夫のリストラ
この物語は創作です。モデルはありません。
智子の夫は、頭の回転は良いし、妙に小狡いところもあるが人当たりも良いし、まじめな努力家だったので、早々仕事に困るはずは無いのだが、残念ながら気が弱く、昔から何かと運が悪かった。
日本でも屈指の巨大大手スーパの傘下であったゼネコンに入社し、そのま普通に行けば、貧乏な田舎の実家、二流どころの大学出身の彼にすれば、智子みたいな世間的に安定した嫁も貰った訳だし、まぁ、悪くも無い人生だったろう。
しかし、落とし穴がいつも待ち受けているのが世の中。夫の会社は親会社のスーパーが傾くとともに一気に煽りを受け、別の建設会社と合併した。
そこからはお決まりの、両社同士の頭の潰し合い。気が弱くて、特に業績で目立ちもしなかった夫は途端にリストラ対象に入った。
それまで、親会社が大手だったのもあって、保養所と名のつく会社の買い上げホテルや旅館が、あちこちにあり、家族はただのような値段で泊まることが出来た。
軽井沢や箱根、富良野、日光など見晴らしの良いところばかりで、智子家族は休みのたびにそれこそ、私達はセレブな家族なのだ....と、出かけたものだった。もちろん智子の両親ももれなく付いてきて、両親が一緒の時の支払いは当然、智子の父親が出した。
保養所のみならず息子達が小さい頃、そう、なんだかんだで、ここ7年ぐらいは毎年行っていたディズニーリゾート。
これ以上は無いってほど、家族で幸せ一杯だった。
そう、あのリストラ通知日までは。
智子はそれでも最初、自分がピアノ教室の稼ぎがその辺のOLぐらいはあったし、いざとなったら父親が実家の家土地を売り払って現金を作ろうとか言ってたので、まぁ、建築士の免許のある夫が稼ぎに困るとは思えなかったし、いたって気楽に構えていた。
そして、夫は予想通り、賃貸アパートやマンションを手広く扱っている不動産屋で職を得た。待遇は夫の年齢では破格の扱いだった。
これで安心と思った矢先、夫は、慣れない営業見習いをやらされた事や、自分より明らかに格下の若い子にパソコンの使い方などをバカにされて、あっさり辞めてしまった。3ヶ月も在籍したろうか?
そして夫は、気を病み、引きこもるようになった。
リストラにあった夫。昔、ゼネコンもいろいろあったわよね?