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6月のピアノ  作者: naomitiara-tica
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再び失業

この物語は創作です。モデルはありません。

長男が進学校に入ってから、智子はまるで、いつもブランドのバックと高級化粧品で身を固めているような気持ちで街を歩く事が出来るようになった。



実際は、バックはブランド物はあまり好きじゃないこともあり一度も持った事が無く、化粧品は集団購入で買えるもので済ませていた。幸い肌質が良くどんな化粧品使っても大した変化は無かった。



その辺のスーパーで買い物をするときもちょっとだけ高い物に手が出るようになった。例えば卵でも安売りの特価のものでは無く、地場ものの産地卵とか。値段は倍だ。近所の誰に見られてるかも分からない。



実際は育ちざかりの息子達も、ビンボー育ちの夫も野菜炒めに混ぜた卵なんて高いものかどうかなんて気づきもしなかった。



智子は今日も従姉妹に一説ぶってやった。娘がよくが風邪を引くと言っていたので、

『家族の健康は食生活だよね?風邪ひきって事は栄養偏ってるって事でしょ。この前の集まりでも息子の周りのお母さん達、夕飯だけはしっかり栄養考えて作ってるって仰る方、ほとんどだし』



と、昔、散々自分の母親が嫌味たらしく言っていたセリフをそっくりそのまま言っているのだった。年を取ると供に自分の母親に似て来るものだとはよくいったものだ。



少し引きつった顔の従姉妹を見て胸がすうっとした。なんて気持ちいいんだろう。



しかもその2年後、長男と一緒に勉強させていた次男も、私立ではあるが、お払っちゃま学校と言われる、中上級の進学校に合格したのだ!



この世の春....



世の中ではその頃、息子が最年少のスーパーゴルファーになり、かつイケメン、かつ礼儀正しくて、なかなかの秀才だ言うので、その母親がどんな育て方をしたのか?と、あちこちの講演に引っ張りだこで、息子よりちよっとした有名人な時があった。



バラエティ番組で、時の人って事で、その母親が自慢げに喋るのを見るたび、智子はこの母親を羨ましがってる連中が理解出来ないと思った。



だって、私はテレビになんか出なくたって、夫のリストラ経験したって、難聴になったって、視力が極端に落ちて車運転しずらくたって、ピアノ教室の出来悪い生徒に苦戦したって、小学校で担任の若い教師にさげすまされたって、そう、あの生意気な従姉妹みたいにバリバリ働かなくたって....



私はちゃんとちゃんと息子達を立派に進学校に入れた。2人ともそこそこイケメンだし、性格もいいし。私は、私の周りで1番幸せなのだ。




しかし....



神様は本当に意地悪だ。



長男が高3、まさに大学受験の時、夫の会社が飛んだのだ。夫はまた仕事を探さなくてはならなくなった。智子もダブルワークで懸命に働いて来たし息子達のための少しは蓄えはあった。



しかし、下の息子も受験を控えている。よりにもよって1番お金がこれからかかる時の、夫の失業だった。


せっかく自慢の息子2人、進学校に入れたのにね〜。

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