社から派遣されて来たのだ。



天下りとは言え、エリートはエリートだ。これからも何の心配もあるまい。



友人はいかにもゴルフ焼けした黒い顔で、でっぷりした腹を出して懐かしそうに声を掛けて来たらしい。今度酒飲もうや、誰それも一緒に呼んで、そうだ担任の先生も呼ぶか、久々に集まらないか?と。



その部長の友人が声を掛けると言ったメンバーは地元の大手電気会社の本社やもしくは系列会社で、部長や課長、中には工学部大学教授ってのもいた。



まぁ、50歳なのだから。なる人は部長だろうが課長だろうがなっているだろう。もっと出世してるやつもいるだろう。



そんなに極端に成績の差だって、入った大学の差だって無かった。あの当時、みんなうちの長男ほど優秀では無かったのでは無いか?



しかし、どんなに優秀な息子がいても、夫は連中から見たら、出世コースに乗るどころか、転職を繰り返して来た負け組に違いなかった。



智子は聞いていて悔しかったので、長男の卒業した進学高校や今の通っている大学の自慢話をしてやれば良かったでは無いか?と息巻いた。



しかし夫は気弱そうに寂しく笑っただけだった。



夫は結局その会社も家族の体調不良を理由にすぐに辞めてしまい、最終的に決めたのは、東京に本社のある地元の孫会社だった。いや、ひ孫会社ぐらいかも知れない。



お互い、神経を逆撫でされたくない人達の吹き溜まり。親会社が安定だから給料は黙っていても支給はされるだろうし息子2人が卒業するぐらいまでは何とか凌げるだろう。退職金など、雀の涙ほどだろうが....



そうこうしてるうちに次男も無事、長男程ではないがソコソコの私立大学に入学、智子は一安心した。



息子達が上手く行けば行くほど、夫の最小限、持っていた運が削りとられる気がしてならなかった。


息子達の進学の喜びと裏腹に世間の冷たさと向き合う夫。世の中厳しいわね?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ